カーテンコールは華やかに(前編)




「地球かぁ・・・やっぱり懐かしいなぁ・・・何年ぶりだろ?」
部屋にベッドに仰向けで寝ている男が1人。
彼、ジェネア・ネルスリーブは火星から帰ってきたばかりのレイヴンである。
口元には火を付けていないタバコをくわえているが別に何か気取っているわけではない。
何故かライターもマッチも部屋から無くなっていたからである。
「しょうがない、買ってこよ・・・」
そういって起きあがったとき、ちょっと乱暴にドアが開いた。

「ねえねえ!お兄ちゃん!見てみて!」
まだ少女と言ってもよい少女が立っていた。
彼女は彼の妹アイシャ・ネルスリーブである。
「何だ?アイシャ?」
「あ〜、またタバコ吸ってる〜、体に悪いんだよ〜?」
「大丈夫だって、口にくわえてるだけだし」
「む〜」
実のところ、彼のライターやマッチを隠したのは彼女であったりする。
「それよりどうしたんだよ?見てみて、なんてさ」

「えへへ・・・これ」
そういって持っていた一枚のカードを手渡した。

『NEAVES CONCORD テストオペレーター、アイシャ・ネルスリーブ』

「おお・・・もうこんな物まで取ったのか・・・凄いなアイシャ」
そう言って軽く頭を撫でた。
「えへへ・・・だってお兄ちゃんの役に立ちたいんだモン」

ちなみにそのカードの下にはこう書いてある。

『担当AC・アストレーア』

ちなみにアストレーアは彼の愛機である。



まぁそう言うわけで今現在彼のオペレーターは彼の妹である。
彼の最初は不安だったのだが妹の方が安心してつき合えるし、
何より現在オペレーターが居なくて大変だという事実もある。
と言うことでOKを出したのである。


ちなみにOKを出したときに
「お兄ちゃん大好き!」
と言うあまりにあまりな言葉を発したのだが

とりあえずそれはこの話には関係ない。




棚の下敷きになってる女が1人。
「いたた・・・何でこんなところに棚が落ちてくるのよ〜・・・」
ちなみにここは街の大通りである。
「ご、ごめんなさい!」
慌てて駆け寄ってくる女が1人。

「んしょ、んしょ」
それほど力があるとは思えない女は器用に棚を端にどけた。

「まったくもう・・・どうして棚なんか落ちてくるのよ」
「ご、ごめんなさい・・・」
さっきから一方の女は謝ってばかりである。
運送会社の作業服を着ているがどう見ても作業ではなく事務が向いているように見える。
「で・・・とりあえずあなた名前は?」
「わ、私はそんな強請り取るようなお金はないですよぅ・・・」
「大丈夫よ、強請るつもりならもっと強気に出てるから」
さらりと怖いことを言った気もしたが彼女は気にもとめなかった。
「は、はい・・・」
そう言うと彼女は胸ポケットからカードを何枚か取り出し、手渡す。


「質屋『猫八』会員証NO5638?」
「そ、それじゃないです・・・」
慌ててそのカードをひったくるようにしまい込む。

「危険物取扱3種・・・」
「それでもないですよぅ・・・」

『レイヴン・スティールハート』

「あなたレイヴンだったの?」
「ち、違いますよぅ・・・」
「だったら何故こんなの持ってるの?持ってる意味がないでしょ?」
「うぅ・・・ここの人には内緒ですよ?」
「分かってるわよ、レイヴンだってばれちゃそこにいずらいものね?」
「でも、口止め料とかは払えませんよ?」
「大丈夫よ、私だって復業してるような人からはお金は取らないって決めてるの、で、名前は?」
「それです・・・」
レイヴン証明証の下のカードを指さす。

