05.3.6 文体大会

 前日から上京していた。昼頃羽田に着いて、何だか疲れていたので休もうと思い、ゲートを出たところで座っていると、寝ていた。鹿児島便が出発するらしく、周りの人達は皆いなくなってしまった。一人、乗るはずのお客さんが来ていないらしく、女性係員がさがしていた。寝ている私の顔をのぞきこむようにして、「鹿児島へご出発の山根様〜」と声をかけながら通って行く。私は鹿児島には行かないし、山根でもないのだが、それを言うのもおかしいので、寝たふりをしていた。
 また、用もないのに、第二ターミナルに行った。お茶を買った。ミニ缶(お茶の葉が入っている)がオマケについた伊右衛門がほしかったのだが、結局、あまぐりがオマケについたウーロン茶にした。私のあまぐり好きは一部で有名だ。昔、上京すると、東京の友達が、私の泊まっているホテルに遊びに来たりしたが、そんなとき必ず部屋にあまぐりがあったからだ。おなかがすいたので、千疋屋でフルーツサンドを買って、ロビーを見下ろすテラスのようなところに持って行って食べたが、今考えれば、そこはオープンカフェ的な場所の一部で、持ち込みしてはいけないところだったような気がする。

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 浜松町のホテルに泊まることにしていた。はじめて泊まるホテルで、JR浜松町駅の北口方面らしかったが、モノレールで浜松町まで行ったのに、それを忘れて、一生懸命、JR北口から出ようともがいていた。が、モノレールの浜松町駅に、JRの北口があるわけがなく、仕方なく、わけのわからない通用口みたいな出口から出た。すると、東京タワーが目の前に見えて感動した。
 もう泊まることはないと思うが、「芝弥生会館」というホテルで、劇団四季の四季劇場の隣にある。四季劇場なら、ゆりかもめに乗っていて見たことがあり、目立つ建物だから絶対迷わないと思ったが、大方の予想通り迷ってしまった。四季劇場が見えてもたどりつけない。分かれ道があると、必ず違う方へ行ってしまい、さんざん歩いて、どうやら違うと気づいて引き返すのだが、さっきの分かれ道まで戻ってみると、ちゃんと、「四季劇場こちら→」と、大きな貼り紙がしてあったりする。その隣の、「→乗車券センター」という小さな貼り紙は見て、「何の乗車券やねん」と思ったことはおぼえているのだが。

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 友達と、池袋で三時に会う約束をしていたのに、ホテルにたどり着いたらもう三時だった。荷物だけ預けて、また出発した。その友達は、埼玉の人で、私が、JR池袋駅のフクロウの石像「いけふくろう」の前で待ち合わせようと言うと、わからないと言う。それならどこかわかりやすいとこで、とメールすると、「池袋西武の三階の、ジル・スチュアートに来て」とのことだった。いや、それは全然いいのだが、なぜ、愛媛県人の方が合わせなければならないのかという疑問がわいてくる。他の友達とも合流できて、大変楽しかった。この前日、東京は季節はずれの大雪が降ったそうで、ビルの陰に雪が残っていた。ホテルの部屋は狭く、ベッドの頭のところに机があって、その上のテレビがはみ出して、まくらの上にせり出している。寝ている間に地震があったら、確実にこれが落ちてきて死ぬなと思った。

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 芝弥生会館は、海のすぐそばだ。翌日、試合当日は、昼まで寝たかったのだが、船の汽笛が鳴りまくり、早朝に目がさめた。それからは意地になって、フロントから「お掃除はいかがいたしましょう」と電話がかかってきても、断って寝続けた。
 昼、149ちゃんと、浜離宮を散策する。芝弥生会館は浜離宮の隣だが、川をはさんでいるので、歩いて行くと意外に遠かった。浜離宮はすごく広くて、海水をひいている池など風情があった。木々の向こうに、汐留のビル郡が見えるのも、対照的でおもしろかった。「あの大きいビルは何」と149ちゃんに聞くと、「あれは電通」と教えてくれた。あれが電通か、と感激し、次々に、あれは何、あれは、と聞いたのだが、149ちゃんは別にビルマニアではないので、全部はわからなかった。

 149ちゃんが、シオサイトに連れて行ってくれ、日本テレビに行けて嬉しかった。屋上に、「ごくせん神社」などというくだらないものが作られていたので、その前で写真を撮ろうと149ちゃんにもちかけたが、断られた。
 ディファ有明で冨宅さんの試合を見た帰り、フジテレビの玉の中に入ったこともあるし、私の「テレビ局めぐり」もこれで完成した、と149ちゃんに自慢した。めぐったといっても、TBSは、赤坂陽光ホテルに泊まったとき、前を通ったことがあるだけだが。
 「日テレ屋」というショップがあって、いろんなテレビ番組のグッズを売っていた。二月に京都に行ったとき、京都駅の「手塚治虫ワールド」で、「ブラックジャック先生のおすすめビタミンキャンディー」を買って、「ええやろ〜」と自信満々で、149ちゃんにおみやげにしたのだが、「日テレ屋」にも売っていた。がっかりだ。ギター侍が好きな母へのおみやげに、「エンタの神様・波田陽区メモ帳」を買った。それと、黄色に赤い字で「KEEP OUT」と書いてある、「火曜サスペンス劇場セロテープ」。我ながら、自分は買い物上手だと思い、149ちゃんに自慢した。

