旅日記番外  台湾後編

*****9月13日*****

 今日も早起き。私は、ありえないほど朝が弱く、朝はいくら寝ても眠いので、起きてから一時間くらいは、「ああ」とか「うう」とかばかりで、まともな日本語が話せない。同室の友達に、「ひどすぎる」と言われた。

 今日は、台湾の国鉄・台鉄に乗って、ジュウフェン(ジュウは九、フェンはにんべんに分)という街に行く。列車は古く、私が小さい頃の国鉄予讃線(愛媛〜香川間)を思わせる。端芳という駅で降り、タクシーでジュウフェンへ。その昔ゴールドラッシュで栄えた古い街だそうだ。映画「非情城市」のロケが行われたことで有名らしいが、私は見たことがないのでピンと来ない。しかし風情があって、すごくイイ感じだった。
 山が海のすぐ近くまで迫っている、坂の街で、どこか懐かしい景色だ。愛媛の南の方や、広島の尾道のようだ。おみやげ屋さんが多かった。去年ここに来た職場の友達に聞いた情報で、おいしいパイナップルケーキの店があるというので、その店「張師伝餅店」をさがしあて、皆でパイナップルケーキを買いこむ。焼きたてを試食させてくれた上、大きなさといも団子を、皆に一個ずつくれた。この団子は、中がさといも餡、外側は、パイのように薄い皮が重なっていて、おいしかった。
 犬が坂ですやすや寝ている。野良犬ではなくて、どこか近所の飼い犬だろう。台湾では、あまり、野良犬や野良猫を見かけなかった。食われてしまうのか?
 「非情城市」の撮影に使われた茶芸館、「阿妹茶酒館」に行く。建物も家具も古くて素敵だ。
 お茶は、一回茶葉を投入すると、六回も七回もいれることができる。何度もいれて、何度も飲んだ。おいしかった。左写真の、ウインナーのような形のお菓子は、さといも餡を揚げたもの、白いのは杏仁豆腐。二つとも死ぬほどおいしかった。右写真でお茶をいれている、チャイナ服の女性は、店員ではなく、私。


 阿妹の窓からの景色。天気が良くて最高だった。窓を風が吹き抜ける。
 右は、阿妹の建物を下から見たところ。
 阿妹のリーフレットには、店の由来が書いてあり、日本語訳もある。「あなたの好奇心を駆使するために、コの店の主人は客家人だと思ってかもしれない!(中略)二年後、おとうとをうむれた、私達はうれしいか、悲しいか、また不平の気持ちが少しはうずって来た・・・」
 ・・・あの、無理なら、別に日本語で書いてくれなくていいよ。

 大満足した私達は、昼頃、タクシーでジュウフェンを去り、駅に向かった。ところが、理由はわからないが、このタクシーが、ありえないぐらい飛ばすのだ。もともと台湾の交通マナーは悪いが、このタクシーは想像を絶していて、曲がりくねった山道で85km以上出すし、対向車が来ても減速するどころかクラクションを鳴らしまくる。いくらクラクションを鳴らしても、世の中にはできることとできないことがあるだろう。案の定、道の端に止めたスクーターをこすって、ガリガリと音がした。
 我々がキャーキャー悲鳴を上げるので、運転手は、おもむろに、「私は安全運転をいたします」みたいな標語の書かれた免許証を出して、我々に見せつける。「安心しろ」ということなのかもしれないが、そんなことする間があったら前を見て運転しろ。台湾では、我々が日本人だとわかると、カーラジオのチャンネルを、日本の歌に合わせてくれるタクシーの運転手が多かったが、この運転手もその一人で、ラジオから流れてきたのは吉幾三だった。そんな細かい気配りなんかどうでもいいから、車のスピードを落とせ。
 行きよりもずっと安い運賃で、タクシーは駅に着いた。私は、すぐ乗り物酔いするのだが、このときは酔わなかった。人間の体というのは、命の危機を感じると、酔いなどどうでもよくなるらしい。
 
