大破壊の残した傷
地球全体を統治していた地球政府。
それは既に実権を失い、形の上でのみ、権力を握っていた。
代わりに幾つかの国家が周辺国家を統一し、5つの巨大国家が成立していた。
『アジア連邦』
人口のみ肥大していた中国、インドなどが経済発展後、共同して誕生した当時最強の政権国家。
しかし、その経済基盤の中心には『A・M(Asian Merchant)』(後のムラクモミレニアム)が存在し、
また『AM』には日本と呼ばれた国の各企業が参入していたため、経済が混乱しやすいなどの欠点があった。
『環太平洋連合』
20世紀〜21世紀初頭において最強を誇っていたアメリカと呼ばれた国々を中心に、
太平洋に面した国々が共同で作った政権国家。
当時最強と呼ばれたアメリカ3軍(陸海空軍)は現在までに非常に高い勢力を誇っていたが、
反面、経済基盤である日本で各企業がアジア連合経済(主にA・M)への参入などを行っているため、経済は非常に危うい状況になっている。
『新生ヨーロッパ帝国』
新生ヨーロッパ連合と呼ばれた政権国家が、ドイツと呼ばれた国を席巻した勢力『ネオ・ナチス』によって簒奪されて成立した政権国家。
陸及び海軍勢力こそ非常に高いが当然連合の旧勢力の反感などがあるため国家としては非常に危うい均衡を保っている。
また
A・M程ではないが強い権勢を持つ企業連合体(後のクローム・マスターアームズ、当時の名前は資料に残されていない)が存在した。
『共産ユーラシア連邦』
ロシアと呼ばれた国々を中心に据え、共産主義の理想を貫く国家である。
広大な国土面積や、それを利用した陸軍兵器、及び対空迎撃システムは、防衛に撤する限り最強であるが、
元々経済基盤や食料収穫量の弱かった上に、他国からの輸入の激減によって、もはや国家経済、及び民間の生活は崩壊寸前である。
『アフリカ統一同盟』
アフリカの統一を掲げる同盟勢力で国土の70%以上を統一していたが、既に国家ですらない。
軍は他国に比べ非常に弱く、経済も弱小。
その上統一を掲げるアフリカ国土自体が殆ど砂漠化していたため、他勢力からは無視されている存在である。
他に、増えすぎた人口のため地下に潜り、シェルター生活を行っている『地下国家都市群』や、
それに対抗するように作られた『地上国家都市群』などがあるが、それについて語るべき事は特に存在しない。
そして、地球歴106年、某日。
「うっ・・・」
全身に走る痛みで、目を覚ます。
虚ろな自分の目に映ったのは、瓦礫。
「これは・・・?」
何も分からなかった。
意識がはっきりしてくる。
確か今日は、父さんや母さんが旅行に行くのを妹と一緒に・・・
そうだ、父さん達は?
後ろを振り向き、走り出そうとする。
その目の前にあるのは、血塗れの妹。
腰から下の吹き飛んだ妹だった。
「うああああああああああああああ!」
叫び声が、遠くまで響いた。
「誰か・・・生きている人はいないの?」
道を力無く歩く少女がいた。
全身を走る痛みと、嫌悪感に耐えながら。
目の前で死んだ人がいた。
全身傷だらけで、何か話していたが、聞き取れなかった。
怖かった、そして、何も分からなかった。
「ねえ、誰か・・・」
絶望的な声は、他の誰にも届かなかった。
「・・・何が起こったんだ?」
自分の挟まれた瓦礫から抜け出して、そう呟く。
誰も、答える人はいなかった。
目の前に半分壊れたモニターがあった。
何かが映っていた。
大きな光の柱。
それが地上に突き刺さった。
まるで・・・堕天使が悪魔の槍を地上に突き刺すようで・・・
とても綺麗だった。
ふっと。意識が遠のく。
それが、彼の見た最後の風景だった。
『この悲劇を諸君達はなんと考える!』
モニターに1人の顔が映っている。
政府高官の顔だった。
『一瞬にして幾つかの地上都市は廃墟と化した!』
話の大きさに、一瞬考えが止まった。
大きな戦いが起こっていたのは知っている。
だが今現在この都市は地上の都市の中で最も安全である。
『これは一体何を意味するのか!よく考えてみるといい!』
プロパガンタ演説、この政府高官の最も得意な分野である。
『だか・・そ!今ここ・・我々独立・上国・・市群は・・・』
画面が白くなった。
「故障かな?」
そう思って立ち上がった瞬間。
頭の中で何かがのたうつ感覚。
気持ちの悪さで倒れた。
「な・・・何が・・・」
声を絞り出す。
だがそれに答える者はいなかった。
急激に身体に悪寒が走る。
意識がなくなってゆく。
死ぬことは怖くない、それでも、自分に何が起こったか知らずに死ぬのは嫌だった。
ふっと見える、窓先の交差点の鏡。
そこに一瞬だけ映った、化学戦装備の兵士達。
そこで、意識がむしり取られるように無くなった。
大破壊と呼ばれた戦争は、大きな爪痕を残す。
虚空に浮かぶ大型砲ジャスティスの被害は―使用した者達にとっては―多くはなかった。
だが、それに触発された形で使用された細菌兵器や核兵器は人類に大きな爪痕を残した。
地上に住む者達は細菌兵器によってその殆どが死滅し、さらに生き残った人々の殆どは、その細菌が原因で死亡した。
だが、それでもその人々は幸運だったのかもしれない。
但し、墓に入ることが幸運だというのなら、であるが。
この戦争では地上に住む者の9割以上が行方不明となっているからだ。
『増えすぎた人口』を収容するために建造された独立可動型の地下都市に住む者。
そして、『戦争のため』にと武装化され、シェルター化され、空気清浄機の入っていた地上都市群に住む者が生きていた。
そして、大量に使用された核兵器は大量の埃を巻き上げ、太陽を覆い隠した。
それでも、それを気にする者はいなかった。
覆い隠された太陽は十数年後には、僅かではあるが見えるようになったし、
正直それまでの間は人類に太陽を見る余裕さえ与えられなかったためだ。
そう、一度は『宇宙のシンボル』とそこに住む者に呼ばれた地球は・・・
この日、地獄へとその容貌を変えたのだった。
―了―
後書き
番外編第6弾『大破壊の残した傷』をお送りしました。
何が書きたいのか自分でもわかってません(マテ)
というよりメインテーマが無いんですよね。(せめてものフォロー)
列挙するとすれば以下の通りですか
1 大破壊以前に争っていた国家勢力
2 ジャスティスの被害とその結果起こった悲劇
3 地球政府権力の完全な形骸化(ジャスティス発射後に政府ではない勢力の人が全世界規模の演説をしていたり)
と、まあこんな感じですな。
しっかし、破滅感満載ですな、我ながら。
タイトル、『破滅の道標』とどっちがいいですか?
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