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flowers 病気が見つかったばかりのあなたへ

    *あなたに最初に伝えたいこと
              *信頼すること、されること
                         *支えてもらおう
                                     *ため息もたいせつ



* あなたに最初に伝えたいこと


自分の病気がガンだと分かって、あなたはどんな想いで過ごしているでしょうか。

私は、ただ茫然としていました。
検査の結果が出るまで時間もあり、家族にも友人にも「ガンの経験者」がいたので、心の準備はしていたのですが、それでもショックでした。

気丈で泣かないのではなくて、「涙も声も出ない」状態でした。寒いくらいの静けさと不安と孤独。深海魚みたい。
今でも思い出すと体が震えます。

友人には、「涙が止まらなかった」と言う人が多いです。
診察室で「絶対に間違いだ」と医師に食ってかかった男性、幸せそうに見えるすべての人が憎らしく思えて「街を爆破したかった」と回想する20代の女性もいます。

あなたも震えているかもしれない、涙が止まらないかもしれない。それとも、普段よりずっとしっかり、平然としているかもしれません。あなたが何をどのように感じたとしても、それはとても普通のことです。

今では「がん」が、いわゆる"不治の病"じゃないことくらい誰だって知ってます。
だけど病名が与える衝撃は昔とちっとも変わりません。

あなたの反応がどんなものでも、それは自分の身に起こっている事柄に対して折り合いをつけようとする、体と心の自然な働きです。



ガンを持ったことで、自分のことを責めないでください。

あなたの日頃の行いや性格のせいではないし、ましてや(年輩の方に多いのですけれど)何かの因縁や祟りなんかじゃありません。

それは地震や雷に遭うようなこと。起きたことはただ起きたことです。

ご家族や恋人の中には、今まであなたに苦労をかけたことを気に病む人がいるかもしれません。「違うよ」と言ってあげてください。

ストレスなど何もなくて、お酒も飲まず煙草も吸わず健康的に暮らしても、病気になる人はいるんです。
(ガンの子どもたちに会ったことありますか? あんな天使たちでさえ病気になるんです。せつなすぎるけれど。)

あなたのせいではありません。誰のせいでもありません。



家族や友人に「ガンの経験者」がいてくれて私は仕合わせでした。

最初のパニックからはどうにか抜け出して、それでも途方に暮れていました。
ずっと感覚に頼って生きてきたのです。すべての判断の基準が、好きかどうか、嬉しいかどうか、仕事でも何でも、子どもみたいなやり方しか知りませんでした。

「ガン細胞ができたってことは、免疫系の何かが間違ってる、どこかバランスが悪いのね」

そう思うと、何もかもが疑わしく見えて、自分の生命力や、直感にさえ不信感を抱きます。そんな時に治療法など命に関わる(かもしれない)選択をしなければいけないなんて. . . 。
どうしたらいいんだろう?

落ち着いて考えれば、具合が悪いのは私のごく一部分です。五感や心持ちまで否定する理由などないのですが、その頃はすべてが信じられなくなっていました。




混乱した私に、胃ガンの先輩が電話をくれました。

― やみぃ、今までだってつらいことや苦しいことはあったでしょ。ちゃんと切り抜けてきたじゃない?  今度のことも同じ。まったく同じことなの。大変だけど越えられる。

私には「病気が必ず治る」とは言えない。だけどあなたが「大丈夫」だってことは言えるわ。人間ってぎりぎりの土壇場になったらすごいもの。

ちゃんと食べて、ちゃんと眠りなさい。それが今は一番大事。

自分を信じてね。 そのうちに、今思っているよりも、あなたがずっと強くてしなやかだったって分かるわ。楽しみにしてるからね。いつでも、そばにいるからね。 ―




この一年半、彼女の言葉を何度反芻したことでしょう。
私はまだ自分のことを強くてしなやかだとは言えません。

それでも、同じ言葉をあなたに届けたいと思います。

あなたは、大丈夫。
いつでも、そばにいるからね。

*



* 信頼すること、されること


病気について知ることは、「ちから」だと思います。

あなたのガンについて、担当医師からできだけ詳しい説明を受けてください。
分からないことは、たとえ些細なことだと思っても必ず質問してくださいね。
治療法のこと、薬のこと、副作用のこと、医療費のこと、何でも遠慮せずに。