 台北に帰ってきた。上記の通り、台湾の交通マナーは悪く、傷だらけの車が多い。いちいちカーコンビニ行ってたらキリがないだろう。

 タクシーは全部黄色に塗られている。中身は千差万別で、キタナイ車にランニング姿のオヤジ運転手もいれば、装備の充実したトヨタ車で、F4のヴァネス似のイケメン運転手もいた。台湾はタクシーが安く、台北の端から端まで走っても千円足らずだそうだ。我々は四人で、一人頭にすると本当に安いので、しょっちゅう利用していた。

 とにかくスクーターが多い。この写真は、非常に少ない方で、朝のラッシュ時などは、爆笑なしには見れないほどの大群だ。昔の「元気が出るテレビ」の、素人さんドッキリ(道の向こうから100人がいっせいに走ってきたりするやつ)みたいだ。
 私がどうしても行きたいと主張した「袖珍博物館」に行く!!「袖珍」とはミニチュアのことで、東洋一、世界でも二番目のコレクションを誇る、ドールハウスミュージアムだ。私は興奮し、また「萌えの神」が降りてきた。正統派のアンティークなドールハウスもあれば、作家物のルームボックス(部屋の内部だけのミニチュア)、お城や歴史的建造物の再現、それとなぜか日本の仮面ライダーのボトルキャップも展示されていた。

 ショップも充実していたが、あまりに多すぎて何を買っていいのかわからなかった。結局、私が本棚の中に作っているルームボックスの、ベビールームに置くための乳母車と、あと、中国っぽいミニチュアを買った(写真はホテルの部屋にて)。どれも安かった。日本の食玩もあったが、それは日本より高かった。
 それから、世界一の高さを誇る、101階建てのビル・TAIPEI101へ行く。今は世界一だが、シンガポールかどっかに現在建築中のビルが完成したら、抜かれてしまうそうだ。が、とにかく今は世界一だ。
 展望台に上がる。高すぎて、逆に高いとこにいる実感がわかない。左は、展望台から見た、101の影。右は夜景。展望台で、日本語のイヤホンガイドを借りようとしたが、身分証明書がいるという。パスポートでいいのだが、この日に限って、ホテルのセーフティボックスに預けてきてしまった。結局、保証金千元を払って借りる。機械を返せば、千元返してくれるのだが、我々の後ろに並んでいた日本人の男の子が、不安そうに、「あの、これ、お金いるんですか」と聞いてきた。ガイドは、最初聞いていたが、説明が長すぎるので、途中で聞かなくなった。

 この近くには、ワーナービレッジ、ニューヨーク・ニューヨークなどの名所がある。ここもロケ地だそうで、皆は嬉しそうに写真を撮っていた。近くに三越があったので行ってみる。季節柄、月餅がたくさん売られていた。

 それから、MRTに乗って、「微風広場」へ。ブランドショップの並ぶキレイなショッピングモールで、ここもロケ地。皆は、ロケに使われたというエスカレーターを、嬉しそうに降りたり上がったりしていたが、後になって、「あのエスカレーターだったかどうかわからない」と言い出した。エーッ。
 少しくたびれたのと、日本のものと食べ比べてみたかったのとで、夕食は、地下のモスで何か買って帰ることにする。私はプレーンドッグにしたが、よく考えれば、日本のモスでプレーンドッグを食べたことがないので、食べ比べはできない。
 ホテルで皆と食べると、普通においしかったが、サラダの「和風ドレッシング」が、けして和風ではない味だった。それと、「サラダはチキンサラダですか?」と店員に聞かれて、「いいえ、グリーンサラダで」と言ったのにもかかわらず、チキンサラダが入っていた。そんなことはあったが、この日も大満足の一日だった。


