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内容 |
日時 |
2006年12月22日(金) 14:10〜16:50 |
挨拶 |
- 尾瀬保護財団事務局長 遠藤 一誠 氏
- 環境省日光自然環境事務所長 福井 智之 氏
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講演 |
「アジアのクマ、尾瀬のツキノワグマ」
講師 財団法人 尾瀬保護財団 橋本幸彦 氏
パワーポイントによる映像を映しながら、講演が進んでいった。 |
1 アジアのクマ 国際クマ会議の成果
- クマの分類
- ジャイアントパンダ……アジアに生息
- メガネグマ
- ナマケグマ……アジアに生息
- マレーグマ……アジアに生息
- アメリカグマ
- ツキノワグマ……アジアに生息
- グリズリー(ヒグマ、ハイイログマ)……アジアに生息
- ホッキョクグマ(シロクマ)……アジアに生息
- 第17回国際クマ会議 in 軽井沢
- 日程 2006年10月2日〜6日
- 参加国数 37カ国
- 参加者数 348人
- ワークショップ
- スペシャルワークショップ 「アジアのクマ、その未来のために」
- クマと人のあつれきに関するワークショップ
- エゾヒグマの自然史と人の文化の変遷
- クマノイ(熊の胆)の取引に関するワークショップ
- 交流しよう!世界のクマNGO、NPO
- パブリックイベント
- 日本における人とクマの関係の歴史
−東北日本の事例を中心に−
- クマに学ぶ世界の和(和)
〜我が町にすむクマと私たちの暮らしを考えよう〜
- アジアのクマにとっての脅威
- 人との軋轢
- 生息地の破壊
- 過放牧、農地造成、合法的伐採、違法伐採、森林火災、材木以外の林産物利用、インフラの建造
- 直接的脅威
- 有害獣駆除、密漁、錯誤捕獲、クマ回し、クマの部位の商取引、クマ牧場
2 ツキノワグマの生態と保護管理
- 日本におけるツキノワグマの分布
- 東北・甲信越・北陸・岐阜一帯、下北半島、東中国山地、西中国山地、紀伊半島の一部、四国のごく一部、九州のごく一部
- クマ類の分布の変遷
- 1978年と2003年を比較すると、生息メッシュ数は増加
- 分布が拡大していることと個体数が増えていることは、イコールではない
- 拡散して密度が減っているかもしれないし、空洞化しているかもしれない
- ツキノワグマの1年
- 冬ごもり明け
- オス 3月下旬〜4月上旬
- メス亜成獣 4月上旬〜5月中旬
- メス成獣仔連れ 5月中旬〜6月初旬
- 交尾・受精
- 乱婚制 1頭のメスは複数のオスと交尾
- 豊作の年……着床、出産 凶作の年……流産
クマは遅延着床であり、凶作なら子どもを生まないようにできている。
- 冬ごもり
- ツキノワグマの餌
- 調べ方……クマの糞を洗って調べる
- 季節変化
- 春 葉・茎
- 夏 液果類(サクランボ等)、動物質
- 秋 堅果類(ドングリ等)
- 堅果類の量とツキノワグマの食物の組成
- 1993年 ミズナラ豊作、ブナ豊作 ミズナラを主に食べた
- 1994年 ミズナラ不作、ブナ不作 クリを主に食べた
- 1995年 ミズナラ普通作、ブナ豊作 ミズナラを主に食べた
- 1996年 ミズナラやや不作、ブナやや不作 ミズナラ、液果類を主に食べた
- 1997年 ミズナラ普通作、ブナ不作 主にミズナラを食べた
- 堅果の豊凶と繁殖の関係
- 堅果の豊凶により食べ物は変わる
- 堅果の量が多ければ、翌年に生まれる子どもの数が増える
- ツキノワグマの大きさ
- オス 体重 60〜100kg 身長 130〜160cm
- メス 体重 30〜60kg 身長 120〜150cm
- 飼育下のツキノワグマ(メス)の体重変化
- 5月 40〜50kg
- 8〜11月 50〜60kg
- 12月 65〜75kg
→ 春先は体重が少なく、夏から秋にかけてほぼ一定になり、冬眠前に増加する
- 有害獣駆除で被害が減るか
- アメリカクロクマの例では、オスの成獣を捕獲したら、その後個体数が増加した。
→ 減るとは言えない。
- ツキノワグマの保護管理
- 広域管理:ゾーニング
- 地域管理:個体管理……学習放獣
- 学習放獣とは、人家周辺等に出没しも被害を発生させた場合、そのクマを捕獲し学習(お仕置き)をして放獣すること
3 尾瀬のツキノワグマ対策
- 尾瀬におけるクマ問題
- ヨシッポリ田代地区
- 平成11年6月6日、平成16年6月5日 ともに午前8時頃人身事故が発生
- 山ノ鼻地区
- 見晴地区
- 5カ年計画でクマ対策をする
- 保護管理対策の実施……保護管理マニュアル
- 生息状況調査
- 関係者間協議
- 保護管理マニュアル
- 目的 人身被害が発生しないようにし、クマの生息地を破壊しない方法を模索する
- 特徴
- 里山に比べ、クマの保護を優先
- 危険時より平常時の対策を重視
- 危険時の対策は4段階を設定
- 平常時の対策
- 誘因物の管理……ゴミを捨てない
- 啓蒙普及……団体行動、少人数のときはクマすず、夕方は早めに帰る、(犬にはひもをつける)
- もしクマに出会ったら……目を合わさないようにして、後ずさりする
- 情報収集
目撃件数 2000年 54件、2001年 22件、2002年 22件、2003年 51件、2004年 90件、2005年 59件、2006年 159件
