『ホントの友達』
シナリオセンター本科 課題作品
課題:おせっかい
人 物
沢渡菊花(14)中学生
五代繁美(14)中学生
五代晴美(40)繁美の母・コンビニ店員
矢部智仁(36)体育教師
片倉(14)中学生
南野(14)中学生
相原(14)中学生
○××中学・全景
自然に囲まれた山間部の学校。
○同・教室・中
黒板に「自習」の文字。生徒達の話し声で騒がしい教室内。
友人と談笑しながらも、ふと教室の一角に目を留める沢渡菊花(14)。
五代繁美(14)席を取り囲み、鋭い目で繁美を見下ろしている片倉、南野、相原(何れも14)。
身体を硬くして俯いたままの繁美。
まるで無関心な様子の周囲の生徒達。
○山道(夕)
俯き加減で足早に歩く繁美。
後ろから繁美の肩を叩く菊花。
菊花「よっ。前見て歩かんと車に轢かれるで」
菊花と眼を合わせようとしない繁美。
菊花「こっちでの暮らし、もう慣れた?困ったことがあったら、なんでも相談してくれていいんやで。友達やろ、私たち」
繁美「……」
菊花「あんた、今日片倉たちに……」
繁美「(遮って)今日急ぐから」
足早に歩き出す繁美。
菊花「繁美!」
振り向かない繁美。
○コンビニ・前(夕)
店の前に立つ菊花。
窓越しにレジに立つ五代晴美(40)が見えている。
○同・中(夕)
商品を抱え、レジの前に立つ菊花。
菊花「こんにちは、おばさん」
晴美「あら菊花ちゃん、こんにちは。お使い?」
菊花「ええ、まあ……」
晴美、レジを打ちながら、
晴美「繁美、元気でやってる?最近、何だか様子が変だから心配で」
菊花「言葉も違うし、まだ完全に慣れてないんやと思いますけど……」
晴美「引っ越してもう半年も経つのにねえ。(笑う)でも、菊花ちゃんみたいな友達がいてくれて助かったわ」
菊花、思い切ったように顔を上げて、
菊花「あの……おばさん」
○五代家・菊花の部屋(夕)
ベッドに横になっている繁美。
晴美の声「ただいま〜。繁美、いる?」
ドアが開き、晴美が入ってくる。
晴美「いるんなら、返事ぐらいしなさい」
不機嫌そうに顔を上げる繁美。
一息ついてから口を開く晴美。
晴美「菊花ちゃんから聞いたの。あなた、いじめられてるの?」
繁美「知らないわよ」
晴美「先生には相談したの?」
繁美「知らないって言ってるでしょ!」
起き上がり、晴美をドアの外へ押しやる繁美。
○××中学・構内
降りしきる雨。登校していく生徒。
ツンとして足早に歩く繁美と、それを追いかける菊花。
菊花「ねえ繁美、繁美ってば」
繁美「(黙っている)……」
菊花「おばさんに話したこと、怒ってるんか?だって、あんたが心配やったから……」
繁美、ふと前方見て足を止める。
校舎の軒下で雨宿りをしている片倉、南野、相原。
息を呑んでその前を通り過ぎようとする繁美だが、片倉に道を塞がれる。
片倉「(わざとらしい調子で)ホンマうざい雨やわ。そやのに私、傘忘れてきてしもうた。誰か貸してくれんかな〜」
片倉、繁美の持つ傘を見て、
片倉「お、こんな所に傘があるやないか。ラッキー」
と、繁美の傘を掴んで奪おうとする。
手に力を込めて抵抗する繁美。
片倉、一方の手に持っていた鞄で繁美の顔を激しく叩く。地面に倒れる繁美。
片倉「ありがとな。ホンマ五代さんって親切やわー」
笑いながら立ち去る片倉たち。
倒れた繁美に駆け寄る菊花。
菊花「……先生に言うわ」
繁美、起き上がりながら、
繁美「無駄よ。何もしてくれない」
菊花「矢部に相談してみるわ。アイツ怖いけど、こういう時は却って頼りになるかも」
繁美「頼むから余計なことしないで!放っといてよ!!」
菊花「でも、何もせんかったらずっとこのままやんか!それでもええんか?!ウチ、言うからね」
走り去る菊花。
繁美、その後姿を見送り、
繁美「……さっきは黙って見てたくせに」
○同・教室・中
談笑している片倉、南野、相原。