―  あなた自身が納得し 心地よく感じることが、何よりも大切なことです。 


興味があれば、多くの医師や専門家が、書籍やインターネットで詳しく教えてくれているので参考にしてください。病院や医師の選び方、手術や治療法の決め方、セカンドオピニオン(別の医師の意見)の求め方、東洋医学などの代替療法や最新の治療法などについても読むことができます。 リンクのページへ

中には、知りたくないようなことや、疑わしい情報もあるかもしれません。
けれど、分からないことが原因で心配でいるよりは、詳しく知ることの方がずっとラクな場合が多いでしょう。余計なわずらわしさも、減らすことができます。

たとえば、起こり得る副作用について知っていれば、少し頭痛がする度、口内炎ができる度に、ガンが転移したとか別の病気になったなどと気苦労せずにすむし、適切な処置だってとれます。

そして、あふれる情報の中で何が信じるに値するものか見極める力をつけることは、これからの私たちに必要なことだと思います。





近頃は、医療ミスや不親切な病院のニュースが(やっと)表に出てくるようになったので、病院や医療に対して、用心深くなっている人もいるかもしれません。(先日も「病院に殺されない方法」だなんて、怖いタイトルのテレビ番組がありました。)

たしかに、お医者や看護婦さんは「神様や天使」ではありません。
けれど、ほとんどすべての医師や看護婦(士)は優しく献身的で、やっぱり「天使みたい」だと、私は思います。

もちろん経験や能力の差はあって(それはどの分野どの業界でも同じですね)、人間同士なので相性の善し悪しもあります。理科系の人たちに多い、言葉が足りなかったり、クールに見える「傾向」もあるかもしれません。(理科の人ゴメンなさい。) 医師や看護婦(士)の絶対数が足りないので、忙し過ぎるのも事実です。

それでも基本的には皆、心根の優しい人たちです。

医療に携わる人たちは誰もが、あなたに治ってほしいと願っています。
そう思わない人などいません。


医師、看護婦(士)、薬剤師、放射線技師、作業療法士、カウンセラーなど、皆があなたと一緒に「チーム」を組んで働くのです。「あなたが治る」ために力を合わせるのです。

病気や治療法についての知識は、「チーム」のメンバーに対する信頼を裏づけてくれます。そして治療をより好ましいものにするでしょう。


医師や看護婦(士)たちは、どんなにベテランでも、私たち「ガンの患者」と接する時に緊張しています。不用意なことを言って患者を傷つけはしないか、どのように話せばよいかと考えているみたいです。

こちらからも、気持ちや「人となり」をスタッフに伝えたいですね。話すのが難しい時には手紙を書きます。お互いに理解し合い信頼し合えたら、とても素敵です。

・・・ でも万が一、あなたの努力もむなしく、スタッフの誰かが失礼だったりしたら、すぐに別の医師(または別の病院)を探してください。何かが「しっくり」こないと感じたら、その「直感」を信じてください。私も一度病院を換えました♪

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* 支えてもらおう


周りの人たちは、あなたを手伝いたいと思っています。

「みんなに心配をかけたくない」
「自分の気持ちが整理できるまで人には言えない」と、感じているかもしれません。
「他人の手を煩わせたくない」「同情なんてまっぴら! 」と思う人もいるでしょう。

あなたがどう考えようと、周りの人たちは心配がしたいんです。もし、お友達が病気になって大変な時には、あなただって何とかして力を貸したいと思いますよね。

今回は、その順番があなたに回ってきただけ。
皆の気持ちや応援をもらいましょう。ただ、「ありがとう」、「嬉しい」って言えばいいんだもの。


・・・ 中には、あなたの病気を知って遠ざかるような人もいるかもしれません。たぶん深刻に考え過ぎて会うのがつらい。それとも、どう話せばよいか分からずあなた以上に混乱しているのかもしれません。そんな人たちには時間をあげてくださいね。


