03.9.15 IMPホール大会

 はじまりは、8月30日、パンクラス10周年パーティーの日。冨宅さんは、単身、デルフィンアリーナに乗り込んで、「村浜選手のベルトに挑戦したい」との意志を表明した。そのために、大阪プロレスに定期的に参戦し、勝利を重ねた上で、挑戦権を得たいということだった。初戦は、9月15日、IMPホールに決まった。
 いきなり「村浜に挑戦させろ」と言わないところが、冨宅さんらしくていいが、勝利を重ねるには、試合を重ねなければならないのに、大阪プロレスには、素顔の選手がほとんどいない。最終目標の村浜選手、IMPでの対戦相手に決まった福田ユタカ選手、デビューしたばかりの、まだ初々しくもぎこちない的場選手、怪我で欠場中のGamma選手以外は、マスクマンばかりだ。
 ということは、冨宅さんVSえべっさんとか、冨宅さんVSくいしんぼう仮面とかもアリなのか。そもそも、冨宅さんは、本心、何を思って、こんな思い切ったことをやらかしたのか。大阪プロレスには、一度も行ったことはないが、どんな雰囲気なのか。冨宅さんは、どんな試合をするのか。そして、大阪プロレスのファンには受け入れてもらえるのか。チケットは買えるのか。IMPホールの周囲には、食事のできる店はあるのか。阪神の優勝はいつ決まるのか。大阪南港の待合室の水槽の亀は死んでいないか等、さまざまな不安や疑問の渦巻く、収拾のつかない状態で、15日、大阪南港に上陸した。亀は死んでいなかった。

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 前もって、大阪プロレスの公式サイトや、ファンの方々の集うサイトで、予習に努め、アドバイスを求めると、ファンの方々は皆やさしく、いろいろ教えてくださった。「IMPホールは、前回も満員だったので、前売り券を買っておいた方がいい」と言われたので、教わった通り、ローソンのロッピーで買おうとしたが、なぜか、14日のデルアリのチケットはあるのに、15日のIMPは取り扱っていない。それに気づいたときには、「ぴあ」等でも取り扱いが終わっていたので、泣く泣く、当日券を買うことにした。当日券を買うのは、二年前の後楽園ホール(冨宅さんの出場が前日に決まって、急遽仕事を休んで上京したとき)以来だ。勝手を知らないので、何時頃から並んだらいいかわからず、とりあえず、梅田で昼食をすませて、地下鉄で、大阪ビジネスパーク駅まで行った。
 大きなビルが林立していた。どれがIMPホールのあるIMPビルかわからないが、あれだろう、と目星をつけて、自信を持って歩いて行き、しばらくして何気なく振り返ると、背後のビルに、大きく「IMPビル」と書いてあったので、あわてて引き返した。
 IMPホールに行くと、当日券の発売は二時からだった。すでにたくさんの人が並んでいたので、私も並び、四十分ほど待って、無事、三列目を買うことができた。

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 チケットが買えたので安心し、五時の試合開始まで、周囲を散策した。すぐ近くに、大阪城のお堀があった。大阪城ホールでは、世界柔道をやっていた。大阪城公園には、野良猫がたくさんいて、可愛かったが、野良犬がたくさんいたのは、少し怖かった。そして、野良人もたくさんいて、青いビニールシートの家がたくさんあった。愛媛県の、柳谷村の人口くらいはいるのではないかと思われた。大阪城が見たいのに見えなくて、うろうろした。城というものは高台にあって、離れたところからも見えるもの、という思い込みがあったのだが、大阪城は平地で、内堀まで入って、ようやく見えた。城を見たので満足して、IMPビルへ帰った。

