14.キュアリングについて

 ライブロックに付着している生物で、本水槽に持ち込んではいけないモノを取り除く作業を
「キュアリング」と呼びます。淡水水槽で、新規の魚を導入する際に行うトリートメントみたいなものかな? 本水槽に入れてはいけない細菌・病原菌等を取り除く意味では同じかな。岩(ライブロック)にトリートメントを行うとは、海水の世界は変な世界です。ライブロック=生きた岩ですから...。
 キュアリングは、大きく分けて2つの段階があります。
 第1段階は、
本水槽に入れると珊瑚(サンゴ)や海水魚へ悪さをする「シャコ」「カニ」「ウニ」などを取り除く作業です。小さいモノでも水槽に入ってしまうと、成長して大きくなりますから、悪さする前に、この段階でできるだけ捕獲しましょう。(^^)本水槽に入ってから捕獲するのは大変ですから。
 第2段階は、
ライブロックに付着している生物で、海から引き上げてから、輸送中に死んでしまったものを取り除く作業です。さらには水槽環境では生きていけない弱い生物を取り除く作業です。
ここでは、この第2段階の作業について、以降に載せています。

 ライブロックを導入するタイミングとして、大きく分けると「立上げ時に新規導入する場合」と「不足分や入れ替えの時に追加する場合」があると思います。


(1)新規立上げ中の水槽にライブロックを新規導入する場合
 水槽を新規に立上げる時に購入したライブロックは、本水槽にはすぐに入れずに、
「キュアリング水槽」と呼ぶ別水槽を用意して、そこへ入れます。

 @良質なライブロック

 良質なライブロックであれば、届いた宅急便の箱を開けると、部屋中に磯の香りが漂うはずです。
ライブロックを1個ずつ取り出して、もし腐った臭いのする部分があれば、生物が死滅した部分ですから、PH(パワーヘッド)で水流を当てながら、その箇所を臭いがなくなるまでブラシッシングします。
 良質なライブロックであれば、そのまま本水槽へライブロックを入れます。新規立上げの場合、本水槽には何も生体がいない訳ですから、言い方を替えると、キュアリングの続きを本水槽で行うことになると思います。つまり、プロティンスキマーを回して、ライブロックから発生するアンモニア,亜硝酸が出たら水換えをして濾過環境が出来上がるまで待つことになります。

 A悪質なライブロック

 質の悪いライブロックは、ライブロック全体から腐った臭いがします。このようなライブロックは、腐った臭いのする部分をできるだけブラシで取り除いて、そのまま数日間キュアリング水槽で腐った臭いがなくなるまで、キュアリングを続けることになります。つまり予備プロティンスキマーを回して腐敗物を取り除きながら、数日間換水を繰り返します。この換水の頻度が生き残る生体数に影響します。予備のプロティンスキマーがない場合は、PHでエアレーションを行い、換水頻度を多くします。これによって、良質のライブロックに比べて、強い生物だけ生き残ったバランスの悪い生態系のライブロックになりますが、岩組みとしては使用できると思います。でも、できれば、質の悪いライブロックは、本水槽へ入れない方が賢明だと思います。


(2)既に立上がった水槽へライブロックを追加導入する場合
 既に珊瑚(サンゴ)や海水魚を飼育中の水槽に、キュアリングをしていないライブロックを持ち込んだ場合、ライブロックに付着している生物が、死滅腐敗してアンモニア→亜硝酸が発生します。このアンモニア,亜硝酸が本水槽の水質を悪化さます。すると本水槽内に既にあるライブロックからアンモニア,亜硝酸を誘発させる悪循環に陥ります。ついには本水槽全体の生体へ悪影響を与える結果になることがあります。このため、ライブロックを追加する時には、慎重にキュアリングを行う必要があると思います。特に小型水槽の場合、既存の濾過能力が小さいため、影響を受けやすいと思います。

 「キュアリング済みなのでキュアリング不要」と言う、ライブロックを聞きます。はたして本当にキュアリングが不要なのでしょうか。確かに上記の第1段階の「シャコ」「カニ」「ウニ」などを取り除くキュアリングは不要かと思います。しかし、第2段階のキュアリングは、どうでしょうか?ショップの水槽環境と自分の水槽環境は全く同じではないですから、輸送中/自分の水槽に入れてから死滅腐敗してしまう生物は、少なからずともいると思います。問題は、
そこで死滅する生物の多さと(多いとアンモニア,亜硝酸が大量に発生)と、そこで発生したアンモニア,亜硝酸を処理できる濾過能力が自分の水槽にあるかによって、本水槽に与える影響が違うと思います。キュアリング済みのライブロックをそのまま入れて、問題なかったというのは気づかないだけで、水槽内では様々な生体の死闘が繰り広げられていると思います。(付着した生物のいないデッドロックは問題外です。)
特に立上げ中の水槽へライブロックを追加する時は、濾過環境が出来ていないため注意が必要です。
 既に立上がった水槽へライブロックを追加する場合は、追加導入するライブロックの量によって、キュアリングの仕方が違うと思います。以降に私の考えていること載せます。