竹刀を手にしたジャージ姿の矢部智仁(36)が入ってきて、
矢部「そこの三人!ちょっと来い」
○同・職員室・中
矢部の前に片倉、南野、相原。
竹刀で机をバシンと叩く矢部。
矢部「お前ら、人のモノ取った上に暴力ふるって傷付けるいうんは犯罪やぞ、犯罪!黙ってないで何とか言うてみい」
突然、矢部に深々と頭を下げる片倉。
片倉「申し訳ありませんでした!ウチら、軽い気持ちで五代さんをちょっとからかっただけのつもりで……でも、もう二度としません!」
南野、相原も慌てて頭を下げる。
矢部「ホンマやな。信用してええんやな」
片倉「はい!」
頭を下げ続ける片倉たち。
部屋の一角に隠れるようにして一連の様子を見ている菊花。
○同・校門前(夕)
得意顔で繁美と向かい合う菊花。
菊花「そーゆーことだから、もう安心して」
疑い深そうに見ている繁美。
○山道(夕)
夕闇が迫る薄暗い山道を、一人歩いている繁美。
脇道に停まっている一台の車。マジックミラーで中は見えない。
緊張した面持ちでその脇を通り過ぎようとする繁美。
突然、車の中から二人の若い男が現れ、繁美を羽交い絞めにする。
繁美、悲鳴を上げるが口を塞がれ、車の中に連れ込まれる。
○車の中(夕)
後部座席に連れ込まれる繁美。
助手席に座っていた片倉が振り向く。
繁美「(驚き)!」
片倉「あれ、奇遇やな五代さん。ウチ、矢部に怒られてしもた。だからもう二度とあんたに手は出さん。少なくとも自分ではね」
言いながら、男二人に目配せして冷笑を浮かべる。
悲鳴を上げる繁美に容赦なく覆いかぶさる二人の男。
○××中学・教室・中
授業中の教室内。
繁美は欠席している。空の席を心配そうに見ている菊花。
○五代家・玄関・前
インターフォンを押す菊花。
ドアが開き、晴美が出てくる。
菊花「こんにちは。繁美さんは……」
晴美「(気まずそうに)ごめんなさい。今、誰にも会いたくないって……」
晴美の後ろから顔を出す繁美。
菊花「繁美……」
繁美「何しに来たの!帰ってよ!出てって!」
喚く繁美を必死になだめようとする晴美。
繁美「あんたが余計なことするからこんなことになったんだ!全部あんたのせいだ!あんたなんか友達じゃない!」
晴美「ご、ごめんね、菊花ちゃん」
と、繁美を奥の部屋へ連れて行く晴美。放心状態で立ち尽くしている菊花。
雨が降り始める。
○某駐車場
片倉の前に立つ菊花。
傘も差さずにびしょ濡れである。
片倉「こんな所呼び出して何の用や」
菊花「あんた、繁美に何したん?」
片倉「何言うてんねん。何って何や」
菊花「男二人に繁美を襲わせて、黙って見てたことや」
片倉の表情が変わる。
片倉「何でお前がそれを知っとるねん」
菊花「繁美のお母さんから聞いた」
菊花、片倉が手にした傘を見て、
菊花「それ、繁美のやろ。返しなさいよ」
と、傘を掴んで強引に奪おうとする。
片倉「何すんねん!お前もやったろか?」
激しく掴み合ううち、傘の針金の一つが外れ、片倉の腕に突き刺ささる。
悲鳴を上げて地面に転がる片倉。
片倉「痛い!抜いて!抜いて!」
落ちている傘を拾い上げ、先端を片倉に向ける菊花。
菊花「繁美の痛みはこんなもんやない」
と、片倉に迫ろうとするが、突然後ろから抱きすくめられる。繁美である。
菊花「(驚き)繁美……」
繁美「もういい!もういいから!」
フラフラと逃げていく片倉。
菊花「繁美、どうして……」
繁美「大事な友達に人を傷つけたりさせない」
菊花「……!」
繁美「ごめんなさい……あなたに甘えてた……こんなことまでさせて……」
傘を取り落とし、繁美の手を取る菊花。
菊花「繁美やない。繁美のせいやない。あなたは、私が守るから……」
手を取り合う二人を、静かに濡らし続ける雨。
(終)
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