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 今回も、正装で駆けつけたMさんと一緒に観戦できたので、心強かったが、「Uスタイルのときとは全く違う意味で緊張している」と、意見が一致した。この行楽日和の連休最終日、甲子園では阪神の優勝が決まりそうな上、なみはやドームでは新日本プロレスの興行が行なわれているさなか、IMPホールには、真に大阪プロレス(と冨宅さん)を愛する者達が集まっていた。子どもを連れた家族連れが多いのも、パンクラスとは違うところだ。
 大阪プロレスは、はじめて見たが、とてもおもしろかった。私は、基本的にゲラで、コテコテのネタが好きなので、向いているのかもしれない。えべっさんは、お賽銭を集め、笹で客の頭をなでながら入場してきて、スペル・デルフィン社長を、「給料上げろ」「ボーナス出せ」と責めたてたが、あえなく敗れた。そのあと、デルフィン社長と、その飼い犬「みんなの友達」ペロ、ペロの彼女・ペッキーちゃんが、クイズを出し、正解した子どもには、ペッキーちゃんが風船をねじって作ったキリンがプレゼントされた。ちなみにそのクイズは、「おそうじばっかりしてる鳥はなに?」で、私は「ちりとりだ!」とわかったので手を上げようとしたが、みっともないのでやめた。ペッキーちゃんはピンクの犬で、可愛かったが、中には、どんな女性が入っているのだろうか。「中の人などいない!」というのが正解だろうが。

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 楽しかったが、ペッキーちゃんが去ったすぐあとのリングに、冨宅さんが登場してくるのは、一日たっても消化しきれないほどの違和感がある。冨宅さんは、Uスタイルのときと同じ、赤いガウンで入場してきた。袖の長さがあっていないのが気になっていたのだが、船木さんからゆずられたものらしい。相手の福田選手も、レガースをつけている。試合は打撃戦になった。冨宅さんは、ドロップキックも披露した。慣れないリングだが、キャリアの差を見せて、危なげなく、5分35秒、チキンウイングフェースロックで勝った。福田選手も、一生懸命で、好感が持てた。
 冨宅さんは、試合後、マイクを握り、「はじめてで、どうだったかわからないが、これからも頑張っていきたい」「いつ、誰とでも試合をします」「一つでも負ければ、村浜選手への挑戦権はないものと思っています」と、礼儀正しく語り、大阪プロレスのファンからも、温かい拍手と声援が送られた。「一つでも負ければ」のくだりでは、私は、「滅多なことを言わない方がいいのに」と、冷や汗をかいていた。

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 そのあと、タイガースマスクと、くいしんぼう仮面が、大阪名物世界一をかけて対戦、私は、くいしんぼう仮面が入場するときに投げてくれたおせんべいをキャッチした。タイガースマスクが王座を防衛、「スペル・デルフィンを大阪府知事に!大阪を日本の首都に!」とマイクアピール。それにしてもなぜ、大阪限定なのに、「世界一」なのだろう。
 セミファイナルでは、インフィニティというタッグを組んでいる、ツバサとブラックバファローが、解散をかけて対戦。「おれがツバサの足を引っ張っている」と、ブラックバファローが悩んでいたらしいので、ツバサに負けて、ますます解散に向けて踏み出すのかと私は思ったが、闘うことによってわかりあえたらしく、解散は取り消しになった。この試合で、数年ぶりに、場外乱闘を間近で体験。
 メインでは、なみはやドームでの試合を終えて駆けつけたライガーと、村浜の持つタッグチャンピオのベルトに、岸和田愚連隊のMA−G−MAと大王QUALLTが挑戦。岸和田愚連隊は、どう見ても悪者で、ゴアを乱入させたり、卑怯なことをするのに、人気があるようだ。「ライガーをぶっ殺せ」と叫んでいるオヤジや少年もいた。大人はともかく、子どもまでそれでは、教育上問題があると思う。あまりにも気の毒で、私もMさんも、途中から、ライガーと村浜を応援していた。ライガーと村浜は、無事ベルトを防衛した。

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 いろいろあったが、とても楽しかった。冨宅さんの、5年3か月ぶりの勝利を見られて、泣くほど嬉しかった。冨宅さんが、プロレスをしたかったのなら、それができる環境になって、本当によかった。パンクラスミッションを作ってくれた鈴木選手の勇気に感謝したい。


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