生まれたままの姿で 歯を磨く 

     何度も何度も繰り返し 時間を忘れて 手を動かす 

     体がゆれる 勝手に動く そして 白い液体が溢れ出し 

     水みたいに流れて 腹や膝にこぼれ落ちる 

   
     なぜだかそれを 汚いなんて思わなかった 

     愛しいくらい 生暖かい私の分身 

     止めどなく流れるそれを 私はただ見つめる 



     人間の肉体から出てきたモノに 特別な感情は持たない 

     快楽の後の産物 後に残るのは空しさ 涙も出ない 

     でも時々 ふっと 昔の記憶が蘇る

     ドロドロと溶けてしまいそう 心と体が 痛い

     
     声を押し殺しながら 行くあてのない海を 泳ぎ続ける魚達
     
     そのぬくもりに抱かれて 一瞬 暖かさを感じる

     そんな幸せが ずっと続けばいいのに


     
     気がつくと 夜は明けていた











            

Photo by Tina