(3)私のキュアリング方法(参考)
 キュアリング方法ですが、この方法が一番良いというのやり方は、誰も言えないと思います。それは、ライブロックを導入しようとしている水槽の環境がみんな違うからです。ここで紹介するキュアリング方法は、私が行った方法です。参考になればと載せます。私の環境でのキュアリング方法ですから、もしご参考にされる方は、自分の責任で行って下さい。m(_ _)m

<大量のライブロックを導入する場合>

@キュアリング用の水槽を2個用意します。
A海水をキュアリング用水槽の水量の2倍以上用意します。
B水槽内にヒーター,水温計,パワーヘッドなどを付けます。水温を本水槽と同じようにします。パワーヘッドは、パイプを付けて水流にエアーが混じるようにします。
Cライブロックを一個ずつ取出して臭いを嗅いで、
「磯の香りのするモノ」「腐った臭いのするモノ」で、2つの水槽に分けて入れます。どちらとも判らないモノとために、3つ目の水槽があればさらに良いです。
Dそれぞれの水槽のライブロックから「シャコ」「カニ」「ウニ」などを取り除きます。
Eライブロックを一個ずつ手に取って、パワーヘッドの水流で汚れを洗います。取れない汚れは柔らかい歯ブラシで軽く磨きます。
F「磯の香りのするモノ」(良質)に分類したライブロックは、このまま本水槽へ入れます。この時点で「磯の香りのするモノ」の水槽は、空になります。

 ライブロックを追加した本水槽は、スキマーをオーバースキン気味にします。そして、しばらくアンモニア,亜硝酸をチェックして、検知されるようであれば水換えを行います。良質のライブロックの場合は、ここで作業は終了です。


もし、質の良くないライブロックを手にしてしまった場合は、以降の作業が必要になります。

G「腐った臭いのするモノ」に分類したライブロックは、固めの歯ブラシで臭いのする部分を取り除きます。臭いのなくなったモノは、先ほどの「磯の香りのするモノ」が入っていた水槽へ移します。
H歯ブラシで磨いても腐った臭いの消えないモノは、元の「腐った臭いのするモノ」に残します。
I2つの水槽の全換水を行います。
Jこのまま、パワーヘッドでエアレーションしながら数日様子(臭いを嗅ぐ)をみます。予備のスキマーがあれば投入してフル稼働されます。
Kこの時、こまめに水換えをする程、ライブロックに付着している生物が生き残る可能性が高くなります。
L今回本水槽へ先に入れたライブロックによる影響がないか、本水槽のアンモニア,亜硝酸をチェックして、問題がなければ、キュアリング用水槽のライブロックを本水槽へ移します。この場合、一度に大量に入れるのではなく、日を分けて入れた方が危険を分散することができます。
ライブロックを追加した本水槽は、スキマーをオーバースキン気味で、しばらくアンモニア,亜硝酸をチェックして、検知されるようであれば水換えを行います。そして、死滅腐敗が再発したライブロックのために、別水槽に海水を入れて用意しておけば安心です。

<少量のライブロックを追加する場合>
 ライブロックを1,2個導入する場合、本水槽の濾過,スキマーが対応してくれるはずなので、そのまま入れても良いと思います。ただし、小型水槽の場合は、既存の濾過能力が小さいですから、上記のキュアリング手順を踏んだほうが安心です。私の水槽は大きい方ですが、心配性の私は本水槽の飼育水入れたバケツにライブロックを入れて、パワーヘッドで1日以上水流を当てた後に、本水槽へ入れています。本水槽の水を使うことで、さらに用心しています。

<キュアリング済みのライブロックを追加する場合
 キュアリング済みのライブロックは、臭いに問題がなければ、そのまま水槽へ入れても良いと思います。
 私は、心配性なのでキュアリング済みのライブロックでも心配です。このため、キュアリング用の水槽に本水槽の海水を入れて、それを新しい人工海水で割って使います。例えば、本水槽の水量が、90Lでその1/3の30Lをキュアリング用水槽へ移します。本水槽へ30Lの新しい人工海水を追加すれば、本水槽は元の水量に戻ります。また、キュアリング用水槽の30Lへ10Lの新しい人工海水を追加すれば、本水槽と同じ水質になるはずです。(厳密には違いますが)この本水槽に近い水で、ライブロックを半日以上パワーヘッドで水流を回して様子をみます。気休め程度かも知れませんが、本水槽の水換えにもなって良いです。

 ライブロックを追加する時は、
一度に大量のライブロックを追加するよりも、少しずつ小分けして追加することを奨めます。何か問題があった時、追加したライブロックが少ない方が既存の濾過能力で余裕を持って対応してくれるからです。

 ライブロックは、信頼・実績のあるショップの良質なモノを選ぶのが一番だと思います。(私は、「沖縄水族館」のライブロックを使用しています。ショップリンクを参照)