*北風に太陽*


【3】

(!!)



まさか、「戯れ」を「遊ばれる」と誤解をされるとは思わなかった。
その反面、彼の育ち方を考えれば、おかしいことではないかもしれない。
不器用で、常に北風が激しく吹きすさぶように扱う養い親の影。



北風によって育てられた彼は、さらなる北風には慣れているはずだった。
しかし、氷のように凝り固まってしまった心は、一見、更なる北風を好むようで、実のところ陽の光をただただ求めていた。
そして、そのかたくなな心に陽を浴びせた者には、決して離れようとしない。



(そういうところが、養い親に似過ぎている)
当人同士は気付いていないだろうが。



絳攸が痛々しくなって、そっと前から抱きしめた。
「違うよ」
できるだけ優しく答えてやる。



(それに)



「遊ばれたのは、私の方ではないか……」
声に出ていたかはわからない。
でも、彼の一挙一動に動揺しているのは私だ。




絳攸の顔を上げさせると、驚いた表情の彼と目が合った。
唇に自分のそれを一瞬だけ触れさせた。



「さて食堂にいこうか」
「!」
「それとも寝室の方がよかった?」
「!!」
真っ赤な彼にたたみかけてみる。
すぐさま答えないということは、迷っているということだろう。
「まずは朝食、いや、昼食にしよう」



そう、『まずは』。
書斎の扉に向かって足を踏み出す。
ぼんやりしていた絳攸が慌ててついてくるのを目の端で確かめて、見えないようにほほ笑んだ。



甘い言葉をかけて、優しく扱って。
北風を激しく吹きかけるのではなく、陽の光を与えたからこそ、手に入れられた彼の独占権。



ああ、童話は侮れない。




(終)


【←2】
「こどもみかん」ナギさまより誕生日にいただいた小説です。「できてる2人を書いたのは初めて」とのことですが、先日ご一緒したイベントで楊絳本を進呈したりして煽った甲斐があったというものです(笑) ナギさん宅へはリンクページからどうぞ! ナギさま、この度は本当にどうもありがとうございました!
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