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 149ちゃんと別れて、関内に向かう。パンクラスに行きはじめた当初、京浜東北は私鉄だと思っていたり、関内に行くには横浜で地下鉄に乗り換えないと行けないと思い込んでいたり、自動改札でひっかかってピーピー鳴っているのに、それが自分のひきおこした事態だと気づかず、改札を強行突破してしまったりと、横浜には素敵な思い出がいろいろある。今回はすんなり関内まで行けた。

 横浜文化体育館は久しぶりだ。パンクラスに行きはじめた当初、間違えて横浜教育文化会館に行ってしまったり、冨宅さんの復帰戦を見たり、鈴木ライガー戦のとき、家にチケットを忘れてしまってその席番号が知りたくて家に電話したり、そのとき母に「これが一万六千円もするんかね!」と叱られたりと、文体には素敵な思い出がいろいろある。
 コンビニで、念願のミニ缶つき伊右衛門を買って、文体に向かう。周囲の景色がちょっと違うように見え、「二年も来ないとすっかり変わったなあ〜」と思っていたのだが、出口を間違えていた。当然のことだが、歩いても歩いても文体には着かず、不安になって引き返すと、横浜スタジアムがあったので、ようやく方向が違うことに気づいた。文体に着いたらギリギリで、冷や汗をかいた。

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 パンクラスの女子部門、パンクラス・アテナで、渡邊久江選手と大室奈緒子選手の試合があった。私は、普通の女子プロもふくめて、女子の試合を見るのはこれがはじめてだ。どうなのかと思っていたが、意外におもしろかった。渡邊選手はカワイかった。大室選手は、身長148cmと、149ちゃんよりも小さいのだが、頑張っていた。アテナとは、ギリシャ神話の戦いの女神だが、それになぞらえて、私も、これからパンクラスに設けられそうな「部門」をいろいろ考えてみた。
 パンクラス・マルス(ギリシャ神話の戦争の神)・・・対戦車砲、地雷等、対戦相手を殲滅するには手段を選ばない部門
 パンクラス・バッカス(酒の神)・・・酔拳で、酒の入ったひょうたんを持って試合をする部門
 パンクラス・デメテル(農業の女神)・・・鍬や鎌なら、凶器として使ってもいい部門
 パンクラス・ヘパイストス(鍛冶の神)・・・真っ赤に焼けた鉄なら、凶器として使ってもいい部門
 パンクラス・クピド(愛の女神の息子)・・・金の矢を持っていて、その矢で対戦相手を射ると、相手が自分に恋してくれる部門(試合でも何でもねえじゃねえかよ。)

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 第二試合の、折橋選手と山岸選手の試合は、写真を撮りそこねたのが残念なのだが、レフェリーの和田さんも含めて、全員がツルッパゲという、「坊主マッチ」だった。一人だけ坊主じゃないとか、坊主に近いがちょっと毛がのびている、というような、「ニヤー坊主マッチ」はよくあるのだが、完全な坊主マッチには意外にお目にかかれないものだ。

 休憩明け、この文体大会に協力してくれた、横浜の商店街だか中華街(多分間違っている。商工会とかそんなところかも)の方々の挨拶があった。こうして試合があれば、人が来るし、横浜の方々にとってもいいことだろう。私のように遠くから来て、ウロウロして、いろんなものを見たり、買ったりする人もいるだろう。鈴木選手の挨拶もあった。頭の溝が、見るたびに進化をとげて大変なことになりつつある。

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 グラバカとブラジリアンとの対抗戦があり、山宮選手の試合が久しぶりに見れて嬉しかった。この日は、マイクアピールが少なくて助かった。
 メインは、郷野選手の、キックの試合だった。パンクラスのリングでキックの試合が行われるのは、モーリス・スミス選手対山田選手以来らしい。郷野選手は、試合前、紙プロのインタビューで、「明らかに選手の友達と思われる一団が客席で騒いでいるとアマチュア臭くなる」と言っていたが、その通りで、どう見ようと勝手ではあるが、せめて雰囲気をこわさないようにしたいものだ。一人の声でも、全体の空気にかかわるものなのだ。ドラマに、谷隼人が出ていたら、それがどんなドラマでも、いっぺんに、「土曜の昼下がりに再放送している昔の二時間ドラマ」の感じになってしまうのと同じだ。本の中で、バッグのことを「バック」と書いたら最後、その本全体が昭和の感じになってしまうのと同じだ(・・・いや、違うかもしれん)。郷野選手がKO負けしてビックリしたが、その瞬間は、一瞬目をそらしたのかアングルが悪かったのか、よく見えなかった。以前、なみはやドームで謙吾選手がKO負けしたとき、私は、「みたらしだんごのことを考えていた」という理由で、その瞬間を見逃したことがある。

 知り合いの方々と横浜でご飯を食べ、ホテルに帰った。浜松町の駅から歩くと、道は暗くて誰もおらず、少し怖かった。そんなとき、向こうから、おじさんが一人歩いてくるので、「悪い人だったら怖いなあ、逃げようか」と思っていたら、おまわりさんだった。「もう遅いから気をつけてね」と言ってくれ、何だかとても安心した。逃げなくてよかった。逃げていたら、おまわりさんは、自分達はなんぼほど市民の信頼を失っているのかと、悲しんだに違いない。

☆☆おまけ☆☆


 昔、パンクラス文体大会の前、中華街で買った、ブルース・リーの絵はがき。

 これもパンクラスがもたらす中華街への経済効果です。

 アルティメット系ですが、後ろの坊さんはのんきな顔をしています。

 


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