『罰ゲーム』


朝食の席にて。
時間が時間であるから、寝ぼけながらパンにバターを塗り続けている者、騒々しいまでに元気に話す者、
口数少なく食べ物を詰め込んでいる者など、生徒の様子は様々だ。
セブルス・スネイプは朝が苦手な方だったので、黙々パンをかじっていた。
そして食後の紅茶を味わいつつ、なんとはなしにグリフィンドールの席に視線を送る。
黒髪のひどい寝癖の男と偶然にも目が合い、
ガタ、
と音を立てて相手は立ち上がった。
ざわめきが起こるのとほぼ同時に、口に両手を添えて叫ぶ。


「セブルス! 愛してるよ!!」

「――ッ」


ガホッという音と共に、セブルスの手からティーカップが落ち、彼は思いっきり咽せ込んだ。
何度も咳を繰り返すその間に、周囲は沈黙し、そののち爆笑の渦に変わる。
スリザリンの一同でさえも、はっと我に返るまでしばらくの間笑っていた。
そんな中、一人咳き込んでいたセブルスは、やっとなんとか呼吸を整えると、きっと顔を上げる。
明らかに怒っているのだが、真っ赤になって(呼吸困難)目に涙を浮かべる(喉の痛み)その様子は、ちょっと可愛げがあった。

「ジェームズ。貴様よくもっ」

バン、と両手を机に打ち付けて立ち上がる。
そんなセブルスに、ジャームズは片手を振って応えた。

「や〜。そんなに嬉しかった?」
「息の根止めてくれるわ!」

叫んで今にも机を土足で乗り越えかねないセブルス。
その制服の袖を隣にいた男が引っ張った。
この騒ぎの中でも、淡々と食事を続けていた男、ルシウス・マルフォイである。

「セブルス。スリザリン寮の一員として、はしたない真似は止めたまえ」
「あ…」

途端にセブルスは狼狽し、「申し訳ありません」と一礼して再び席に着く。
勿論、前方のグリフィンドールの馬鹿者を睨み付けるのを忘れずに。



その夜、示し合わせたように密会場所に出かけてきた二人は、
「よくも恥を掻かせてくれたな!」
「何でマルフォイのゆーことなんか聞くんだよ!」
という、噛み合わない喧嘩で一晩を費やしたという。