旅日記番外  津山編


 平成16年10月末、B,z・稲葉浩志氏の故郷・岡山県津山市を訪れた。ちなみに管理人は、鳥羽一郎の実家も訪れたことがある(15年11月の日記参照)ので、有名人実家シリーズ第二弾だ。

*****思案の福渡*****

 稲葉氏の実家が、「イナバ化粧品店」という化粧品屋を営んでいて、B,zファンの聖地と呼ばれていることは有名だ。同じ部の女の子と話が盛り上がって、行くことに決め、「本気で行く気なのか」と周囲から危ぶまれながら、隣の部の女の子一人、その隣の部の女の子一人も巻き込んで、総勢四名にまでふくれ上がる(ふくれ上がると言うほどの人数でもないが)と、我々のテンションは上がる一方だった。
 職場のパソコンを使って、ネットで情報を収集したり、JRの時刻を調べたりした。私は、職場のパソコンを使って、「えんそくのしおり」を製作した。JRの時刻や、注意事項(バナナやみかんはおやつには入らないこと、すいとうにカルピスを入れてこないこと等)をこまごまと書いた。「イナバ化粧品店」への期待もさることながら、食べたい物、行きたいところ等、夢はふくらむ。天気予報によると、当日は小雨らしかったが、我々はくじけなかった。ネット情報の中に、「稲葉氏が子どもの頃遊んだ川が近くにある」というのがあったが、隣の隣の部の女の子(Sさん)は、「雨が降ったら、川に行くのが大変そう」と心配していた。Sさんは、雨が降っても川に行く気なのかと愕然とした。

 当日は、朝の7時半にJR松山駅に集合し、8時11分の特急「しおかぜ」に乗った。アンパンマン列車だ。瀬戸大橋を通って岡山に渡る。景色はよかったはずだが、私は寝ていたので見ていない。岡山駅で、11時22分の快速「ことぶき」に乗り継ぐ。せっかくなので、岡山から、特急「スーパーいなば」に乗りたかったが、よけいに時間がかかる上、料金が四倍近くかかるのでやめた。
 「ことぶき」に揺られていると、周囲は秋の山の風情になってくる。山の中に、ちらほら家があって、柿がみのっていた。やがて山は深くなり、翡翠色の水の流れる谷の上を列車は走る。心洗われる景色だが、津山ってどんな田舎なのかと不安になる。津山の手前に、「福渡」という駅があって、看板があり、「行こうか岡山 もどろか津山 ここが思案の福渡」と書いてあった。意味も意図も全くわからない。

*****喜びのトマオニ*****

 12時半頃、津山駅に着いた。小さな駅だ。我々の他にも何組か、女の子のグループが降りたが、やはり、「イナバ化粧品店」がお目当てらしかった。津山駅で、「稲葉浩志君のメモリアルロードマップ」がもらえることは、ネットで調べて知っていた。早速案内所をさがし、マップを見つけ、先が思いやられるほど興奮する。津山駅で降りた旅行客は、ほとんど全員、そのマップをもらっていた。稲葉氏のお父さんが「一日駅長」を勤めたときの写真や、新聞記事の切り抜き等も飾ってあった。それが、案内所のめぼしいもののほとんどだ。どんだけの観光資源なんだ、稲葉。

 マップをもらわないと詳しいことがわからなかったせいもあるが、ここまでの道中、興奮するばかりでろくな計画を立てていなかった我々は、ここで昼食を取りながら相談することにした。駅を出て右に、商店街らしいものがあったので、行ってみたが、ありえないほどさびれていて、食事のできそうな店が見当たらない。ほとんどの店が閉めていて、最近の、地方都市の商店街は、どこもいけないんだなあ、とせつなくなるが、そんなことはこの際どうでもいい。おなかをすかせた我々は、うろうろ歩きまわったが、わずかに開いている店も、新鮮なものを出してくれそうにない。ペットショップがなぜか一軒だけあって、可愛いチワワ等の子犬がいた。犬は新鮮そうだった。

 商店街でマンガを読んでいる、地元の女子中学生の一団を発見した我々は、食事のできる店が近くにないか聞いてみた。女子中学生は、興奮しながら(私も小さい頃そうだったが、大人に道を聞かれると、自分が大人になった気がしたものだ)、教えてくれた。駅を出てすぐ左にホテルがあり、ホテルの一階がファミレス(トマトオニオン)になっていたのだ。さっそく駅まで戻って、そこに行った。普通のファミレスが、こんなにありがたく思えたことはなかった。

