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尾瀬保護財団設立10周年記念シンポジウム
項  目 内      容
期日 2005年12月17日(土)
会場 東京都 有楽町朝日ホール
挨拶
  • 主催者あいさつ 尾瀬保護財団理事長 小寺 弘之 氏
  • 来賓祝辞     環境省自然環境局長 南川 秀樹 氏
財団設立10周年特別表彰
  • 菊地 慶四郎 氏 (尾瀬の湿原植生の調査研究)
  • 樋口 利雄 氏 (尾瀬の植生復元と環境保全)
  • 須田 敏男 氏 (尾瀬の保護と公園の適正利用の推進)
  • 橘 京一 氏 (尾瀬の環境保全と利用者の安全確保)
  • 片品村婦人会 (尾瀬の環境保全)
  • 萩原 一二 氏 (尾瀬の適正利用と環境美化の推進)
ラムサール条約登録認定証交付  認定証を3県(群馬県、福島県、新潟県)の知事と1市(魚沼市)長及び2村(片品村、檜枝岐村)長に交付した。
基調講演 「尾瀬の魅力を科学する 〜その美しさの背景を探る〜」
   東京学芸大学教授 小泉 武栄 氏
  • 尾瀬の魅力を順番に検討してみると、見えなかった尾瀬や至仏山の姿が見えてくる
  • 尾瀬の成り立ち方
    • 従来の説
      • 湖が泥炭により埋積されて湿原になった
    • 坂口豊氏の説
      • 燧ヶ岳の活動により、溶岩が只見川をせき止めて「古尾瀬ヶ原湖」を形成
      • その後、湖の水はなくなり、湖が消滅
      • 尾瀬ヶ原には川が蛇行し、ときには溢れるなどして土砂をためた
    • 尾瀬ヶ原が森林にならない理由
      • ミズゴケが厚く堆積した泥炭地
      • 酸性が強い
      • 栄養分に乏しい
    • 拠水林の存在(川沿いに伸びる林)
      • カラマツ、ヤチダモ、クロベ、シラカバ、ダケカンバ、ヤナギ、ズミ
      • 樹木が生育できる理由
        • 大雨の際、山から土砂が川に運ばれる
        • 土砂が川沿いに堆積する
            ↓
        • 酸性でない
        • 栄養分がある
    • 孤立林の存在(阪口氏、相馬氏の説)
      • 降水量の増加によりミズゴケが生長し、泥炭地の起伏が増大
      • 高まりの斜面で水が抜けて、泥炭が収縮し、そこにダケカンバなどが生育
    • 山の鼻不思議な森
      • ミズナラ、ハルニレ、カラマツなどの巨木
      • 川上川の扇状地
    • ケルミ(湿原の高まり)とシュレンケ(湿原の窪み)
      • 従来説……ケルミとシュレンケが交互に成長して全体が高まっていく
      • 阪口説……泥炭地に融雪水流により枯れ葉などが流され、縞状の模様を作って堆積し、これがケルミとシュレンケになる
  • 至仏山の地質
    • 上部に蛇紋岩がある
      • マグネシウム、ニッケルなどの有害な重金属を含む
      • ブナなどの普通の樹木は生育できない
      • その代わりにキタゴヨウやネズコなどの針葉樹が生育する
    • 至仏山の森林限界……1650m
      • 推定される高度より700m低い
      • 森林限界より上は、ネズコ、キタゴヨウ、ハイマツなどの低木林
          ↓ その理由は
      • 氷期に形成された岩塊斜面の影響
    • 基盤が3カ所で露出し、崖を形成
      • 至仏山の東面では階段状の地形
    • 地表面が岩塊から礫に変化
      • 植物群落は草原に変わる
        • ホソバヒナウスユキソウ、コバノツメクサ、カトウハコベなど
    • 残雪と植生分布
      • 7月初旬以降に雪が消えるところに雪田植生ができる
    • 登山道の浸食と残雪
      • 残雪が遅くまで残るところでは、雪解け水が供給されるため、蛇紋岩が風化し粘土化する。
      • 自然状態では、雪解け水が地表に薄い膜を作って流れるため、浸食はされにくい。
      • 人が踏み込むと、地表に凹凸などができ、浸食されやすくなる。
    • 低木林地域
      • 雪解けが早いため粘土化は進まず、浸食は起こりにくい。
