『ホワイト・クリスマス』
「さぁって、どれがハズレかな?」
グリフィンドール寮の四人組の部屋で、部屋の主達は一様に唸り声を上げていた。
目の前に置かれる三つのクリスマス・プレゼント。
この中のどれかがスリザリンの天敵、セブルス・スネイプお手製の嫌がらせのはずなのである。
山のような贈り物の中からこの三つに絞ることができたのも、彼らの才能を以てしてのこと。
しかし、この三つに関しては証拠無し、全くの勘で行くしかない。
「あ、開けないって選択肢があるよ」
ピーターが言う。
「だめだよ。そんなの、くれた子に悪いだろ?」
「うー、徹底して宣伝したつもりだったんだけどな。俺らにモノくれる奴は差出人の名前書けって」
「…シリウス、君、確実に敵を増やしたよ」
リーマスは溜息をついた。
一つは桃色の見慣れない紙(和紙)で包まれた手のひらサイズの四角い箱。
中身不明。アクセサリーか?
二つ目は衣類かと思われる、柔らかいモノを包んだ不定形の茶色の包装紙。
赤いリボンが丁寧に結ばれている。
三つ目は教科書サイズの軽い木箱。
振り心地からして菓子類ではないかと思われる。
「で、どれだと思う?」
「去年は確か、一番小さい箱がそれだったよね」
「シリウスがこれなら大丈夫って言うから〜」
「あ、ピーター。余計なこと思い出すんじゃねぇよ」
「うむ。では僕が究極の解決法を提案しよう」
「究極?」
「よっし、言ってみな。ジェームズ」
「多数決!」
「一つ目だと思うんだよ、俺は。だってピンクだぜピンク。奴が使う色かよ」
「僕は二番目だけどなぁ。なんか、一番大きくて色々詰まってそうだもの」
「箱が怪しいよ。あれなら薬品類を仕込みやすいじゃない?」
「―――無視かよ!?」
叫んだジェームズに、3人が振り返る。
「ったく、どこが究極なんだよ。最後の手段じゃねーか、それは」
「もっとなにか劇的なものを期待しちゃったよね」
「じゃ、ジェームズ。僕ら一票ずつ入れたから、最終判断は君がしてよ」
「責任重大だな〜ジェームズ」
「僕たち離れてるから、後はよろしくね」
「言い出したのは君だものね〜」
引きつった笑みを浮かべるジェームズに、3人は三つの包みを押しつける。
「念のために窓開けとこーぜ」
「シーツをかぶるってのもありだね」
「わ。お菓子しまっとかなきゃ。食べられなくなったら困るし」
「シリウス…ピーター…リーマス…。素敵な友達を持って僕ぁ幸せだとも!」
叫びと共に、ジェームズはさっとリボンをほどいた。
二番目の包み紙である。
「まっさか、ピーターが当たりだとは思わなかった」
シリウスが、シーツの中から顔を出しながら言う。
「うへぇ。これ誰が掃除するの〜?」
小麦粉で真っ白に染まった部屋を見て、ピーターが泣きそうになっている。
「単純にしてダメージの大きい嫌がらせだねえ」
リーマスが深々と溜息をついた。
「やるな…スネイプ」
けほ、と白い息を吐き出しながら部屋の中央の白い固まりが呟いた。
「まさか全部当たりだとはね」
腹に据えかねた、煮えたぎるような口調で言う。
一つの包みを開いた瞬間、残りのプレゼントまで同時に爆発し、部屋中に白い粉が舞い散ったのだ。
その爆発の中心にいたジェームズがどうなったかは、わざわざ確認するまでもない。
「この恨み…今夜中に晴らさないと気が済まないよ」
くつくつと笑いながら、ジェームズは透明マントをひっつかみ、部屋を飛び出していく。
「今日こそはぜってーに泣かせちゃる!」
という捨てぜりふを残して。
「うあ。ジェームズが壊れた」
「ていあーん。来年からジェームズ宛のプレゼントは開けないことにしない?」
「だよね。スネイプからくるのって絶対ジェームズ宛だものね」
「変に律儀なとこあるよね、セブルスって」
「単に標的は一人ってことかもよ?」
「けど、着替えもせずに行くかぁ?普通」
「恨み骨髄ってことだね」
「スネイプの冥福を祈ろう」
「あ! ジェームズの奴、掃除サボりやがった」
「ずるいよそれーっ」
「まぁまぁ、そこらへんの落とし前は後で付ければいいじゃない」
「リーマス…お前って時々黒いよな…」
ともあれ、メリー・クリスマス。