『アイレットシティー市民証・藤代茜』

「へぇ・・・茜ちゃんて言うんだ?」
「ちゃん付けは止めてください・・・私、もう26ですよ?」

ちなみに彼女は16歳くらいにしか見えない。

「へ、へぇ、そうなの・・・私は『エリス・ジュオ』、エリスって呼んでちょうだい」
多少たじろぎながら彼女、エリスは名乗った。

「わぁ・・・ホントあのエリスさんですか?」
パッと茜の顔が華やいだ。
「そんなに有名人なの?私?」
「有名ですよぉ・・・都市伝説の人かと思ったけど居たんだぁ・・・」
既に茜は恍惚の表情だ。
「あの数々の不幸伝説、撒き散らした災いは数知れず、あの伝説の」
言葉の途中で、全力で彼女の首を絞め始めるエリスが居た。




「お兄ちゃん、仕事だよ〜」
「ん〜・・・どうしたって?こんな朝早くから・・・」
ちなみに今は朝の5時である。
「だから仕事だよっ、お仕事」
「・・・どんなのだ?」

発信者:インディーズ
成功報酬:0


我々はジオ社に対し断固たる措置を執らねばならない。
ジオ社所属の大型輸送機12機がアイレットシティー近郊のオルコット海域を通過することが判明した。
そこで襲撃を行う。
護衛の戦闘機を伴っているそうだが、レイヴンなら問題は無いだろう。

またこの作戦は二段構えで行う予定だ。
諸君等には第一次攻撃部隊をやってもらう。
また、この任務は完全な歩合制で行う、一機に付き10000COAM、報酬は十分なはずだ。

諸君等の参加を期待する

「・・・だって」
「ホントにそれで桁数合ってるのか?12機全部潰せば120000だぞ?」
「ん〜、嘘じゃないと思うよ、ほら、前に何処かのインタビュー聞いたでしょ?
 『インディーズ嘘付かない』って前テレビでやってたじゃない」
「それインディアン嘘付かない、の間違いじゃないか?」
「う〜・・・どうするの?うけるの?どうするの?」
う〜む、朝からからかいすぎたようだ、と彼は考えていた。
「勿論受けるぞ、一機1万なら受けるのに十分だ」
「じゃあ申し込んでくるね」
朝っぱらだというのに眠気も見せない妹の事を考えながら、直後に彼は再び眠りについた。
ちなみに、この十分後、戻ってきた妹に頬をつねられたのだが、それは話とは関係ない出来事である。



輸送機が二機飛んでいた。


「・・・それで何で私まで輸送機に乗ってるんでしょうか?」
茜は不思議そうに聞いた。
「アレだけ人怒らせておいてよくもまぁそこまで言えるわね・・・」
「事実です」
茜は、気絶している間にACごと仕事に連れて行かれることが不満だった。
まあ不満だったと言うより・・・
エリスに『気絶させられて拉致された』のが嫌なのだろう。
それは当然のことなのだが。

「報酬の2割まであなたにあげるんだからイイでしょ?」
「・・・わかりました・・・」
不満が言葉にまで出ているのが彼女にも分かった。


一方隣の輸送機。
「準備体操なんて必要かぁ?」
「でも急に動くと身体に良くないでしょ?この前授業でやってたよ?」
「でもなぁ・・・」
「私もつきあうから、『備えがなければ役得なし』って言うでしょ?」
「・・・『備えあれば憂いなし』か?」
「そ、そうとも言うかも・・・」
何だかんだで準備体操をしている兄と妹がいた。



『各レイヴンに通達、目標を確認しました、出撃準備して下さい』

「あ、お兄ちゃん、出番よ」
「よし、三機は墜としてくるからな、今夜はご馳走だ」
「うん、頑張ってね、お兄ちゃん」


「よし、行きましょう」
「・・・はぁ〜い」


こうして三機のACは12機の輸送機に向かって飛び降りていった。


―続く―

後書き

初の前後編の番外です。
思った以上に長くなってしまいましたので・・・


あ、そうそう、忘れてはならないのが投稿キャラです。
「神牙」さんの「ジェネア・ネルスリーブ」と「アイシャ・ネルスリーブ」の2人。
「くろさわ」さんの「エリス・ジュオ」です。

ええ、書いてて相当気に入りました。


戦闘シーンはありませんがそれは気に入りすぎちゃって戦闘シーンを入れる隙間がなかったんです。
後編では戦闘シーン入れるのでそっちにこうご期待ということで。



というかロリ系のキャラを書いたのも初めてなのですがねっ!

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