15.カルシウムリアクターについて

(1)カルシウムリアクターとは
 カルシウムリアクターは、ミドリイシを含む珊瑚,石灰藻の成長に必要なカルシウム濃度と、KH(炭酸水素イオン濃度)を一定に保つための装置です。カルシウムリアクターは、ミドリイシの飼育には、必要な機器だと思います。カルシウムリアクターの出現によってミドリイシの飼育が容易になり、さらに成長させることができるようになったのではないかと思うほどです。
 カルシウムリアクターに入れたカルシウムメディア(CaCO3:炭酸カルシウム)に二酸化炭素(CO2)を添加した海水を通すことによって、
カルシウムイオン(Ca2+炭酸水素イオン(HCO3-を発生させます。

  CaCO3 + CO2 + H2O → 
Ca2+ + 2HCO3- 

             

             Marine Technical Concepts PRO CAL


(2)理想的なカルシウム濃度とKH
 カルシウムイオンは、ミドリイシが骨格を形成するために必要な成分です。
カルシウムイオンは380mg〜420mgの高濃度が、ミドリイシの成長に良いようです。また、炭酸水素イオンは、あまり聞き慣れない言葉ですが、KH(炭酸塩硬度,炭酸水素イオン濃度)と呼ばれています。炭酸水素イオンは、カルシウムイオンと同様にミドリイシが骨格を形成するのを助ける重要な成分です。ミドリイシが骨格を形成するのに、カルシウムイオンやストロンチウムイオンの必要性は、重視されていると思いますが、炭酸水素イオンが炭酸カルシウムイオンや炭酸ストロンチウムイオンとなって、ミドリイシの骨格形成を助けている働きを担っていることは軽視されやすいようです。天然海水のKHは、7〜8dKHのようですが、閉ざされた水槽内では内外から影響を受けやすく、急落する恐れがあるため、KHは、9〜12dKHと高めに保つ方が安心できるようです。なお、5dKH以下にKHが落ちると、ミドリイシの骨格形成の働きが鈍くなり、成長に影響を与えるようです。

(3)ミドリイシの成長に重要なKH
 理想とするカルシウム濃度とKHを上記に載せましたが、実際にミドリイシを飼育しながら、成長と色揚がりの様子を見ていると、
カルシウム濃度より、KHの方が重要です。つまり、カルシウム濃度が上記値より低くても、KHが高ければミドリイシの成長へそれほど影響がないと言うことです。カルシウム濃度が低くても、ミドリイシの変化は見られませんが、KHが低くなると、ポリプの出が悪くなり成長が止まるばかりか、さらには根元付近から白化することもあります。
 KHの値は安定させることも重要です。カルクワッサー,カルシウム添加剤,バッファ(KH上昇剤)を使うと、添加した直後にKHが大きく変動することになりますから、ミドリイシに少なからずともストレスを与えていると思います。このことからも
安定したKHを得ることができるカルシウムリアクターの設置が有効になります。

(4)カルシウムメディア
 カルシウムリアクターは、中に入れてるカルシウムメディアにも気配りが必要だと思います。多くはメディア自体珊瑚ですから、珊瑚の成長に必要な成分は、本来含まれいてるはずです。このため
リアクターを設置すればメディアから珊瑚に必要な成分はほとんど供給できるはずです。この意味からも、リアクターは重要です。ただし、消費の激しい成分(ヨウ素等)は、添加してやる必要があります。
 このメディアが、カルシウムの他微量元素のような良いモノだけ含まれているのであれば安心ですが、燐酸、珪酸のような良くない成分も含まれているようです。このため
何が溶け出すか判らないようなメディアは、避けた方が良いと思います。私は、カリブシーA.R.M.を使っています。燐酸,珪酸も少なく、カルシウムイオンは当然ですが、他メディアの50倍ものストロンチウムイオンが含まれていようです。(取説より)