*****謎のごんごといちま*****

 ファミレスで行動予定を立てた。しばらくは歩いて行くことにしたが、これから行かれる方のために参考に書くと、観光タクシーや、バスで回るという手段もある。ちなみに写真は、「イナバ化粧品店」にあったタクシーの料金表だが、ふりがなが本名(HIROSHI INABA)になっているのが素敵だ。1.5時間で5,600円。写真では15時間に見えるが、違う(15時間はめぐりすぎだろう)。
 津山駅や、観光センターでレンタサイクルを借りられるので、それを利用してもよい。今回は、小雨が降っていたのと、管理人が自転車に乗れないという大きすぎる障害のために、借りることができなかった。
 さっきのさびれた商店街を抜けると、銀行の支店等もある、わりと普通な商店街が現れた。「ごんご商店街」という。市内を循環するバスの名も「ごんごバス」という。ごんごって何なのかいまだにわからないので、各自調べて私に教えてください(おまえが調べろよ)。
 ごんご商店街を抜け、マップを見ながら少し歩くと、稲葉氏の卒業した、県立津山高校がある。今は使われていない古い校舎は、NHKの朝ドラ「あぐり」のロケに使われたそうだ。校内に入ってはいけないのか迷ったが、少し入ってみる。校門前に、「「あぐり」ロケ地」と書かれた札が立っていて、見てもらいたい気満々だったからだ。在校生がいたが、特に我々を気にとめるふうでもなかった。B,zファンがうろうろするのにも慣れているのかもしれない。

 県立津山高校から、またマップを見ながら、稲葉氏のお兄さんの経営する和菓子屋さんくらや」まで歩く。これは少し遠かった。レンタサイクルか、タクシーをお勧めする。途中、津山市役所の近くに、「衆楽園」という、昔の藩主の庭園があり、タダだったので入ってみた。池に鴨がいて、クワァークワァーいいながらよってきたので、おやつに持っていたポッキーの、クッキー部分をやった。庭園は、とてもキレイだったが、今夏の台風の影響か、大きな木が根こそぎ倒れていて、びっくりした。

 「くらや」が見えたときには、ホッとした。別に稲葉氏のお兄さんの店だから繁盛しているわけではなく、ちゃんとした老舗の和菓子屋さんだ。中は明るく、広々している。お菓子の種類も多い。喫茶コーナーもある。一休みしてお茶を飲むことにし、ネットで、ワッフルがおいしいという情報を得ていた我々は、いちごクリームワッフルセットを頼んだ。すごくおいしかった。
 それから、陳列ケースのお菓子を物色し、油断なく奥の様子もうかがったが、稲葉氏のお兄さんは店にはいないようで、がっかりする。ここにもメモリアルロードマップがあったので、またもらう。何枚もらう気だ。普通の名所マップもあった。それが津山駅に置いてなかったのはどうかと思うが。そのマップによると、津山には、「イナバ化粧品店」以外にも名所はあり(当たり前だ)、お城もあるし、私のような標本マニアにはたまらない、世界でここでしか見られない剥製もある「津山科学教育博物館」もあるらしい。またいつか、津山に来たときには行ってみたい。

 おみやげに「柿大福」を買った。干し柿風味のあんが入っていて、おいしかった。一番有名なのは「いちま」というお菓子らしく、同じ部の女の子が買ったが、ブッセのような感じで、おいしかったらしい。何で「いちま」というのかは不明だ。箱に入っていた説明書きには、「もちろん市松人形のことです。雛どころ津山は古くから天神と、市松人形の町として知られています。(中略)この人形に添えた銘菓「いちま」も今では切りはなされぬ津山の味となってまいりました。この上とも御愛用下さいませ。くらや主人」と書いてあったが、読んでも、何でこのお菓子が「いちま」という名前になったのか、しょっぱなの「もちろん」が、何を根拠に言っているのか、さっぱりわからない。が、最後の「くらや主人」が、稲葉氏と同じDNAを持つ人間だということで、わからなくても許せてしまうB,zファンも多かろう。

*****狂乱のイナバ化粧品店*****

 「くらや」でタクシーを呼び、いよいよ最終目的地の「イナバ化粧品店」を目指す。運転手さんに「イナバ化粧品店」と言ってもわからなかったらどうしよう、と思ったが、全国から訪れるファンを「イナバ化粧品店」に運んでいるらしく、そんな心配は無用だった。途中、川べりでも、大きな木が倒れていた。台風がよほどひどかったらしい。

 ようやく「イナバ化粧品店」に着いた。道はせまく、駐車スペースはないので、マイカー(懐かしい言葉だ)では来ない方が良い。我々は、興奮のあまりキーキーいったが、まだ明るいうちに、行かなければならないところが残っていた。「イナバ化粧品店」のすぐ前に、稲葉氏が小さい頃よく遊んだという神社があるのだ。道をはさんでまん前だった。狭い石段を上がって行くと、ここにも台風の爪跡が残っていた。木々は倒れ、石段もガタガタに崩れかけている。それでも無理をして上がったのは、石段の途中にある石柱を見たかったためだ(写真参照)。寄付をしたときのものなのか。この台風の被害を修復するのにも、稲葉氏の寄付が必要だと思う。もっと大きな石柱を立ててもらうチャンスだ。それか、いっそのこと、狛犬を、稲葉氏と松っちゃんの顔にするのはどうか(してどうするんだよ)