スライドトーク 「もうひとつの尾瀬」
  写真家  新井 幸人 氏
   
  • 今までは、雨が降ると山小屋の中でごろっとしていたが、ある時、ネズコを雨の日に撮影した。
  • 雨の写真もいいなと思い、今年は雨の写真を撮りたいと思うようになった。
  • 今年は、雨を狙っていくと、なぜか天気が良かった。
  • 尾瀬は雨の似合う場所だと思う。
  • 6月の撮影ツアーでのこと
    • 雨で良かったね、せっかく買った雨具だから来てみないともったいないねと言うと、みんな浮き浮きした気分になる。
  • 植物が雨で生き生きしている表情を見て欲しい。
パネルディスカッション 「尾瀬の"これまで"と"これから"」
  • コーディネーター 
    • 瀬田 信哉 氏 ((財)国立公園協会理事長)
  • パネラー
    • 加藤 峰夫 氏 (横浜国立大学教授)
    • 斎藤 晋 氏 (群馬県立女子大学名誉教授)
    • 竹内 純子 氏 (東京電力(株)尾瀬保護活動担当)
    • 萩原 澄夫 氏 (龍宮小屋三代目主人)
    • 宝珠山 恭子 氏 (国立赤城青年の家専門職員)
    • 星 勝夫 氏 (前檜枝岐村長)
瀬田氏
  • このシンポジウムの申込みは、メールが40%であった。
  • 尾瀬に行くには、意志を持って行かなければならない。
  • 尾瀬の問題を共有したい。
  • まずは、竹内さんから、どうぞ。
竹内氏
  • 尾瀬と尾瀬戸倉山林
    • 通常言われる尾瀬の範囲は、特別保護地区の中
    • そのうち、群馬県側を東京電力が所有(尾瀬の7割)
    • 群馬県側の戸倉山林も東京電力の所有
  • 東電小屋
    • 国力を高めるため、1903年に尾瀬ヶ原水力発電ダム計画が発表される
    • 以前は関東水電(株)の気象観測所で、水電小屋と呼ばれていた
    • その後、東京電灯(株)となり、東電小屋はそれに由来する
  • 尾瀬ブームの頃
    • 1951年に東京電力、設立
    • 1953年に国立公園特別保護地区に指定
    • 1960年頃から尾瀬ブームとなる
      • 江間章子氏の「夏の思い出」のヒットがきっかけ
  • アヤメ平今昔
    • 1960年頃、踏みつけにより荒廃
    • 1964年、木道だけを歩くように変更
    • 1969年、湿原回復作業開始
  • 至仏山の保全対策
    • 登山道沿いの土砂流亡状況の把握
      • 入山者が多いことが至仏山の荒廃に直接つながるかの検討
      • 露面幅と踏面幅を比較すると、踏面幅の方が広いところはほとんどない
  • 木道の敷設作業
    • 尾瀬内の木道の総延長 57km
      • 東京電力担当 20km
    • 国産のカラ松材を使用(東京電力では、戸倉林等のカラ松)
    • 10年くらいで傷む
  • 木道エコペーパー
    • パンフレット用紙などにリサイクル
  • 種子落としマットの設置
  • 公衆トイレの設置
  • ブナ植林ボランティア
  • ブナ植林下草刈りボランティア
  • グリーンボランティア
    • ゴミ減量のため、ゴミ箱を撤去し、ゴミ持ち帰りを実施
萩原氏
  • 合併浄化槽の設置……昭和55年から、平成5〜7年でほぼ完成。
  • トイレの汚水は、浄化槽で処理して沼尻川に放流している。
  • 浄化槽に集めた後も、すぐに流すのではなく、集水ピットに集め、遠くに流している。
  • そのため、パイプラインで大きな川に流しいてる。
    • 見晴からは、長い距離を通って赤田代を流れる川へ
    • 長蔵小屋からは三平下のところへ
  • 雨の尾瀬もいい。時間かけて楽しんで欲しい。
瀬田氏
  • 尾瀬沼の2つのトイレは1億8500万円かかったが、パイプラインの敷設にはそれ以上の5億1500万円かかっている。
  • 山の鼻でも、トイレには8125万円かかったが、パイプラインには2億9640万円かかった。
  • また、ランニングもかかっているため、トイレでは寄付をお願いしている。
  • 尾瀬では入山料という話も出たが、そうした点について、星氏にお話をお願いしたい。
星氏