何かしたいけれど何をすればよいのか分からない、手伝いたいけれど「余計なお世話」と言われやしないか . . . 、皆がドキドキしながらあなたの言葉を待っています。

これはもう「お願いリスト」でも作るしかありません。周りの人たちが動きやすいように、一つ一つをできるだけ「具体的」に頼みましょう。

たとえば、入院生活が長い時には、必要なものをリクエストして差し入れてもらいます。
近所の人たちには、病院への送り迎え、買い物、家事、ベビーシッター、ペットの世話などを引き受けてもらいます。
同僚は仕事だって肩代わりしてくれますし、読書家や、医学やコンピューターに詳しい人は喜んで調べものをしてくれるでしょう。

心おきなく話せる人に、定期的な訪問や電話を頼めたら 鬼に金棒です。

それから、病状や治療の経過など、同じことを何度も繰り返して話すのは、大変な仕事です。 親戚、友人、同僚など、グループごとに連絡係を決めて、時間も体力も節約してください。


「そんなに図々しくはできない」と感じるかもしれません。
けれど、周りの人たちは手伝いたいと思っています。遠慮はしない方がいいんです。




恋人や、家族や、親友は、もちろん大きな支えです。

けれど、彼らもあなたと同じくらい、時にはあなたよりもつらい思いをします。愛する人の痛みや苦しみを想像するしかない時、人は苦しいですものね。彼らにもサポートが必要です。

それは、きっと痛いほどに分かって、だからこそ近しい人たちに対しては、「つらいことは言えない」と思うかもしれません。

(なぜか私も、親しい相手ほど表現が控えめになります。とくに母や妹や心配性の友達には、具合の悪い時にも「とっても元気よ! 」などと、つい言ってしまって。)

けれど、こちらが気を遣い過ぎて感情を抑えると、相手もそれに対して気を遣い、不安になったり深読みしたり、入り組んだ迷路みたいなことになってしまいます。

事実はありのままに説明し、気持ちもなるべく率直に伝え合いたいと思います。
八つ当たりしても、ケンカをしてもいいんですよね。近しい人とは仲直りだってすぐにできるもの。



病院で、仕事場で、家庭で...、どこででも、少しだけ図々しくなってください。できるだけ多くの友人・知人をあなたの「チーム」に引き込んでください。
あなたの負担を少なくすることを、最優先にしてください。

それが、あなたと、あなたの大切な人たちを守ります。

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* ため息もたいせつ


「気持ちをしっかり持って」「明るく、前向きに」「病は気から」

今までに何度、こうした言葉に出合ったでしょうか。
「病は気から」と聞く度に、私は少し戸惑います。― あんまり前向きじゃないから。(笑)

肯定的な態度が治療の効果をあげ、喜んだり笑ったりすることが免疫力を高めることが証明されています。でも「だから陽気な顔ばかりを続ける」というのもヘンなものです。

あなたは今回、最初に診察室のドアを開けた時から、ずっと緊張状態におかれてきたかもしれません。そうだとしたら、疲労を感じる方が自然だと思います。



泣きたい時には泣いてください。ため息だってつきましょう。

笑うことの効果と同じくらいに、ため息や涙の効果もあるそうです。ときには感情を解き放つことも必要です。

「泣くこと」があまり得意でない人も (男性には苦手な人が多いかもしれません)、せめて「痛い」とか「疲れた」という言葉は声に出してほしいのです。体や心の発する合図が聞こえるように。

長い道のりかもしれません。意識的に、きちんと休憩をしてください。
ゆっくり休んで、ため息が深呼吸に変わったら、また歩き出せばいいのですから。


たぶん、きっと、遠い旅です。
しっかり準備をして、でも急がずに、時にはまわりの景色も眺めながら、一緒に歩いて行きたいです。



それは落ち込むわよ。でも、落ち込みながら雲の切れ間を探してる。
どんな時でも、人って喜びを見出せるのよね。
そうなの、モルヒネ飲みながら、今日という日をすごく感謝してるの。
不思議ね。  (47歳、肺ガンの女性。)

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