空飛ぶラッキーボーイ
「あ〜・・・暑い・・・」
「ほらほら、さっさとお仕事しにいく」
俺の足に蹴りを入れながらガキがうるさくがなり立てる。
「それは居候の態度じゃないだろ・・・このガキ」
「む〜、ここは私達の家だもん!居候じゃないもん!それに私は立派な大人だもん!」
「ええい!いつから俺の家はお前の家になったぁ!それとその態度のどこが大人だ!」
「引っ越したときから!全部!」
「最初っからか!どこがだ!」
いつの間にか会話の内容が1つ増え、それを混乱することなく話してるのは普通なのかとふと思う。
「ウェイン、この子は私がなだめておくからACの用意しておいて」
リディアはきっちり仕事をこなし、問題はない(その上かなりの美人だ)
「ぶ〜っ、見てなさいよ、後できっちり仕返ししてやるから!」
妹、メルティの方は既にここは自分の家と言う認識さえあるらしく、困ったものだ。
(まあこいつの場合将来有望株ってトコロか・・・って違うぞ、ロリコン趣味とかそう言うのじゃないぞ)
「で、今回の仕事は?確か長期契約なんだよな」
クーラーの利いた涼しい輸送機の中で聞いた。
「はい、そうです、ホウジョウシティーと抗争状態にあるカンザキシティーの援護が今回の仕事です」
ちなみに、いつものように輸送機の操縦席にはメルティが座っている。
冷房の風向きを微妙に変えて風が来ないようにしているのがよくわかる。
それでも気にならないのは操縦席全体が涼しいからだ。
暑かったら多分はり倒しているだろう。
「で、抗争の原因はなんだってーの?」
「資料には載っていないんですが・・・コンコードの情報バンクによれば最高のACがどうとか・・・」
「それだけ?」
「ええ、それだけです」
「理由がわからない、それも多分くだらない理由だ、そして長くなるのが目に見えている・・・」
指折り数えて一度聞いてみる。
「どうしてこの仕事を選んだ?」
「そ・・・それは・・・」
ん?この態度・・・見たことがないな・・・ってまさか!
「メルティが勝手に選んじまったんじゃないよな?」
ぴくっとリディアが動いた、その瞬間にかすかに輸送機が傾く。
この反応じゃ明らかだ。
「おい、ガキ・・・」
「あ、もうすぐつくよ」
「ごまかすなああああああああああああああぁぁぁぁ!」
結局、リディアが止めに入って
とりあえず勝手なことはしないとメルティに約束させた、と、いっても当然のことなのだが。
「ようこそレイヴン、歓迎しますよ」
出迎えの男は言った。
「ラッキー・ラックだ、しばらくの間よろしく頼む」
「いえいえ、こちらこそ」
「で、早速聞きたいことがある」
「なんでしょう?」
「この争いの原因はなんなんだ?」
コンコード社にも入っていない情報、これは明らかに何かがあると踏んでの行動だ。
「・・・こちらへどうぞ」
身分証明やらなんやらあった後。
「これです」
そう言って暗がりの倉庫に明かりがつけられる。
目の前のAC‐にしてはやけに小さな機体‐を見つけた。
「争いはこれが原因なのです」
「これはなんだ?まさか何処かの企業の最終兵器か何かで再び大破壊を・・・」
「違いますよ、フロートレッグはご存じですね?」
「ん?ああ、勿論だ」
その程度も知らないと思われるとは・・・信用無いのか?俺は。
「新型フロートレッグが争いの原因なのです」
「・・・それで?商品化されてないのはこの争いが原因だとか?」
「そうなんです、連中はこのレッグにつける標準のカラーは青がいいと聞かないのです、緑にすると我々が決めたのに」
ぶっ!
「どうしました?レイヴン」
「いや・・・何でも」
予想通り、いや、予想以上にくだらない理由だと思っただけだ、とは口が裂けても言えないね。
「そして連中は我々の所有するホウジョウシティーを占拠し、そこで蒼いレッグパーツを作り始めたのです」
「で・・・それを潰すのに協力しろと?」
「ま、そう言うことです」
「はぁ・・・長くなりそうだなぁ・・・」
「あ、それと先程貴方のACを見させていただきました、それで2足機体は我々は認めておりませんので改造させていただきました」
「待てい」
「あ、ご安心を、操作系統も操作感覚も何も変わりませんから」
勝手にやるなと言うんじゃい!