  • 江間章子氏と話をしたときに、「夏の思い出」が入山者数の増加に影響を与えたのだろうかという話になった。
  • 尾瀬の名前が知られるようになったことは嬉しいことである。
  • 入山料を取ることは、入山規制につながる。それで村を挙げて反対した。
  • 一時期に比べて、入山者数が半減した。七入りに駐車場を作って、入山者数を伸ばしたい。
  • 三条の滝の展望台が傾いて立入禁止になっていたが、福島県に要望して復元してもらった。
  • 御池ロッジにブナの森ミュージアムを作った。
  • 沼山口が混雑するので、燧裏林道を使ってもらうべく、木道の整備と裏燧橋を吊り橋にした。
  • 温泉小屋のところのトイレも立派になった。
瀬田氏
  • 入山規制と入山料を取ることについて、適正利用の面から考えてみたい。
宝珠山氏
  • 平成5〜14年に山の鼻ビジターセンターに勤務していた。現在は赤城青年の家に勤務している。
  • インタープリタとして、自然についての解説を行っている。
  • 尾瀬では自然観察会やお話ボランティアなどをした。
  • 話の内容は、植物や今時の情報など。
  • 参加者の関心が10年前とと今では少し違っている。
    • 以前は、植物について
    • 今は、山小屋の取り組み、太陽光発電、湿原回復作業の種まき、12神をまつるお祭りなど
  • 伝えたいことを伝えるには、話を面白くしなければ、なかなか伝わらない。
    • ETと木の形が似ている
    • 熊のぬいぐるみを使う
  • 世代間の知恵が、尾瀬を支えた。
瀬田氏
  • 斎藤氏には、科学的な立場からどうぞ。
斎藤氏
  • 第3次総合調査のメンバーに入った。
  • 1995年〜1998年に報告書を作成した。
  • 生物の多様性が自然である。
    • どんな種類のヤスデ・ムカデがいるか調査した
      • ムカデ  32種  うち新種が12種  固有種が8種
      • ヤスデ  20種  うち新種が4種  固有種が2種
      • コムカデ 2種  新種、固有種はなし
    • センチュウ(寄生していない土壌中のセンチュウ)
      • 58種以上確認  同定したものが36種 うち新種が10種
  • 尾瀬ヶ原がどのようにできたか
    • 湖から生成した
    • 真ん中が厚く凸レンズ状
    • 中田代(龍宮十字付近)をボーリングした
      • 榛名の火山噴出物が入っている
    • 池からできた泥炭ではない ← 基盤の起伏をそのまま反映している
    • 北ヨーロッパで見られるブランケット状の泥炭地(湿原)によく似ている
    • 自然堤防から発生した湿原だろう
  • 尾瀬賞を平成9年から実施している
瀬田氏
  • 加藤氏にはこれからの尾瀬について、踏み込んで話をお願いしたい。
加藤氏
  • 北海道で多くの時間、山にいた。
  • 自分がどうして楽しくできるか、行きたいところが気持ちよければいいと考えて行動してきた。
  • 尾瀬については、次のように感じた。
    • 近いところにきれいなところがある 歩きやすい 山小屋がある ゴミがない
    • 問題点もあり、解決していきたい。
  • 適正利用とは何だろうと考えた。
  • 自然の楽しみ方が間違っているのではないか。
  • うまく賢く利用する、そのための仕組み作りが必要だ。
  • オーバーユースだという話もある。
    • 年間60万人入ったときには、1日に2万人の入山者があったこともある。
    • では、ただ減らせばよいのか。
    • 特定の日(ミズバショウの最盛期の週末など)に集中するのが問題。
    • さらに、限定された時間に集中している。
    • 例えば、至仏山では朝の30分間が混雑し、7〜8時になると解消する。
    • 20〜30人のパーティがやってくると大混雑する。
    • 年間30〜60万人入山者数があったとしても、それが問題ということではない。
    • インフラを整備すれば、十分可能である。
  • 利用料金を取ろうという話が、入山規制だという話に結びついた。
    • 利用料金を取ることと、入山規制は別問題
  • 法律を裏から見ると、つまり決められていないことを見ると、都道府県や地元の人にやってくださいということになる。
