*えいぷりるふぅる*
(絳攸・楸瑛・劉輝・邵可・黎深)
【5】
「黎深様っ!」
「黎深!」
「主上、ご無事ですかっ!?」
危機一髪で駆けつけてきた援軍に、劉輝は心の底から安堵した。三人の到着があと少し遅れていたら、劉輝は確実に負けていただろう。
「絳攸! それに邵可も!! 楸瑛〜っ、恩にきるのだぁ〜!!!」
一方黎深は、執務室へと入ってきた三人を見て少々顔を曇らせる。
「何しにきた、絳攸。兄上まで巻き込んで……」
「黎深様、すみませんでしたっ! 俺、官吏辞めるなんてウソです。その、『えいぷりるふぅる』で……、あの……」
「絳攸殿は『えいぷりるふぅる』が『大事な人にウソをつく日』だと思いこんでらしたようでね。大事な君に、かわいいウソをついてみたんだよ。……ね、絳攸殿?」
そう邵可の援護を受けて、絳攸は勢いよく首を縦に振った。
だが黎深の渋面はそう簡単には消えない。
自分に似て頑固でワガママな弟に、邵可はやさしく語りかける。
「黎深。君は、絳攸殿が辞めると言ったから、自分も辞めるというのだろう?」
「…………」
無言は彼の肯定でもある。
邵可はそのまま話を続けた。
「だったら、絳攸殿が朝廷に残るのなら、君も残るよね」
「………………」
「黎深? 返事をしなさい」
「……………………」
「私も、君と絳攸殿が側にいてくれた方が嬉しいんだけど」
「……はいっ、兄上!!!」
「じゃあこれは破いてしまっていいよね?」
「もちろんです!!!」
黎深の手から辞表を受け取った邵可は、それを王の前でビリビリと破いた。
「――ということですので劉輝様、私のかわいい弟は、これからも尚書として働いてくれるそうです」
「そ、そうか。これからもよろしく頼むぞ、黎深」
あからさまに安堵の表情を浮かべた劉輝と、その横に立つ楸瑛をギロリと睨んだ黎深は、こほんと一つ咳払いをして踵を返した。
「決してあなたのためではありませんから、そこのところお忘れなきよう。――それでは御前失礼。行くぞ絳攸」
「へ……っ? あの、黎深様???」
名指しされた絳攸は訳が分からずに首を傾げた。
そんな絳攸に、黎深はにっこりと微笑む。
それは、朝廷中から畏れられる、吏部長官・氷の微笑だった。
「ウソツキな子供には仕置きが必要だろう」
「……っ」
微笑んだ黎深と、ズルズルと引き摺られるようにして執務室を出ていった絳攸を見送って、残された三人は溜息をついた。
ぽつりと王が呟く。
「わが国では今後『えいぷりるふぅる』は禁止にするのだ……」
END.
【←4】
ヴァレンタイン、ホワイトデーに引き続き、エイプリルフールネタでした〜。

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