警報が突然鳴った。
「おっと、敵襲のようですね、レイヴン、我々と共に出撃していただく、もうACの改造は終わってますから」
「・・・ホントにちゃんと動くのか?」
「大丈夫です、あ、そうそう、貴方の所属は『外人部隊』の『雷光』です、間違えないでくださいよ」
正直なところかなり不安である。
外見上はそれほど変化はなかった、脚部の膝から上は。
どこから下はやたらとでかくなっていた。
で、ハンガーに登りながら聞いたところによるとこれは例の新型フロートの試作品で他の脚部も空に浮くことが出来るらしい。
・・・正直言って無駄な機能だと思う。
「リディア、聞こえるか?敵戦力を教えてくれ」
「あ、はい、えっと・・・敵は戦闘機型AC・・・コードネーム『F6F』グラマンです」
「聞いたことがない奴だな」
「敵は話の通り、新型フロートを積み込んだMTです、機動力はこちらより上だと思います」
『レイヴン、貴方のコックピットの戦闘モードにレベル2コマンドを追加しておきました、使用してください』
通信に割る込んできたのは先程の男のようだ。
「わかった・・・それじゃ、いっくぜぇ!」
言われたとおり戦闘モードレベル2にセットする。
実はこれだけでも結構違和感がある。
「って、嘘じゃん、操作感覚に違いありすぎだよ・・・」
なんとこのAC、信じられないことに空に浮かんでいるのだ。
滞空ではなく飛行している、と言えばわかりやすいだろう。
「って敵だ!」
敵は・・・装備はマシンガンだけだな。
こっちはマシンガンにロケットだ、少しは有利か。
言うが早いがロケットを発射する。
って・・・あたらねぇ!?
ものの見事に当たらない。
弾切れになってしまった。
こりゃダメだ、マシンガンに持ち替えて同じ目標に・・・
「あ、あたらねぇ・・・まだ一機も・・・」
「ウェイン、敵は撤退を始めました」
「なんとまぁ・・・早いねぇ・・・一機も倒せなかったよ、俺いらないんじゃねえの?」
しかもここは俺達の都市よりも暑いし、さっさと帰りたいし・・・
「何言ってるんですか?貴方30機以上墜としてますよ?」
「はぁ?何かの間違いじゃないのか?」
「間違いありませんよ、だって、ほら」
正面の映像が移り変わる、どうやら他のACのガンカメラのようだ。
あ、俺のACみっけ。
・・・なるほど・・・そういう事か。
目標には当たってないけど目標じゃない奴に流れ弾が当たってるとは・・・相当なものだな、俺の運も。
「ウェイン、ACの損害は?」
「イヤ、別にないけど・・・」
「え?だってさっきまで貴方が戦ってたのは敵部隊のエース『蒼い悪魔』よ?」
「敵のエースゥ!?」
そんなこんなのやりとりがあった後。
外人部隊、休憩室。
上手い具合に一番乗りだったので一番座り心地の良さそうなソファーに座る。
ざわめきが聞こえる。
どうやら他の外人部隊の連中が帰ってきたらしい。
ドアが開いた。
「ヒュゥ!つらい戦闘だったなぁ」
俺の姿を見つけ、指さしながら。
「あの、エースとやりあって、生きてるなんて、ラッキーボーイだぜぃ〜」
と、ガッツポーズ。
とか、思うと、隣の奴もノリノリで
「やぁってくれちゃってぇ〜!助かったぜぇ。ホントのとこもうダメかと思ったぜぇ〜」
なんだよこの戦闘以上に疲れるアメリカンなノリは。
そんなことを考えながらこの長期契約はいつまで続くのかと考えていた。
―了―
後書き
番外編第7弾『空飛ぶラッキーボーイ』をお送りしました。
今日の使用キャラも再び「くろさわ」さんの「ハードラック」です
で、ついでに零戦てのはこの前更新したミッションレビューの機体ですね。
今日のはただ単に「ラッキーボーイだぜぃ〜」が書きたかったんです。
あ、ちなみにこの話、事の顛末は書くつもり無いので(オイオイ)
ここで書いちゃいますね(他に書くようなこと無いし)
「とりあえず対空砲を用意しよう」とのウェインの一言でホウジョウシティーサイドに圧勝。
で、追いつめられたホウジョウサイドは巨大戦艦を出します(サイズは戦艦大和の20倍くらい)
でもそれは外人部隊と正規の部隊(零戦部隊やね)によってあっさり勝利。
見事標準カラーが緑のフロートレッグが新発売されましたとさ。
しっかし我ながら下らない戦いの理由と結果だなぁ
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