  • みんなの意見をまとめる仕組み作りが必要となる。
    • 方法がないため、仕組み作りでつまずく。
    • 尾瀬には、尾瀬保護財団があるので、地域の意見を役所に伝えることができる。
瀬田氏
  • 時間がなくなったので、一人1分ずつでコメントをお願いしたい。
竹内氏
  • チビコトという小冊子を作成し、DVDを付けている。
  • その中で、野口健氏と対談したが、環境問題は自然相手だと思っていたが、実は人間相手の問題だと分かった。
  • 尾瀬に来て、救われた気がする。尾瀬でできたのだから日本国内でもできると思う。
  • 財団は日本のモデルケースである。
  • みんなの尾瀬をみんなで守る。
萩原氏
  • 尾瀬の保護について、財団が先頭に立ってやっていって欲しい。
  • 小屋でできることはやっていく。
  • 3市村をまとめて、財団が指導をして欲しい。
  • 尾瀬の良さをたくさんの人に知ってもらいたい。
  • 利用はできるだけ空いているときに。
星氏
  • 単独の国立公園になって欲しい。
  • 群馬県などの力で環境省に要望していって欲しい。
宝珠山氏
  • 利用者の意識の変化が起こってきている。
  • 尾瀬がきっかけで、地域文化まで関心が広がっている。
  • 環境教育にも活用したい。
斎藤氏
  • 尾瀬についての知識を深める必要がある。
  • 調査・研究を進めていきたい。
加藤氏
  • 地域の活動を、尾瀬に反映させるのはなかなか難しい。
  • 日光国立公園内の尾瀬であるより、尾瀬は特殊な地域であるから一つの国立公園として考えれば、みんなで守る尾瀬になる。
瀬田氏
  • 「私の尾瀬」であり、「みんなの尾瀬」だという気持ちが大事である。
  • アメリカでは、レンジャーが「あなたの公園」と叫ぶと、「私の公園」と叫ぶ。
  • これにより、みんなの意識を高めることができた。
  • 尾瀬のアイデンティティを持つことが必要である。
  • 自然に対する作法として、利便性・快適性を求めないことが重要だ。
  • 尾瀬を守っていくには、みんなの気持ちを結集させていくことが大切。


第10回NHK「わたしの尾瀬」写真展(併催)
項  目 内      容
撮影者 写真コンテスト入賞者
期日 2005年12月17日(土)
会場 東京都 有楽町マリオン 11階 スクエア
場所 有楽町駅から徒歩5分
展示作品 コンテスト入賞作品、前回の入賞作品、審査員の作品
「わたしの尾瀬」写真展 ごあいさつ  厳しい環境の中で、長い年月をかけて自然みずからが創り上げた「奇跡の世界」が尾瀬です。清楚で気品にあふれた湿原の植物、折々の季節や天気に応じて千変万化する光と影。この魅惑的な自然からの贈り物は、同時に、繊細で傷つきやすい宝物でもあります。「この貴重な湿原の魅力を多くの人に知ってもらうことで、美しい姿をいつまでも残したい。このまま後世に伝えたい」。この思いは、コンテストに作品を寄せていただいたすべての方々、写真展の開催にご支援をいただいた方々、そして主催者の共通の願いです。
 10回目となった今回のNHK「わたしの尾瀬」フォトコンテストには、全国24都道府県の275人の方から788点の作品の応募がありました。それぞれの作品に、それぞれの方の心に深く刻み込まれた魅力あふれる尾瀬がありました。写真展では、その中から50点の作品を選び、展示しています。 尾瀬を訪れたことのある方も、まだその機会のない方も、ひとりでも多くの方に、この写真展で、尾瀬のすばらしさと大切さを実感していただき、そのことを通じて尾瀬の自然保護に少しでもお役に立てれば、これ以上の喜びはありません。

                         NHK「わたしの尾瀬」実行委員会
                                  NHK前橋放送局
                                  NHK福島放送局
                                  NHK新潟放送局
                                  財団法人 尾瀬保護財団
観覧日 2005年12月17日(土)
会場の様子
上位作品 観覧の様子

Copyright 2005/12/23 MAKISHIMA Hideo