遠き日の記憶の中で・・・



そう、それは8年前。
「ジオ」
「どうした?ノア」
「帰りなんだが・・・最後の訓練につきあってくれないか?」
「・・・別に良いけど・・・15分だけだぞ」
「どうした?何か用事でもあるのか?」
「まぁそれもあるけど・・・お前も苦労してるよな・・・ヴァーノア財団の臨時社長か」


本当ならば明日はガード候補生はこのシェルター、ラサシティーの外、グランブルシティーへと向かう予定だった。
だが彼、ノアは実質都市を管理するヴァーノア財団総督、クレス・ヴァーノアの実子だった。
その総督が重い病気にかかったため、形式上、臨時総督をすることになってしまったのだ。
実際、今日にしても、候補生学校に来ることすら奇跡的な物なのだ。


「やめてくれ、俺は兄貴の代わりだしそう言った物の経営ならヴィゼアの方が優秀だ」
ノアは弟の名を言った。
「それだってまだ13歳の若造に経営を任せるわけにも行かないだろ?」
「そう言うことを言うなら俺達だって16歳だろ?」
「うん、まぁそうか・・・そうだ、ついでにガルシア達連れてくれば?」
「よっしゃ、それじゃ派手に訓練と行きますか」
「そうだな、おーいガルシア」

この年、ラサシティーガード候補生学校は優秀な5人のエースを世に送り出す事になっていた。
ジオ・ハーディー
ノア・ヴァーノア
ガブリエル・ラミレス・ガルシア
ヴォルゼリュート・ルーデッツ
カーラン・ベッカー
特にノア・ヴァーノアとヴォルゼリュート・ルーデッツの2人は戦術戦略にも長けており非常に期待がかかっていた。



『プログラム作動、使用MTを選択してください』

「じゃ、俺はシェル・ムーン」
最初にベッカーが機体を選択した。

MTシェル・ムーン・・・ヴァーノア財団の警備用MT、高機動戦を得意とする。


「それなら俺はブラウエンジェルだな」
「じゃあ俺もそうするか」
続いてジオとガルシアが機体を選択した。

MTブラウエンジェル・・・ヴァーノア財団の戦闘用MT、バズーカとロケットを標準装備している。


「何だよみんなヴァーノアの機体選択して・・・俺は陽炎改だな」
ルーデッツも機体を決めた。

MT陽炎改・・・アイザックシティーの消失した企業が以前開発した陽炎の改修型、高い機動力を誇る。


「攻撃能力だけならイーグル二式が一番なのに・・・それとルーデッツ、今のは俺に対する嫌みか?」
最後にノアも機体を選ぶ。

MTイーグル二式・・・陽炎改と同様、イーグルの改修型、グレネードを標準装備している。


「いや、そんなことはないぞ、シェルもエンジェルもなんつーか綺麗すぎるイメージがあるから戦闘用っぽくないって意味だ」
「そう言うことか・・・確かにアレは戦闘用って言うよりも式典用って感じだな」
「でも戦闘能力もかなりのモノだぜ」
「まぁそんなことはどうでも良いだろ、さっさと始めようぜ」
ジオの声で言い合いは中断され、仮想空間に五人はダイブした。


その仮想空間は都市と樹木が入り交じったような空間だった。
『それでは戦闘を開始してください』

「わかってる・・・」
「さて・・・どこだ?」
各々相手を捜し出す。
コックピットの端にはそれぞれの索敵能力が表示されている。
それぞれレーダー取り付けられておらず、索敵は目視に頼るしかないようだ。


最初に動いたのはノアだった。
「さて、これでどう動くかな?」
4脚の特性を生かし、構えることなくグレネードを手近なビルに打ち込む。

ドガッという大きな音と共にビルが崩れ落ちる。
そのビルの影に隠れていた機体がノアの目の前に現れた。

「くっ・・・近い!」
現れた機体はマシンガンを発射する。
だが数発被弾したところでグレネードの次弾装填が完了し、発射された。
「うおっ・・・」
間一髪で回避するシェル・ムーン、ベッカーだ。
「やるな、ノア、隠れるところを破壊するとは!」
「しかし、甘いぞ!」
別の通信派が飛び込んでくる。
ノアの機体の後方にルーデッツの機体が居た。
「しまった!」
陽炎改がマシンガンを乱射しつつ飛んだ。

その機体を、バズーカとミサイルが貫いた。
「まだまだだな、ルーデッツ」
見ると戦っている三者を挟撃するように、ブラウエンジェルが立っていた。

「くっ・・・まだだぜ」
ルーデッツは被弾した機体をどうにか動かし、物陰に隠れた。

この訓練は、20分ほど続いた。


「ふ〜、さすがにあれだけやると疲れるな」
「そうだな、特に腕なんかがガクガクだ」
「明日は出発だってのに・・・勝手にシミュレーター使ってイイのかねぇ?」
「あ、やべっ、もう20分も経ってるじゃないか」
ジオが疲れた身体を引きずりながらあたふたと着替え始めていた。
「その焦りよう・・・まさか女がらみ?」
「まぁね」
『なんだとっ』
その場の4人が反応した。
「誰だ?美人か?」
「・・・まさかとは思うが・・・レイアちゃんじゃないよな?」
ジオの動きが一瞬止まって、また動き出した。
「じゃ、そういうことで」
「待て!まさかマジか?」


