*証(あかし)*


【3】

黎深は、自らの言葉に晴れ晴れとした養い子の顔を見詰めると、皮肉とも慈愛ともとれる微笑を浮かべる。

誰かを待っていたかつての子供。
その誰かがわかるまで、見つかるまで傍に居れたらと思い、拾った。

しかし、名を付け、共に暮らし、心を通わしていく内に、手放し難い存在となった。今更誰かに渡すなど考えられぬ程に。

(お前は私の子だ)

しかし、絳攸は自分のものでもない、誰のものでもない。誰より全ての柵から自由な存在だということはよく判っている。
そして、そう望む自分も確かにいるのだ。

(いつか、これは、私の元を飛び立って行くのだろう…)

考えると、言いようのない寂しさが胸に押し寄せる。
けれど、与えた名と、過ごした日々はいつまでも消えることなく残るだろう。
親子である、証として。

「黎深様…?」

黙り込んだ黎深を案じて絳攸が声を掛ける。
心配されることが心地良い。今はまだ、このままで。

「…気が済んだならたまには酒にでも付き合え。今宵は雲も無く、月見にはよい夜になりそうだ」

感傷などおくびにも出さずいつもの如く傲慢に誘えば、予想通り、「はい」と頷く。

基本、幼い頃と変わらないその笑顔を見て黎深は絳攸に気付かれないように微笑する。
そして、今年の冬はこの養い子のために何か祝いでもするかとひそやかに考えるのだった。



−終−


【←2】
「上撰の華」の常磐さまより誕生日にいただいた小説です。常磐さん宅の双花小説「めくるめく季節を君と」と連動したお話とのことですので、そちらもぜひ! 常磐さん宅へはリンクページからどうぞ! 常磐さま、この度は本当にどうもありがとうございました!
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