歴史の影で




とあるアリーナ、地球政府高官の主催する大会で・・・

「さあ!今度の対戦カードは!」
アナウンサーがボタンを押すと2人の顔が表れた。
「おおーっと!これは以外!超名門出の新人対ベテランレイヴン!これは面白くなりそうだぞぉ!」
どうやら、このアリーナでは賭が公然として行われているらしい。





「さあそれでは登場していただきましょう!」
アナウンサーの声が響き、観戦席は歓声に包まれる。
「まずは超名門、地球政府パイロット学校出身の新人レイヴン、レイヴンネーム『黒騎士』、AC『ズワァース』」
歓声が一際大きくなる。
「対するは・・・一般人からこのアリーナまでのし上がった実力派、レイヴンネーム『イリュージョン・アイズ』、AC『ファントムキッド』」
歓声が最高潮を迎えた。





「しかしですね〜正直このカードでは戦いはイリュージョン・アイズに大きく傾くと予想されますが」
アナウンサーが隣の地球政府のスポークスマンに話しかけた。

「普通ならばそうでしょう・・・実際、賭カードを見ても8対1でイリュージョン・アイズが多く買われています」
「と、言うと・・・彼は普通じゃないと?」
「まあ見ていてください」
そう言って、スポークスマンはニヤリと笑った。





「各部チェックよし・・・出撃する」
イリュージョン・アイズと呼ばれる女性、セリスはACを発進口に進めた。
「今度こそ・・・あの赤いレイヴンを叩きつぶすわ・・・みんな」
家族のことを思い、胸のペンダントを握りしめながら・・・


「スティンガー、いや黒騎士だったか、異常はないか?」
「ふふふ・・・問題はない、行けるぞ」
不敵に笑いながら、黒い鎧を着込む。
「おいおい、実戦にまでそれを来て行くのか?パイロットスーツ着ろよ」
「そうはいかない、私は、騎士なのだ!騎士たる者、戦場に行くとあらば甲冑を着込むのが相手への礼儀!」
「ああ、分かった分かった、さっさと乗れ、整備は完璧だ」
「わかった」





「READY?GO!」
戦闘開始とともに両者は動き出した。

「な・・・」
セリスは驚いていた、軽量級の自分のAC、それと互角に動くのだ、目の前の重量級の黒い機体は。
「ふふふ・・・はっはっはっはっはっはっはっは!」
まるで狂ったかのように全火気を乱射する。
中にはエネルギー兵器がある、高速機動の中、
エネルギー兵器を撃っていてはたちまちジェネレーターに異常をきたしてチャージングになるはずだった。
「な・・・全く止まらないじゃないの!」
「ボウガンに刺され!刺さって倒れよ!騎士の弓の錆となれぇ!」
エネルギー兵器で実体のない、しかも肩から放つボウガンなどないと思うのだが。
しかも極めつけにその大きさから武器はグレネードである。
「そんなでかいボウガンあるわけないでしょう!」
思わずセリスは大声を出した。

アリーナでは対戦中、自由に通信できるようになっている、それはいつでもギブアップできるようにとの配慮だが、
実際はただ罵りあいに使われることも多い。

5分後。

「む、弓矢が切れたか」
「チャンス!」
動きと弾幕が途切れた瞬間に、セリスは持っていたマシンガンを乱射した。
「その程度で、この甲冑を破れるモノかぁ!」
「わかって・・・」
瞬間、弾幕が無くなる。
ズワァースの真上に、ファントムキッドが居た。
「るわよぉ!」
声と同時にブレードを振り下ろす。
追加された装甲版を貫き、コアが剥き出しになる。
そこへマシンガンの火線が集中した。

凄まじい弾幕で煙が舞い降りる。


そして「バァン!」という爆発音が響いた。





「勝負あり!」
そうアナウンサーが言おうとした瞬間、煙の中から、ズワァースでも、ファントムキッドでもない機体が表れた。

「ふふふ・・・馬を忘れていた・・・馬が無くては騎士といえぬ!今度こそいざ尋常に勝負だ、怪人の子!」
その機体はズワァースだった。


「まさか・・・これですか、さっき言っておられたのは」
「ま、そう言うことです」


ただし、今までの装備は全て弾け飛び、肩には2門のロケット、それに両腕には腕武器のブレード「SAMURAI」が装備されていた。
足にはフロート、恐らくこれが「馬」と呼ばれたモノなのだろう。

