尾瀬のイベント見て歩き  戻る


尾瀬国立公園記念式典 「尾瀬から地球環境へのメッセージ」
項  目 内      容
期日 2007年12月23日(日)
会場 東京都 日本消防会館 ニッショーホール
第T部 みんなで考える 尾瀬と自然環境
主催者あいさつ 尾瀬国立公園記念事業実行委員会委員長  大澤 正明 氏(群馬県知事)
  • 今年の8月30日に全国で29番目の国立公園になった。環境省の尽力による。
  • インドネシアで気候変動の会議があるが、尾瀬を通して地球環境を考えるのは大変有意義である。
  • 環境保全にそれぞれの立場で取り組む決意を力強く発信していきたい。
共催者あいさつ 環境省自然環境局長  桜井 康好 氏
  • 自然公園法ができて50年目であり、国立公園の誕生は20年ぶりである。
  • 昭和9年に日光国立公園が誕生したが、このたび、尾瀬地域に会津駒ヶ岳、田代山、帝釈山を加えて尾瀬国立公園となった。
  • 尾瀬は本州最大の高層湿原である。四季を通じて訪れる人が多い。
  • 管理に置いても先進的地域である。ゴミ持ち帰り運動やマイカーの規制などが実施されている。また、尾瀬保護財団という組織がある。
  • レンジャー2名が、片品村、檜枝岐村に駐在することになった。
  • 自然を守り、素晴らしい尾瀬を後世に伝えることを決意している。
  • 皆さんも是非、尾瀬を守る活動に参加して欲しい。
尾瀬国立公園ロゴマーク表彰式 表彰内容
  • 今年の6月から募集を開始し、1,535点の応募があった。
  • 8月31日に審査の発表をした。
  • 最優秀賞は小原朱子(おばらあやこ)さんである。
福島県知事 佐藤 雄平 氏
  • 国内では45都道府県から、海外ではオーストラリア、ベルギー、韓国からも応募があった。
  • 年齢では、6歳から93歳まで幅広かった。
  • 小原さんの作品は、ミズバショウをデザイン化したもので、シンプルで爽やかなデザインである。
  • 尾瀬は世界に誇る遺産であり、力を合わせて保護と適正利用に努めていきたい。
特別講演 「自然環境を肌で学ぶ」  東京大学名誉教授 養老 孟司 氏
  • 五感が脳への入力となり、脳が演算をして、身体の運動として出力される。その運動が、フィードバックされて、人間は成長していく。
  • 脳をどう訓練するかを考える人が多いが、そうではなく、五感をどう訓練するか、運動機能をどう訓練するかが重要である。
  • 例えば、筋肉の動きを止めると、呼吸すらできない。運動できるようになって、言葉も話せるようになる。
  • 通常、生き物は敵がどこからやってくるか分からないから、次の動きに備える必要がある。
  • そういう場合、人で言えば体に力が入っていないで、フワッと立っている必要がある。もし、一方向に構えていると、逆に来た場合には対応できなくなる。
  • こうやって運動機能が形成され、それがフィードバックされて五感が鋭くなっていく。
  • しかし、日本では運動を系統的に壊してきた。
  • 今の若い人は、次の動きが予想されないから、べたっとして居着いている感じになっている。私は、「生き物」ではなく、「置物」と呼んでいる。
  • 感覚が鈍いと、世界は安全・平和に思える。
  • 五感の働きを小さくし、運動の働きを小さくすると、それに伴って脳の働きが小さくなる。だから、危険があっても、気づかない。
  • 感覚は人により、全て違う。だから、同じ山に行っても、人により見えるものが違う。
  • 世界を変えようと思うなら、まず自分を変える必要がある。私が大学をやめた後は、世界が2倍に明るくなった。
  • 何かしようとするときには、体の動きが先行するものだ。脳での意識は、体の動きに依存している。
  • 都会では、「ああすれば、こうなる。」ということが成り立つが、一般にこれが成り立つものは少ない。
  • 自然には同じものが2つとない。自然の中に入っていくと、自分の思うようにはいかない。それでその人の感覚が開いて、自分が変わっていくのである。
記念公園 「ラムサール条約の尾瀬」
   ラムサールセンター事務局長 中村 玲子 氏
  • ラムサール条約とは
    • Convention on Wetlands of International Importance especially as Waterfowl Habitat, Ramsar, Iran 1971

