『勝敗』
時々、あまりの無神経に腹が立つ。
僕が気にしていること、負っているもの。
それらを全く無視するかのように発せられる一言に。
そんな時は言ってやりたくなる。
「僕がここにいるのを知っててそーゆーこというわけ?」と。
ジェームズならばそんなことはないのに。
一言一言に彼の気遣いを感じる。優しくて暖かくて、僕は癒される。
ピーターが何か言いかけ、僕の顔を見て止めたとき、小さく「ありがとう」と唱える。
なのに、彼だけは土足で僕の心を踏み荒らす。
けれどいつしか。
それがシリウスなのだと気付いてしまった。
痛みは、感じなければ痛みでないということ。
傷ついていると思いこむことによって、さらに傷を増やしていること。
いっそ、忘れてしまえばいいのだ。
僕が暗闇を抱えているということを。
それは、もしかしたら血まみれの自分に気が付かないで笑っているということなのかもしれないけど。
でも僕は確かに救われたのだと思う。
傷に気が付かなければ傷は消えるのだ。
傷ついている僕に気が付かず、彼が笑うから。
僕も作り笑いでない笑顔を返せる。
そんな彼に感謝などしてしまったので。
だからこれは、僕の負けなのだ。