*ちいさなかがやき*
(黎深・絳攸)
【1】
「こ、絳攸様、絳攸様!!」
「――騒がしいな。どうした」
自室で書物を読んでいた絳攸がそう不機嫌な返事をすると、絳攸の室の扉を叩いた家人は慌てた声を上げた。
「お館様がこちらにお渡りになるそうです!!!」
急にそう言われ、絳攸は一瞬きょとんとした。
「――え。黎深様が? こんな時間に、なぜ…………」
というより、いつもなら唐突に来て勝手に扉を開ける人が、なぜわざわざ来訪を告げたのだろう。いや、本来それがあるべき姿なのだが……。
悪い予感、と絳攸は家人に届かぬ声でそっと呟いた。
いかが致しましょうっ、と混乱しきった声を上げた家人に、絳攸は溜息をつきつつ告げる。
家人たちもこのようなことは初めてで戸惑っているに違いない。
「いかが致しましょうも何もないだろう。お通ししろ」
「はっ、はいっ。あの、それで絳攸様、お館様は『饅頭を作って待っていろ』と仰せなのですが……」
「な……。――いや、いい。分かった、作る。黎深様には『饅頭が出来たら母屋に遣いをやりますので、それからいらしてください』とでも伝えておけ」
「はい! それでは絳攸様、庖厨までご案内致します!」
「――……ああ、頼む……」
少々慌て者だが察しのいい家人に案内されて、絳攸は庖厨へと向かった。
【2→】
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