      特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約
      (水鳥が重要ということではない)
  • ラムサール条約の歴史
    • 1960年 Project MAR発足
      欧州で湿地の開発、干拓、埋め立てが進行していた
    • 1962年 MAR会議
      国際協力の必要性から、条約を作ろうという機運
    • 1971年 「水鳥と湿地の保全に関する国際会議」(ラムサール・イラン)で採択
  • ラムサール条約のマークの変遷
    • COP5 1993 釧路 では、タンチョウ
    • COP8 2002 バレンシア では、水草と魚(水鳥がない)
    • COP9 2205 カンパラ では、人
  • 締結国と登録湿地
    • 157か国、1702湿地 1億5300万ヘクタール
      (2007年12月)
      アジアでは、日本・中国・韓国・フィリピン・インドネシアなど29か国
  • ラムサール条約の中心的理念
    • 湿地の賢明な利用
      「湿地の賢明な利用とは、持続可能な開発の趣旨に沿って、生態系アプローチの実施を通じて達成される、湿地の生態学的特長の維持のことをいう」(COP9決議)
  • 湿地の定義
    • 天然のものであるか人工のものであるか、永続的なものであるか一時的なものであるかを問わず、更には水が滞っているか流れているか、淡水であるか汽水であるか鹹水(海水)であるかを問わず、沼沢地、湿原、泥炭地又は水域をいい、低潮時における水深が6メートルを超えない海域を含む。(第1条第1項)
  • 湿地のタイプ
    • 海岸性内陸湿地……浅海・珊瑚礁・砂浜・潟湖・干潟など  12タイプに分類
    • 内陸湿地……河川・湖・湿原・湿地・オアシス・内陸カルストなど  20タイプに分類
    • 人工湿地……養殖地・水田・一時的に冠水する農地・貯水池・下水処理場・運河など 10タイプに分類
  • ラムサール条約湿地選定基準(9基準)
    1. 特定の生物地理区を代表するタイプの湿地、又は希少なタイプの湿地
    2. 絶滅のおそれのある種や群落を支えている湿地
    3. 生物地理区における生物多様性の維持に重要な動植物を支えている湿地
    4. 動植物のライフサイクルの重要な段階を支えている湿地。又は悪条件の期間中に動植物の避難場所となる湿地
    5. 定期的に2万羽以上の水鳥を支える湿地
    6. 水鳥の1種または1亜種の個体群で、個体数の1%以上を定期的に支えている湿地
    7. 固有な魚類の亜種、種、科の相当な割合を支えている湿地。また湿地というものの価値を代表するような、魚類の生活史の諸段階や、種間相互作用、個体群を支え、それによって世界の生物多様性に貢献する湿地
    8. 魚類の植物源、産卵場、稚魚の生息場として重要な湿地。あるいは湿地内外における漁業資源の重要な回遊経路となっている湿地
    9. 湿地に依存する鳥類に分類されない動物の種及び亜種の個体群で、その個体群の1パーセントを定期的に支えている湿地
  • 尾瀬のRIS(ラムサール条約湿地情報票)
    • 条約湿地名称 : 尾瀬
    • 緯度経度 :
      • 尾瀬ヶ原を中心とした区域
        北東の隅 東経139度19分50秒 北緯36度56分35秒
        南西の隅 東経139度11分05秒 北緯36度53分00秒
      • 御池田代を中心とした区域
        東経139度17分37秒 北緯36度58分36秒
    • 一般的所在地 :
      福島県檜枝岐村、新潟県魚沼市、群馬県片品村の市村境に所在
    • 面積 : 8,711ha (尾瀬ヶ原を中心とする区域 68,629ha、御池田代を中心とする区域 82ha)
    • 選定基準 : 1 (特定の生物地理区を代表するタイプの湿地、又は希少なタイプの湿地)
    • 選定した基準の根拠 :
      高層湿原を主体とする湿原として我が国最大であり、その広大な美しい景観とともに湿原特有の動植物に恵まれた貴重な湿原環境を持つ
    • 湿地タイプ : 内陸性湿地 (樹林のない泥炭地、淡水湖沼、[山岳湿地]) 
    • 社会的、文化的価値 :
      生活用水、農業用水、工業用水等の水源  景観資源
    • 土地保有権、所有権 :
      湿地 国有地(農林水産省) 2,425ha
          国有地(環境省)       9ha
          民有地          6,277ha
      周辺地域 国有地、民有地
    • レクリエーション、観光の現状
      ビジターセンター、山小屋、木道が整備されており、年間30〜60万人が利用する。平成16年の利用者は約34万人。
  • ラムサールセンターとは
    • 設立 1990年5月
    • 事務局 東京都大田区内
    • 非政府組織(NGO)
    • 個人会員 約100人
  • ラムサールセンターの活動
    • 目的:ラムサール条約と、その基本精神である湿地の賢明な利用を日本とアジアに普及する
    • 重点活動地域:日本とアジア
  • ラムサール条約登録湿地「尾瀬」への3つの期待