*****9月14日*****
 
 明日は帰るだけなので、今日が、実質的な最終日。寂しい。MRTで龍山寺に行く。台北最古の仏教寺院だそうだ。何なのかわからないが黒い着物の集団や、一般の方々が、長いお線香を額に当てて、熱心に拝んでいた。
 なぜかわからないが、拝んでいる人達にパンが配られていた。日本人観光客ももらっていたので、私もパンが欲しかったが、自重した。
 ここもロケ地だ。よくわからないが、「つくしのママの買った35番のお守りを買って帰らんといかん」と、皆張り切っていた。友達が、35番のお守りを買いに行くと、売り場のおばさんは、笑いながら、「F4?」と聞いたそうだ。

 それから、台湾の原宿と呼ばれている(かどうかは知らない)西門町へ行く。地元銀行で、お金の両替をする。友達が、窓口の女の子に、英語で、「私達も日本で銀行に勤めています」と言うと、女の子はころころ笑っていた。
↑テレビか何かのロケをやっていた。 ↑日本と変わらない風景。真ん中のビルに「SHINOBI」の看板が。「電車男」の映画も公開されていた。
 明星ショップやCDショップに行く。手前のB,zのCDだけは、12日に士林で買ったものだが、この日も松っちゃんのCDを買う。日本で売られているものと同一の、海外頒布用で、二枚で約650元(二千円くらい)。日本と同じものを安く買えるのは嬉しいが、台湾っぽいCDも欲しかった気がする。エグザイルなどは、ジャケが台湾バージョンで、「超絶兄弟」と訳されていたりしたが、B,zのCDは、全て日本と同じものだった。
 「池袋ウェストゲートパーク」のVCDがあったので買ってしまう。セットで420元。安い!中国語字幕が入っているが、そんなの気にしない。
↑紅楼劇場。昔、日本統治時代に建てられた建物。ここでもモデルさんが撮影をしていた。 劇場の一階はおみやげ屋さん。若手アーティストの作品らしい、「Mr.EYE」の絵はがきを買う。どこかで見たようなキャラだが、気のせいだ。

 お昼はスタバで食べる。日本語のメニューもあった。ラテを頼み、何度も「HOT!HOT!」と言ったのに、アイスが出てきた。無駄に、昔の藤井隆のモノマネをやらされた気分だ。

 タクシーで、西門町をあとにする。「古早味豆花」という、台湾スイーツのお店に行く。運転手さんが店を間違え、危うく違う店に入るところだった。豆腐のお菓子に、かき氷とブラックタピオカをかけたものを食べる。おいしかった!店員のお兄さんが氷川きよしに似ていた。
 夕方、また、初日に行った永康街へ行く。ティンタイフォンに行こうかとも思ったが、近くの「群香品」という店に行く。また小籠包を頼もうとしたが、別に「ミニ小籠包・スープ入り」というのを発見し、「スープが入っとらんといかんやん!」と、あわててそっちに変えた。
 すると、大石選手似の若い料理人が運んで来たのは、ワンタンに似たものが入った蒸篭と、スープだった。ワンタンのようなものがミニ小籠包で、それを「スープに入れて」食べるらしい。我々はビックリして、身ぶり手ぶりで、「これをスープに入れるのか?」と訴えたが、大石選手似の男の子は、アホの子を見るようなキョトーン顔で我々を見ていた。
 そのミニ小籠包だが、とてもおいしかった。他に頼んだ炒飯やシューマイもおいしかった。足りなくて、ホントの小籠包も頼んだが、あつあつでおいしかった。ティンよりもおいしかったぐらいだ。ティンがあまりにも有名なので、ティンに客を取られているのだろう。気の毒だ。

