パンドラの月(前編)




パンドラと呼ばれた都市がある。
そこで、大規模な地球政府への大規模な造反計画が存在した。
これは、その事件の非公式なレポートである。

そしてレイヴンになったばかりの少女が1人。
これはその少女についてのレポートでもある。



証言1:ジェネア・ネルスリーブ
「アイツ? …もう二度とゴメンだな。
 何かもうこっちまで不幸にされそうなオーラがぐんぐんと出てて…あん時はやばかったよ。」

証言2:イリュージョン・アイズ
「彼女について?
 一緒にいると凄く楽しいわね、彼女だったらどんなことも運の良さで何とかなりそうな気がするわ、
 あんな強運の持ち主は滅多にいないわ、多分地球には私の知ってる、彼女を含めた3人しかいないんじゃないかな?」


最初はこの一言から始まった。


セントラルオブアース、地球政府当局本部
長官である彼女は先程、先日行われたある地域の調査書を読み終えたところだった。
「全滅?あの調査部隊が全員?」
防衛庁長官の声が室内に響いた。
「はい・・・例のミッションの途中に突然通信が切れました、恐らく、破壊された物かと思われます」
秘書の声には、多少の動揺が含まれていた。
「そうですか、分かりました・・・ではルク中佐に連絡を」
「ルク?ああ、ルクウェンドゥ中佐ですね、分かりました」
「『パンドラ』・・・やはり放置は出来ませんね」


『企業都市パンドラ』
ドラクナ地方、ラグナス湾岸に建造された企業都市。
地球のトップランクの企業がそれぞれ費用を出し合い、企業間の友好を深めるという名目の元建造されたが、
最近不穏な動きが高くなっている。


「『A−1大隊』隊長、ルクウェンドゥ中佐、入ります」
「鍵は開いています、お好きなように」
「失礼します」
そう言うと中佐は部屋に入った。

「用件はなんでしょう?」
「今から10時間前、地球政府直轄の調査部隊、『S−6』が全滅しました」
平然と言い放つ。
「な・・・あの部隊、装備も練度も中規模企業の1つくらいは破壊できるようなレベルですよ?」
「そうです、しかし、事実は事実として認めねばなりません」
「・・・我々に出動しろと?」
「全部隊の出動は控えていただきます、大規模な出動は企業全ての離反を招きかねませんから」
「・・・それでは部隊の規模は?」
「とりあえずは・・・精鋭2個小隊で、パンドラへ潜入してください。
 勿論、区域外には部隊を待機させておいてかまいません」
「了解しました、では例の小隊で早速・・・」
「出撃は30時間後です、急いでくださいね」


「それで・・・俺達ですか?」
「まあそう言うことになるな」
「ふぅ・・・私達休暇中でしたのに・・・」
「ま、諦めてくれ、終わったら休暇分の給料は払うそうだから」
「全く・・・部下の心情って物を配慮してくれなきゃ、ねぇ?」
「だ〜、もう・・・話は終わりだ、エンジェル隊、及びデビル隊に出撃を命令する」
「・・・ところで中佐?」
「なんだ?ミント中尉」
「私達はこの前、互いに一人の欠員が出たんですけど、その代員は誰が?」
「ああ・・・そうだった、二人して結婚を契機に退職したんだったな、
 唯大尉、適当にレイヴンから候補を選出してくれ、候補が決まったらこっちに回してくれ」
そう言ってあらかじめ用意しておいたレイヴンのリストを手渡す。
「デビル隊の方は?」
「俺が直接指揮を執る、構わないか?ケリー大尉?」
「拒否権はないでしょう?お任せしますよ」
大尉は、半ばやけくそ気味に言い放った。



2時間後
「リストはどうなってます?大佐」
「ダメだな、殆どが今現在どこかと契約を結んでいてコンコードからの呼びかけには答えていない」
「とにかく探すしかないって事ですか・・・」
「この際、新人でも有望な人材ならかまわん、中佐、誰か知らないかね?」
「・・・一人、心当たりがあります」
「ならば、連絡を頼む」


「イリュージョン・チーム、現在オルコット海域にてジオ社と契約中・・・
 ジェネア・ネルスリーブ、現在オルコット海域にてインディーズと契約中・・・」
脇に持った資料を読みながら廊下を歩く中佐。
「ウェイン・ワン、現在レクター地方にてラグダー社と契約中・・・
 エリス・ジュオ、現在オルコット海域にてインディーズと契約中・・・
 黒騎士、現在アリーナ戦での負傷により入院加療中・・・」
パタン、と手に持った資料を閉じた。
「ったく・・・目を付けていたレイヴンの殆どが契約不可能とはね・・・
 これも彼女の幸運故かね・・・」
そんなことを考えながら中佐は廊下を歩いていった。