    • ラムサール条約の広告塔として
      • ラムサールマーク湿地マーク看板の設置
      • 「ラムサールハンドブック」などのツールの活用
      • ラムサールガイドの養成
    • アジアに湿地保全の経験と技術を広める拠点として
      • 国際ワークショップ、セミナー、研修などの開催
    • 次世代のリーダーを育てるフィールドとして
      • 「KODOMOラムサール尾瀬」湿地交流
  • ラムサール条約湿地「尾瀬」の課題
    • 「夏の思い出」からの卒業
      • 多面的・複合的価値の認識
    • 尾瀬から外へ出よう
      • 他の湿地の経験から学ぶ
      • 尾瀬の経験を伝える
    • 国際化
      • 国際言語での発信、受信、コミュニケーション
      • 国際レベルでの監視・評価
「湿原から考える地球・人間環境」
   九州大学大学院理学研究院教授 赤木 右(たすく)氏   
  • 湿原の化学的特長
    • 酸性で酸欠状態
      • 浮島……メタンの浮力
      • 鉄の薄膜……水中の鉄イオンが水面に出たときに、空気中の酸素と結びついて、水酸化鉄になり、膜を作る。
      • 鉄泥の煙突……鉄イオンが湿原の上に出て、空気中の酸素と結びついて、水酸化鉄になり、鉄泥となる。
      • 赤シボ……鉄イオンが雪面に上がり、空気中の酸素と結びついて、水酸化鉄になる。
  • 化学反応
    • 通常
      CH20(糖) + O2 → CO2 + H2O
      2Fe2+ + 0.5O2 + 5H2O → 2Fe(OH)3 + 4H+
    • 酸性・酸欠
      C2H4O2(酢酸) + CO2 + CH4
      2Fe(OH)3 + 4H+ → 2Fe2+ + 0.5O2 + 5H2O
  • 水を保持するミズゴケの層
    • 水を動かさないから酸素を通さない
  • ツーリズムの痕跡
    • 窒素はほとんど質量数14の14Nだが、わずかに質量数15の15Nも存在する。
    • この窒素同位体比15N/14Nの増加は、人間が持ち込んだタンパク質を反映する。
    • モウセンゴケやミズゴケに含まれる窒素の同位体比15N/14Nを、湿原に設置されているベンチの50m範囲内にある数を変数としてグラフ化した。
    • すると、ベンチの数が多いほど、同位体比15N/14Nが大きくなる傾向があった。
    • これは、入山者が蚊などの虫に血(体液)を吸われ、その虫がモウセンゴケに捕まるなどして、ミズゴケ・モウセンゴケに人間のタンパク質が供給された結果によるものと推測された。
    • この研究成果が、「Environmental Management」という雑誌に掲載され、「Nitrogen Input from Visitors to a Protected Peatland」(保護された泥炭湿原へハイカーによって窒素が加わる)と紹介された。
  • 過去の地球環境を覗く窓
    • 氷床コア
    • 海底・湖底堆積物
    • 樹木年輪、殻体年縞
    • 泥炭
  • 氷床コアから分かる海水位と二酸化炭素濃度
    • CO2が多いときは氷が少ない(数万年〜数十万年前のオーダーならよく成り立つ)
      しかし、数千年前のオーダーになると成り立たない
  • ミズゴケ泥炭による調査
    • 泥炭コアから二酸化炭素濃度を推定し、海水位のレベルと比較すると、かなり良い相関が得られた。(二酸化炭素濃度の濃度が高いと海水位が高くなる。)
  • 二酸化炭素濃度の推移
    • 60万年前から1万年前まで、二酸化炭素の濃度は180ppmv〜300ppmvの間をほぼ周期的に変化しながら推移してきた。しかし、ここ数百年の間に、300ppmvから一気に増加し、現在は380ppmvに達している。
  • 地球を救う湿原
    • 泥炭の推定炭素埋蔵量 120〜400Gt
      大気中の二酸化炭素の量に匹敵
    • 酸性・酸欠だから、埋蔵速度、埋蔵効率は陸上植物の中で著しく大きい
    • Franzen博士の仮設
      間氷期の二酸化炭素を固定し、氷期に二酸化炭素を再放出する。
      (しかし、現在は間氷期であるが、二酸化炭素を固定しているか疑問……巻島コメント)
    • 泥炭の鉄
      酸性・酸欠だから、溶解する。
      有機物と軽く結合し、よく解け、生物に利用されやすい
    • 湿原鉄加工場仮設
      氷河期……鉄は氷河と共に移動
      間氷期……良質の鉄が大量に供給
              →海洋植物の増殖
              →二酸化炭素減少
              →冷却
第U部 みんなで楽しむ 尾瀬と地域文化
尾瀬太鼓 和太鼓組曲「尾瀬の四季」より「秋」「冬」「春」  群馬県片品村

舞踊「魚沼はねおけさ」「こまか広大寺(市無形民俗重要文化財)  新潟県魚沼市

檜枝岐歌舞伎「一之谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき) 須磨浦の段」  福島県檜枝岐村

Copyright 2008/01/12 MAKISHIMA Hideo