レイア・ザード
候補生学校の隣の高等部に通っている学生で、かなりの美人。
当然の如くかなりの人の憧れである。




彼等の抗議はジオの耳には入っていなかった。


候補生学校を飛び出し、自分の家とも彼女の家とも逆の方に向かって走り出す。


都市内部、人工自然センター近郊の丘

「あ、ジオ」
「よう、悪いな、今日は遅れちまった」
「うん・・・別に良いよ、私だって遅れることはあるんだし」
そう言って彼女は笑った。

2人は肩を並べて座っていた。
「そっか・・・明日、グランブルシティーまで行くのね・・・」
「まぁそう言う決まりだからな、一応一週間で帰ってくる予定になってる」
「ちょっと寂しいな」
「はは・・・俺もだ」

そう言ったとき、レイアの肩が、ジオに寄りかかった。
「わわわ・・・おいおい、恥ずかしいだろ」
彼はその卓越した操縦技術の万分の一も女性の扱いになれていなかった。

「ねぇ・・・こう考えてみたことはない?」
「何だ?」
少しだけ慣れたのか、声は落ち着いていた。
「今は・・・このシェルターの偏光ガラスに遮られてしか外を見ることが出来ないけど・・・
いつか地上の汚染が無くなって、地上に住めるようにならないかな、って・・・変かな?」
「う〜ん、おかしくないと思うぞ、元々俺達は地上に住んでたんだから、さ」
「ホントに出来るかな?太陽の光を全身に浴びて、清々しい風を受けて・・・木々の緑を感じながら・・・
草原の中で・・・ごろん、って昼寝するの」
「できるさ・・・俺達がホントに望めば、さ」
「私ね・・・実は外の世界って一度だけ見たことがあるんだ」
「え?どうやって?外に出るにはシティーの許可が必要だし、出られても防護スーツの偏光ガラス越しでしか見られないんじゃ・・・」
「私のおじいちゃん大破壊前の生まれでね・・・昔の映像を取っておいてくれたの
粗い2D映像だったけど、凄く綺麗だった・・・」
夢見心地で語るレイア。
「だったら・・・地上に出た最初の人になればいいさ、大破壊後に本当の日の光を見た最初の人に」
「もしそうなったら・・・嬉しいな・・・」
「レイア?」
レイアは寝てしまった。
寄りかかられた肩に、心地の良い重さが掛かる。

・・・やっぱりここままじゃ寝にくいよな・・・
ジオはとりあえず膝枕をすることにした。


「やっぱり、こうしてみてると可愛いよな・・・」
すうすうと気持ちよさそうに眠るレイア。
思わずその唇に自分のそれをつけてみたくなる。
「って、それは卑怯だよな」
すぐにその考えを引っ込めた。



「あれ?私・・・」
「起きたか?」
「え・・・きゃっ!」
レイアはがばっと起きあがった。
「あ・・・ごめん、私・・・寝ちゃってた」
「あ〜、いいよ、可愛い寝顔が見られたし」
「もう・・・恥ずかしいなぁ・・・起こしてくれれば良かったのに」
「起こすのもったいないだろ?せっかくの可愛い寝顔なんだから」
「う〜・・・ひどいよ・・・」


「可愛いモノはいつまでも見たいと思うのは当然だろ?とりあえず、もう夜だぜ、帰らないと・・・」
「そうね、帰りましょ・・・あの、今日はありがとうね、会ってくれて、旅行の用意とかあるでしょ?」
「大丈夫、それはもう終わってるから」
「あ、そうなんだ」
そんな他愛のない会話を繰り返しながら、2人は家路についた。



「ただいま」
ジオは家へと戻った。
「お帰りなさい、お兄ちゃん」
「ああ、ただいま、ミリアム」
「とりあえず夕食冷めちゃうから速く食べちゃいなさい」
「分かった」

偽りの絆。
それはまだ家族を繋いでいた。




この時、明日には悲劇が起こるなど誰が考えるだろう?
この時、絆が偽りであると考える者が何処にいるのだろう?


翌日、ラサシティーを出発した列車が3機のACに襲撃され、破壊された。



ある者は涙し、またある者は復讐を誓い。
また・・・ある者は・・・



・・・嘘だよね、きっと何処かで・・・生きてるよね?

・・・また会えるよね?

私は、待ってるよ・・・

だから、早く迎えに来てね・・・

待ってるから・・・


いつまでも・・・いつまでも・・・


―了―

後書き



番外編第3弾、今回はジオ編の補完です。

あってもなくても本筋と関係がないんですけど書きたくなったんですよ。


ジオとノア以外は即興で考えた名前なのでちょっと変かもしれません。



まぁ、これは何が言いたいかっていうと・・・レイヴンになる前は彼等も平和な生活送ってたって言うことです。
ああ、あと人並みに恋愛もしてましたっていうのもあるか(^^)

しっかし・・・恥ずかしい文章だなこりゃ。
友情モノのはずがいつの間にかレイアとの恋愛モノになってるし。



文章の最後の方が何かを思い起こしても気にしないこと。



とりあえず次回もご期待って事で。

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