 ティンタイフォンの隣の本屋で、梅木レフェリーの本を発見したので買ってしまう。こちらの本屋さんでは、客は、当たり前のように床に座りこんで本を読みふけっている。

 永康街をうろつき、またピングァンに行ってマンゴーかき氷を食べる。もう思い残すことはない。


 とは言え、まだホテルに帰るには早かったので、またCDショップに行くことにする。CDショップが見当たらないので、友達が、道端で、グッチのバッグを持ったキレイなお姉さんにたずねると、日本語と英語の堪能なそのお姉さんは、「あなたたち日本人なのに、どうして日本のCDを台湾で買うの」とあきれながら、この辺にはCDショップはないことを教えてくれた。なので、タクシーで台北駅の近くまで行く。
 普通のCDやDVDもいろいろ見たが、アヤシイものもたくさん見た。昔、日本のマンガが台湾で出版されると、裸のシーンなどは、上から水着が描き足されていたと聞くが、このとき、萌えアニメビデオのパッケージを見た限りでは、もう、そんな心配はないようだ。良かったなあ、台湾のアキバ系の皆さん。

 写真は、服のショップの前にあった看板。これが、台湾のキムタクことジェリーです。
 
 最後に、近くの新光三越の展望台に上がる。12日に案内してくれたイエローアンクルが、夜景は、TAIPEI101よりも三越から見る方がキレイだと言っていたが、本当にキレイだった。写真の右上の高いのがTAIPEI101。
 皆で台湾にさよならを言う。友達が、「SHINOBI」の看板が見えると言い出したが、私は目が悪いせいか見つけられず、望遠鏡に10元玉を入れて探した。そしたら見つかり、喜んで皆で順番に見ていると、すぐ時間が来て望遠鏡は切れてしまった。看板なんか日本でも見られるんだから、別のところを見ればよかった。

 この日も大満足でホテルに帰り、寂しい気分で荷造りをする。私の買いこんだCDやVCDは、友達のスーツケースに入れてもらった。私は、普段、半年に1枚くらいしかCDを買わないのに、台湾で、CDとVCD合わせて25枚くらい買ってしまった。全部見るには一年くらいかかるかもしれない。
 ミニチュアなどの壊れやすいものは、機内持ち込みすることにした。皆が、私のテーマソングを、「ガラスの三十代」に決めてくれた。「壊れそう〜な〜ものばかり〜集めて〜しまうよ〜」♪
 

*****9月15日*****

 早朝、ホテルに台湾人のガイドさんが迎えに来てくれ、空港へ連れて行ってくれる。朝食の時間がなかったので、台湾のファミマの、サンドイッチとおむすびをもらった。このおむすびは、日本まで空輸して、母に食べてもらった。
 関空までの飛行機の隣に、日本語の堪能なアメリカ人青年と、大阪のおばちゃんが座っていて、おばちゃんは、青年が日本語ができるとわかると、さかんに話しかけていた。
「えっ、ニューオーリンズ出身なの?(ハリケーンが)心配でしょう」
「ソウデス、ママノコトガ心配」
「私さっき、サンドイッチもらったんだけど食べない?」
「イヤ、ボク、パン嫌イナンデ、イイデス」
 ・・その、パン嫌いなアメリカ人と、おばちゃんは、飛行機を降りる頃には意気投合して、おばちゃんの車で、青年を、関空から加古川まで送ることに決まっていた。
 私は、台湾の新聞を読んだり、座席のテレビでテトリスをやったりしていた。機内アナウンスが入ると、テトリスが中断してしまうので困った。台湾のスポーツ新聞に、安達祐実のできちゃった婚が載っていてビックリした。ご丁寧に、過去の女性タレントとお笑い芸人の結婚の例まで載っていた(とんねるずの二人や、ココリコ遠藤等)。


 関空に着く。普段なら、大阪に来たら嬉しいのだが、「帰っちゃった感」満載だ。寂しい。皆でカレーうどんを食べた。おいしかった。トイレが思う存分流せるのが嬉しかった。
西門町で買った、黒地に小花模様の中国刺繍のサンダル・・・450元
永康街で買った、胸元が中国風のトップス・・・390元
士林夜市の、この看板・・・プライスレス

お金で買えない価値がある。
ありがとう台湾。



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