“ぴり”と“ちび”のお話




僕たちはここに来る前、大好きな家族のみんなと暮してたんだ。

家族との幸せな暮らしは当たり前に続くと思っていたんだ。


ある日、新しいお家に引っ越す事が決まった。

今より自然がいっぱいで、とっても広い所に行くんだって、家族で話してたんだ。

だから僕たちも、みんなと一緒に嬉しくなって、引っ越しの日を楽しみにしてたんだ。

でもね、僕たちは連れて行ってもらえなかった。

引っ越しの数日前、僕たちは突然ここへ連れてこられた。

今世話をしてる人たちは、僕の家族に何度も何度も、引っ越し先へ連れて行ってあげて下さいと、お願いしていたけれど、

それは叶わなかった。

“ここで引き取ってもらえなかったら保健所に・・・” 大好きだったお母さんのそんな言葉を、

傍で聞いている僕たちはとっても辛かった。

お母さんは、子どもたちには内緒にして、僕たちをここに置いていったけれど、

僕たちや、いっぱい遊んでくれた兄弟のようなお姉ちゃん達の悲しみに、どうして気づいてくれないの?


僕はひとつの目で、たくさんの事を見てきた。

この目は、病気だった僕を病院に連れて行ってくれた昔の家族が、手術をしてくれたんだ。

でもね、僕の幸せはたったひとつだったんだよ。

最後まで家族と一緒に暮らしたかった、それだけだったんだ。


僕たちにはまだ、長い人生がある。

僕たちが新しい家族と暮らせるチャンスを下さい。