刹那の思い
−救われざる者−
飛び交う銃弾。
避け損ねた数機が炎上する。
ある者は咄嗟に脱出し、ある者はそのまま豪快に焼き尽くされた。
見る間に互いの兵力は減り、『戦闘』は『決闘』へと変わっていった。
「くっ………さすがに機動性はそっちが上か!」
機体各所が悲鳴を上げる。
間接部の反応も悪い。
残弾もそれほど多くない。
その上その銃弾さえまともに命中していない。
殆どが回避されるか、敵の持つ盾に弾かれた。
「敵もやるな、こちらの攻撃する隙を見せてくれそうもない」
もう一方のパイロットが悪態をついた。
パイロットとしても腕は拮抗し、あとはパイロット持久力と機体の耐久力次第の勝負となる。
こうした戦いは決して珍しい物ではない。
ACでの戦闘は一瞬で決まる事もあれば、三日三晩続く事さえある。
だが、それ故に一時たりとも気を抜く事が出来なかった。
戦いが一昼夜続いた頃。
互いに疲労が限界に達した頃。
互いの気力が終わろうとした頃。
戦いは終わりに近づいた。
両者共携帯していた武器が弾切れを起こしたのだ。
一方は予備武器であるブレードを抜き、もう一方は近くの残骸から戦闘用ドリルを奪い取る。
いつしか2人は戦う意味さえ忘れ、戦う事だけを考えていた。
2人は傭兵だった、仕事さえ放棄すれば2人とも生きていけたであろう。
金で命が買えるのならば幾らであれ安い物、とは誰が言った言葉であろうか。
「行くぜ」
「来い」
互いが外部マイクで声を掛け合う。
生き残った傭兵達は既にその場を離れ、一部は生還し、一部は依頼主によって抹消された。
ブレードを持った機体が一気に距離を詰める。
もう一方はドリルを構え、迎撃の体勢を取った。
ブレードが横凪ぎに払われたと思ったその瞬間。
ブレードを持った機体の足が折れる。
その直前にドリルが突き出された。
ドリルは肩を掠め、ブレードは凪がれもしなかった。
ブレードを持った気体はもう片方の足で体勢を無理矢理変えたかと思うと、折れた方の足をコックピット目掛けて叩き込む。
コックピットが歪にへこむ。
破片が体を貫く。
「まだ、まだだあ!」
倒れていく機体をそのままに、腕だけを動かす。
狙うのは、コックピットただ一点。
目が霞んでいく、血が目に入って見えなくなっているのが分かった。
せめてその前に、目の前の、敵だけは。
膝だけ残った足で膝蹴りを叩き込んだ機体はバランスが崩れ、倒れていく。
そこにドリルが突き刺さった。
ドリルの機能は停止している。
それでも、ドリルは貫いた。
パイロットは死を覚悟し、覚悟したまま貫かれた。
右腕の第二関節から先を吹き飛ばされ、その衝撃で肩までの骨が粉砕され、全身の骨に軋みが入る。
また、無数の破片が全身に突き刺さり激痛を与える。
それさえも感じない、右腕が亡くなったというのに痛みさえ感じない。
叫び声が聞こえたような気がする、幻聴か、あるいは相手の物か、もしくは自分の声なのか。
ブレードはその出力を無くし、ただの柄となった。
それでも構わない、倒れていく機体に覆い被さるように倒れ込む機体。
そのブレードの柄は、コックピットを貫通し、全身を人間から肉塊へと変えた。
痛いという思いや、叫び声さえ聞こえない刹那に思う。
両者が倒れ込んだ時、その瞬間生きていたパイロットは、次の瞬間目の前の壁に。
その寸前までは頼れる視覚だった場所に叩き付けられた。
頭部が砕け散る、痛いと言う反射さえ感じないであろう一瞬に、思う。
ごめん。
それが両者にとってどれほど意味ある思いかは分からない。
もはや何も考えられないから。
倒れ込んだ轟音の直後、辺りは静寂に包まれる。
世界中の音が消えたかのような静けさの中、戦闘は終わりを告げた。
完
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other ages、時代不明その1です、新作です。
一日で書き上げましたが、読み返してみると作者である自分がめちゃくちゃ鬱に入ってたんだなぁと思います。
最初はなんかもっと、こう、男達の熱き友情物語で両者生還するという予定だったのに。
何ですかこの鬱描写というかきっついのは。
ちょっとグロ入ってるんじゃないか。
いかんいかん、これを本編に持っていってはいかん。
そんな風に思ってしまった本作でした。