「じょ、冗談でしょ?」
「本当だ」
慌てて距離をとるファントムキッド。
「刺され刺され刺されぇ!」
その場から動かず、ロケットを乱射する。
「武士と言うよりも弓兵じゃないの!」
「騎士たる者、弓の一つも使えるのが嗜み!それに動くのも面倒になってきたわ!私は!面倒が嫌いなのだよ!」
「言い訳がひどすぎるわよ!もう一回幼年学校に入り直して言い訳でも習ってきなさい!」
「おまえのそのいつも悪口を言う癖・・・一生なおらん」
「大きなお世話よ!」
「ふはははは!ならば避けて見せろ!我の道を貫く、銀色の矢をぉ!」
会話の間も、途切れずにロケットが飛んでゆく、ファントムキッドはただ攻撃を避けているだけだ」
「そうだ・・・ふふふ、面白い物見せて上げるわ、黒騎士さん」
「はははははははあははあははははははははは!見せてくれぇ!」


彼が見たのは爆炎だった。





「危険です、被験者の精神レベルに異常発生、許容値以上に精神が高揚しています」
「かまわん、奴のコピーはいくらでもある」
「・・・了解しました」


「楽しいぞぉ!爆炎を吹くACを目の前で見るのはぁ!」
ロケットを回避しようとして、爆炎に包まれているかのように見えるファントムキッド。
「あら?ふふふ、あたしのAP、見てご覧なさい」
彼のAPの真下に表示されている彼女のAPは、全く減っていなかった。


「馬鹿な・・・」
ロケットを撃ち、相手が爆炎を上げる、それならば必ずAPは減る。
「馬鹿な馬鹿な」
それなのに何故目の前の敵はAPが減らないのだろう。
「馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿なぁ!」
目の前の敵に斬りかかる黒騎士。
「何故減らない、何故減らないぃ!」
回避するファントムキッド。
「教えてほしい?」
いたずらっ子な口調で言う。
「教えろぉ!教えろ教えろ教えろ教えろ教えろ教えろぉ!」
「それはね・・・これよ!」
ズワァースの目の前で爆炎が弾ける。
だが機体に何のダメージもない。
「デコイ・・・」
「Yes」
気付いたとき、ズワァースは両断されていた。





「勝者、ファントムキッド!」
歓声が再び最高潮を迎えた。

「また・・・今度も違った、か・・・」
少女の求める敵は赤きAC、かつて、大深度戦争当時からその名を知られ、
最新型のACにさえ当時と変わらぬ強さを誇る敵・・・
『ナインボール』



そして、それを横目に見やりつつ、アリーナをでた男が一人。

彼は自らの車にはいり、車を走らせながら電話をかけた。

「はい」
「長官を頼む、フライトナーズのzagと言えばわかってくれるはずだ」

暫くすると呼び出した相手がでてくる。

「長官、なかなか面白い物を見せていただきましたよ」
「ほう・・・君が満足するとは思わなかったな、で、どうかね」
「ええ、あのパイロット、黒騎士とか言いましたか・・・あれをパイロット学校卒業生にするとは以外でしたが」
「ああ言っておけば身分に誰も疑問をもたん、一番楽な方法だ」
「ところで、あのパイロット、どこから拾ってきたのですか?」
「拾ったのではない、再生させたのだ」
「ほう・・・敬愛する地球政府科学長官殿は人を再生させる技術を開発したのですか」
「ふっ・・・蘇生ついでに強化、延命処置も施した」
「まあ負けちゃいましたけどね」
「そうなのか・・・まあこの技術は試作段階、まだ改良の余地はあるさ」
笑い声が響いた。





「で、どこで拾って来られたので?」
「これは最高機密に属することだが・・・君になら言っても良いだろう」
「それは光栄の極み」
「かつて閉鎖空間アビスと呼ばれたところだ」
「な・・・まさかそれは・・・」
「そう、『ロストフィールド』だよ」

―了―

後書き



ええ、これで終わりです。
カト吉さんに投稿していただいた黒騎士の設定を何となく考えていたら浮かんだので、
忘れないよう今日のうちに書いてみました
だから細かいところ考えてません、大きな陰謀が見えたな〜、って所で終わってます。
だから会長の陰謀とかフライトナーズのzagとかの設定はないです。

なので誰かこの話の続き書いて下さい。(爆)

できる限りの協力はします。


念のためいっときますがアビス=ロストフィールドってのは個人設定です。

さて、本編の方も書きますか。(ホントはそっちを書くつもりだったのに〜)


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