……白い煙か、霧か、たちこめていた。……そこでは。……誰もが視野を奪われていた。……誰もが。……
……誰もが、行く先を失ってさまよっている。……そして、あたかも、その場所があらかじめ決められた目的地であったかのように。……
……ことこと、という足音。……カタカタ、という足音。……


……耳を澄ませてごらんなさい。……こまやかな音の集積がここにある。……ここに集まっている。……
…………明るい音…………白い音…………
……吸い込まれるように集まる音は、交差点の真中でぐるぐると渦を巻きながら、それぞれから奪った視野を撹拌し、黄色や緑や紫の混じったペースト状の流動体へと変質を促している。……私たちの視野は、言葉ではない微かな悲鳴のようなきしみを、私たちの記憶の奥底に響かせながら、自らを物質とする。……
…………物質化された視野/視線…………