*続・衣替え*
(黎深・邵可)
【2】
「どういう意味ですか、兄上」
「どういう、って、そのままの意味だよ。絳攸殿には本当にいつも辛い思いばかりさせて……」
「辛い? そんなことはありませんよ、兄上。絳攸は、私の衣を着れて嬉しくないはずがありません」
しれっとそんなことを言い切った弟に、邵可は頭を抱えたくなった。
絳攸は、(邵可にとっては謎なことに)それはもう弟のことを敬愛してくれているが、だからといってすべてが許せるというわけではないだろう。
「ど、どうしてそう言い切れるんだい?」
「そ、れは、その……」
「黎深?」
邵可から訊ねるような瞳で見つめられて、黎深は頬を赤く染めると僅かに俯いた。
『氷の長官』と呼ばれ、常にその絶対零度の視線で他者を威圧している黎深を、唯一無条件で屈させることができるのは邵可だけだ。黎深は邵可にだけは逆らえない。
「…………………………わ、私もそうだからです」
「………………。」
俯いて衣の裾を握り締めた弟に、邵可は嘆息した。
そして、分かってしまった。
黎深は、なんだかんだと理由をつけて養い子の衣を着た自分の姿をわざわざ見せに来たのだ、と。おそらく彼は、府庫に来る前にその姿を友人たちにも見せ自慢して回ったに違いない。
「じゃあ尚更、早く吏部に帰りなさい」
「……似合いませんか」
「似合う似合わないじゃなくてね、黎深。早く絳攸殿の元に帰りなさい。たとえいくら嬉しくても、困っていないはずはないのだから」
「…………はい」
渋々ながら頷いて室を出て行きかけた黎深に、邵可は思い出したように言葉を投げる。
「ああそうだ、黎深」
「何ですか兄上」
「侍郎姿もいいけれどね、今のきみにはやっぱり尚書姿が一番似合うと思うな。絳攸殿と衣を交換し終わったら、ついでに尚書らしく仕事でもしてみたらどうだい? きっとすごくカッコいいと思うなぁ」
「はっ、はいっvv」
にっこりと微笑んだ兄の言葉に、黎深は勢いよく頷くと、一目散に吏部へと戻っていった。
これで多少は絳攸殿の負担も減るだろうし、しばらくはこの府庫にも来ないだろう、と思いつつ、邵可は再び書翰の頁をめくり始めた。
END.
【←1】
えーと、黎深様は邵可様に転がされているとかわいいと思います(笑)

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