 「イナバ化粧品店」に一歩入ると、B,z一色で、私は、痴呆のように、わあー、わあーと言っていた。稲葉氏のお母さんがいらっしゃり、そんな痴呆のようなファンにも、慣れた態度で接してくださる。我々がいる間も、ファンの人達がひっきりなしにやってきた。稲葉ママは、稲葉氏のような年の息子(しかもお兄さんもいる)がいるとは思えないほど若々しくて、シャキシャキしていた。一緒に写真を撮らせてもらう。写真を撮ってくれたお姉さん(店員さんかと思っていたらファンの人だった)は、撮るとき「はい、ビーズ」と言ってくれた。寒いとか言うな。こんな、ファンばかり集まっているとこでは、ベタな方がかえっていいのだ。

 少し落ちつくと、飾ってある大量のグッズや、稲葉氏が津山の名誉市民になったときの賞状や、プライベートアルバムを見せてもらう。プライベート写真は、もちろん撮影禁止だが、稲葉氏の小さい頃は、ハーフかと思うくらい髪が茶色でサラサラしていて、カワイかった。そして、体操服姿の写真では、上衣のすそを、きっちり、ジャージの中に入れこんでいた。愛媛の古い方言で、シャツのすそがズボンから出ているようなだらしない姿のことを、「びんだれ」と言うが、最近の若者はびんだればっかりだが、稲葉氏はびんだれじゃなかったのだ。よかったなあ(誰に向かって言ってるんだよ)。アルバムには、「イナバ化粧品店ファンクラブの集い」という、意味不明な集いの写真もあった。化粧品屋のファンクラブなんてはじめて聞いたが、写真を見た限りでは、中途半端なアーティストのファンの集いよりは、人が集まっていて、熱気もあった。お母さんのキャラのおかげだと思う。

 ファンの方々が描いてプレゼントしたらしい絵も、たくさん飾られていた。私が作って持ってきた「えんそくのしおり」にも、稲葉氏の似顔絵を描いていたので、「これも稲葉ママにプレゼントしたら、喜んでもらえるかもよ」と、女の子達に言ってもらい、その気になった私は、そうしようかと思ったのだが、「注意事項」のところに、「イナバ父を見て、ハゲていたからといって、ショックを顔に出さないようにしましょう」などという、よけいな一文を入れていたことを思い出し、危うく思いとどまった。

 ここにもメモリアルロードマップがあったので、またもらう。もう帰るだけなんだからいらねえだろうと言われそうだが、ここのマップには、「イナバ化粧品店」オリジナルスタンプが押されていたので、貴重なのだ。
 来たからには、化粧品も買わねばなるまい。資生堂のお店なので、安心して買える。「イナバ化粧品店」オリジナルシールの貼られたあぶらとり紙が大量にあって、Sさんは五つも買っていた。稲葉氏も使っているというコロンを、私もつけてもらう。「稲葉ママのおすすめコスメ」もあった。写真の「ひみつの白いお粉」とは、管理人も持っている美白パウダーで、けして合法ドラッグのことではない(失礼すぎだよ)。
 グロスとあぶらとり紙を買うと、プライベート写真で作った、稲葉氏のプリクラ風シールをくれた。ベネフィークのセット等を買えば、もっと大きな写真がもらえるのだ。そして、一度買い物をすると、花椿会の会員になれ、通販も申し込める。私が行ったときは、ベネフィークのシャンプーの予約を受け付けていて、通販で買うと、「イナバ化粧品店」オリジナルタオルがもらえるということだった。

 なんだかこう、書けば書くほど、単なる化粧品屋さんなのに、正気の沙汰ではない事態になっている気がするが、その場に身を置いていると、非常に心地良い。稲葉一家の仲の良さが伝わってくる気がする。お母さんが化粧品屋さん、お兄さんが和菓子屋さん、というのも、女性が行きやすく、おみやげも買えるので、ファン的にもイイ感じだ。これが、中古車屋だったり、雀荘だったりしたらまた違うだろう。

 あっという間に、一時間以上すぎて、外はすっかり暗くなっていた。稲葉ママは、我々が何時のJRに乗るのか聞き、それなら5時50分のバスに乗ればいいと教えてくれた。名残りおしいが、稲葉ママに握手してもらい、お店を出た。バス停はすぐ近くだ。が、待っても待ってもバスが来ず、もう行ってしまったのか、それとも遅れているのか、どちらにしてもヤバイので、タクシーを呼んで津山駅まで行く。
 稲葉氏がよく行くという、焼肉屋さん「アチャコ」で晩ご飯を食べるつもりだったのだが、時間がなくなってしまった。乗り継ぎの岡山でも時間がなく、結局晩ご飯抜きになってしまったが、大満足な旅行だった。唯一、後悔していることがあるとすれば、夜に焼肉を食べるつもりだったので、昼のファミレスでハンバーグが食べたかったのを我慢したことだ。くだらなすぎる。今、これを書いているのは12月末なのだが、二か月も温めといて書くレベルじゃないな。すいません。
 



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