- 刈り払い……見通しをよくして、不意の遭遇を防ぐ
- 警鐘の設置……人間がいることを知らせる
- 生息状況調査
- 危険時の対策
- 第1段階……木道より50m以内で目撃されたとき等
- ビジターセンター等で口頭や掲示などによる注意喚起
- 地区内の誘因物等調査とその除去
- 第2段階……1日に数回目撃されたり、親子グマが目撃されたとき
- パトロールの実施
- 立入制限
- 警鐘の追加設備
- (爆竹、パチンコ弾などによる追い払い)
- 注意喚起のための看板設置
- 第3段階……第2段階の対策で解決しない場合
- 第4段階……第3段階で放獣した個体が、再度問題を起こして、学習の効果が見られない場合
- 今後の対策
- 早朝の巡視……クマを発見した場合、見失うまで監視する
- クマの移動ルートの確保……必要以上の刈り払いをしない、クマの移動ルートであることを看板などで明示する
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私の提言 |
参加者から、次のような質問や提言があった。
回答者として並んでいたのは、環境省日光自然環境事務所長福井智之氏、尾瀬山小屋組合長白石光孝氏、財団法人尾瀬保護財団事務局長遠藤一誠氏、財団法人尾瀬保護財団橋本幸彦氏であった。
- クマのいるエリアに人が入っている。入山口で知らせる必要があるのではないか。
→財団のホームページでも知らせている。また、ビジターセンターでも掲示して周知を図っており、入山口でも掲示している。
- 一昨年から冨士見下に定期バスを走らせているが、馬洗いくらいまで入れた方がよい。現状では、登山口まで来ていないので、車道を歩かなくてはならない。そのため、利用客がほとんどない状況である。あるいは、廃止した方がよいのではないか。
→特定の入山口に登山者が集中する(鳩待峠 53%、沼山峠 26%、その他 数%)ので、分散化を考えている。車がどこまで入るかは重要な問題である。尾瀬ビジョンを作って、分散化を図ろうとしている。富士見峠だけでなく、全体として平準化を考えたい。
- 至仏山の登山道のルートをどうするかは別問題として、今ある登山道をどう使うか、土地の所有者が明確にして欲しい。
→現在、登山道が荒れている。平成15、16年で至仏山緊急対策会議により、学術調査を実施し、至仏山保全基本計画を作った。
登山道の設置替えは、費用がかかる。できるところからやっていきたい。
- 入山口に種を落とすマットがあるが、鳩待峠の山ノ鼻に下るところについては、置く場所が適切ではない。雨が降ると種が流れて、尾瀬ヶ原の方に入ってしまうところに置いてある。
(別の参加者)種落としのマットは精神的なもので、ほとんど役に立っていない。ヘリコプターなどの物資輸送のときに入ってきてしまう。また、種が入っても、尾瀬に定着するものとしないものがある。
→マットについては、意見として伺っておき、置き場所につしても検討したい。
山小屋の総会で、小屋の周りの移入植物については、除去することとした。除去の方法としては、根から取るのと、地表面から上の部分だけカットする方法などあるが、検討しているところである。
- 尾瀬国立公園としての独立が、99%決定したと聞いている。日光市長は、尾瀬国立公園について猛反対であり、また、日光国立公園の名称の中に、尾瀬という言葉を入れることにも消極的だった。日光市長に対して、尾瀬国立公園について反対しないで欲しいと言って欲しい。また、3知事からの要望書がなかったら、尾瀬国立公園は実現しなかったのか。
→平成19年中には、単独の公園化が実現する予定である。
平成8年以来、3県の知事、財団の理事長は、各所に対して日光国立公園の名称に尾瀬を入れて欲しいと要望してきた。尾瀬サミット2005では、環境省も単独で公園化するのも可能ではないかとコメントした。3県知事の連名や3県議会、3市村の連名で、尾瀬国立公園期成同盟を作り、中央環境審議会に尾瀬国立公園を要望してきたところである。
分離独立については、地元の強い要請があって、尾瀬ビジョンも策定された。これを受けて、環境省が検討を進めている。自治体との調整を図りながら、審議会の意見を聞いて進めているところである。
- 尾瀬にはいろいろなところから入山している。尾瀬の保護と保全を考えたときに、ホームページの活用は大切である。そこで、ホームページの最初に入山するときの注意を入れた方がよい。また、燧や御池の土砂崩れや熊沢田代の木道の交換など、費用がかさむ。入山時の料金を考える時期ではないか。
→財団のホームページのアクセス数は60万件になっている。情報はあるが、見にくいという話も聞いている。今後、分かりやすいホームページにするように検討している。
入山料は検討してきたが、実現していない。広くサポートしてもらうやり方を考えるのが大切である。木道、トイレなど費用がかかる。個人、企業から資金をいただく方法を考えることも必要だろう。
- 尾瀬国立公園では、奥鬼怒はどうするか。まだ、明確化されていない。尾瀬の中に入れていくべきだと考える。
→尾瀬の保護とあり方検討会を今年3回開催した。会津駒ヶ岳、帝釈山などの周辺の山もある。国立公園として、どのような区分になっていくのか明確化されなかった。
どこに線を引くのか、行政界か、自然環境によるか、まだこれからである。いろいろな意見を反映しながら、考えていく。
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