彼女を呼ぶ電話の鳴る音が彼女の部屋の外から聞こえてきている。
「ん・・・」
しかし、それでも彼女は起きない。
先程寝たばかりだからだ。
やかましく、電話の音は鳴り続けた。
「うるさいわよ・・・静かにしてよ・・・」

「電話に出ないぞ?」
「とりあえず待ってて下さい、中佐」
「でもなぁ・・・」


「む〜・・・さっき寝たばかりなのに〜・・・」
愚痴をこぼしながら体を起こし、
その体を引きずるように歩いて電話をとった。
「もしもし、こちらは葬儀屋・・・」
うるさい電話は最初にこう答えろ、と彼女は父親から教わっていた。
「樫月ルナさんですね?」
文面だけはやたらと丁寧な、しかし、本気の怒気を孕んだ声で中佐は言った。
「こちらは地球政府です」
彼女は問答無用で電話を切った。
「え?どうして地球政府から家に電話が来るの?」
暫くしてから彼女はそう言った。


「電話、切られたぞ?」
「う〜ん・・・いきなり地球政府からの依頼って言っても・・・
 彼女はまだ素人なんでしょう?それじゃあ喜ぶ前に驚きますよ・・・」
「・・・彼女の家はどこだった?」
「確かコルナード・ベイでしたが・・・」
「快速艇ならここから2〜3時間で往復できるな」
「あ、中佐?」
「彼女をACごと迎えに行く、快速艇を外に用意しておいてくれ」


「えっと・・・地球政府に怒られるようなこと・・・したかなぁ・・・」
彼女は口元に指を当ててさっきから同じ事を考えていた。
「この前打ち合わせ中に壊しちゃった備品はエムロード社のだったし、この前間違えて踏んじゃったのはバレーナ社の車だったし・・・」
でもそれについてはちゃんとお金を払ったし、と考えていたところだった。
「この前痴漢と間違えて自警団に突き出しちゃったのはジオ社の重役だったし・・・もうわかんないよ〜!」
そう言ったときだった。
玄関の呼び出し音がした。
「あ、は〜い!」
ドアを開けると、そこには軍服を着た男が一人で立っていた。
「樫月ルナさんですね?私は地球政府の・・・」
「と、隣の家です!」
慌てて彼女はそう言った。
「わ、わ、私は何も悪いことはしてません!」
「えっと・・・」
「だから怒られるようなことは何もないですぅ!」
わたわたとその場でいろいろなことを言った。
ドアを必死で閉めようとするが、指が震えてそれもできない。
「あの・・・政府から仕事の依頼なんですけど」
「え?あ、お仕事、ですか?」
「そうです」


快速艇内部
「はあ、なるほど・・・分かりました、お受けします」
「それは良かった、迎えにきた価値があるというものですね」
「それはそうと私のACなんですけど・・・」
「あ、ご心配なく、もう既にこの艦のドックに積み込んであります・・・多少強引でしたけどね」
「そ、そうなんですか・・・」




「と、言うわけで、今回このミッションに一緒に参加してもらう樫月ルナさんだ」
「る・・・ルナです、よろしくお願いします」
深々とお辞儀をする。
「大丈夫なのか?いかにも素人っぽいぞ」
「大丈夫なんじゃないの?朝霧隊長とルク中佐の推薦だし」
「でもあの人、時々凄いミスをするときあるだろ?今回もそれなんじゃ・・・」

「聞こえてるぞ、葵少尉」
「う・・・すいません・・・」

そうは言った物の、彼女にも一抹の不安はあった。
なぜなら、彼女は推薦ランクでも一番下にランクされていたからだ。



「ま、とにかく、今回の仕事、成功させようね、よろしく、ルナさん」
「は、はい」
そう言って両者はがっちりと握手した。


―続く―

後書き

だいぶ間が空きましたが番外編です。


またも前後編の番外です。
またまた思った以上に長くなってしまいましたので・・・


あ、そうそう、忘れてはならないのが投稿キャラです。
「神牙」さんの「樫月ルナ」です。

書こうと思ったらメールでもらった資料が消えてて、必死こいて思い出しながら書き上げました。



そうそう、今回の作戦地点、パンドラですが・・・
AAのゲーム画面中に確認できます。

場所は・・・ホワイトランドの左下の辺りです。


詳しくないのはその場所を知ったのが割と前だったからなんですよね。

他にもあったのですが自分には確認不可能でした。
誰か他の地方の名前教えてください。




そう言えばまたまた戦闘シーンありませんね。
前後編になると前編に戦闘シーンがない。

それが自分の文章のようですな。

では、後編にご期待下さい。

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