魅惑の寝台列車の旅  「北斗星」

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北斗星とは?

青函トンネルを通って上野−札幌間を結ぶ寝台特急である。

 

A寝台個室ロイヤル(高級個室)、他に数種類の個室車両、 フリースペースのロビーカー、 フランス料理フルコース(予約が必要)も楽しめる食堂車等を連結した、豪華編成が自慢。

特にJR北海道の受け持つ1号、2号は、ほとんどが個室車両である。

今や、北海道なら飛行機ですぐに行ける。 それに対しこの「北斗星」は、上野−札幌間を16時間かけて走るのである。

時間と言う物差しで見れば、飛行機には全く勝負にならない北斗星。料金が安いわけでもない。

それでも、別の魅力があるのが北斗星なのだ。

 

上野から札幌へ下る「北斗星」は、

東京の喧噪を横目に、それをすり抜ける様に走り始め、 夕日に沈む那須の山々、 深夜の東北の森を背景にひたはしり、 世界一の青函トンネルを抜け、夜が明けると眼前に広がるのは北の大地、

 そして、闇の中を突っ走っていた前の夜とはうって変わって、さわやかな朝の風にあたりながら、内浦湾、太平洋の海を見ながら札幌に向かう魅力は、現代に失われかけたなにかがある!

 

しかし、寝台特急は年々衰退の傾向にあるのが現状で、

その寝台特急の魅力を少しでも伝える事が出来れば言うことないです。

 

以下は、北斗星で上野から札幌まで行く様子です。(思いっきりフィクションあり)

※ドーバー海峡のユーロトンネルは49.9km、それに対し青函トンネルは53.85km

↑上野で発車を待つ北斗星

ここは上野駅13番線。 地平ホームと名付けられた独特の構造のホームだ。

東北新幹線が出来る前は、ここから多くの東北方面の特急が発着していた。

 しかし現在は少数の寝台特急の他は通勤電車が発着するのみである。

 

そんな中を、札幌行きの北斗星がゆっくりホームに入線してきた。

青い車体に金の帯が、高級感を醸しだしている様である。

↑金色のエンブレムが目立つ 北斗星

乗る車両は、B寝台一人用個室SOLO

上段と下段で互い違いで組合わさった独特な構造が特徴だ。

料金は通常のB寝台と変わらないので人気があり、シーズン中はなかなか指定券が取れない。 設備はBGM、換気扇、個別制御のエアコン、鍵等である。

この個室は狭いようだけど、座ってしまえば気にならない。

 

←下段個室の方  上段個室のベッドの部分が張り出している。

通路はビジネスホテルの様な雰囲気→

 

16:50  夜行列車の時刻にはまだ早いが出発だ。

列車は静かに動きだし、滑るようにホームを離れた。

都会の喧噪を尻目に、通勤電車を軽やかに追い越し、北に向かって走り始めたのである。 個室寝台の中からは、それら全てが別世界の事の様である。

 この瞬間こそが、東京発の寝台列車の醍醐味なのだ。

普段は見飽きた通勤電車もこうして見ると新鮮である。

 

京浜東北線の電車を追い越すところ(車窓から)→

検札は出発するとすぐに来るようだ。 そして車内に客車のオルゴールの音が鳴り響き、車掌による、案内放送が始まる。 停車駅、経由路線や車内の設備の案内等を一通りすると終わった。 これから、東北本線、津軽線、海峡線、江差線、函館本線、室蘭本線、千歳線を辿って終点の札幌まで走り続けるのだ。 なにか遙か彼方まで走ると言う感じがしてくる。

列車は淡々とビルや住宅街に囲まれた中を、京浜東北線と併走しながら走ると、25分で大宮のホームに滑りこんだ。

ここから列車は東北方面に進路を向ける。 そして大宮を出ると景色は、今までとは一変し、少しずつ視界が開け田園風景に変わってくるのだ。 

次の停車駅は宇都宮。 途中で普通電車を脇によけさせながら快調に進んで行く。

列車は、午後5時前の出発だから、まだしばらく外は明るい。

北関東の青々とした田んぼの中を走っている間に少しずつ日は暮れ始めて来た。 

宇都宮を出てしばらくすると、完全に外は真っ暗になってしまった。列車は一定の心地よいリズムの音を立てながら走り続ける。 そしてポイントを渡る時にそのリズムは崩れ、また元に戻る。 北斗星は、上野−青森間の最高速度は110km/hであるが、100〜110の間を行ったり来たりの位の速度で走り続け、なかなか快適である。

 

せっかくだから、この列車に連結されている、ロビーカーにも行ってみよう。これはソファーや自動販売機等が設置された、誰でも利用出来るフリースペースだ。 今、良い時間なので結構混んでいる、と言うより、この列車のものは車両の半分しか無いから、狭いのだ。 あとでまた来るとしよう。

←北斗星1号、2号のロビーカー 半室だけ。(これは早朝に撮影)

そうこうしている間に列車は、郡山に到着し、またすぐに発車である。 その次の停車駅は福島である。

そして福島とその次の仙台の間で、パブタイムが開始されるはずだ。

パブタイムとは、本来の食堂車の営業後、おつまみや酒中心のメニューになって食堂車を予約無しで誰でも利用出来る時間で、

本来の営業のフランス料理や懐石料理は高いので、 実際は定食メニューもあるこのパブタイムを待っていたのだ。

そして、その案内放送が入り、行ってみる事にする。

食堂車は、レストランの作りだが、列車の場合、仮にどんな豪華な造りでも食堂車と言うのはなんか変だ。そんな事はどうでも良いのだが・・・

セットメニューは、ビーフシチューが3000円で、ハンバーグステーキが1800円、その他はおつまみ系の物が殆どであった。結局、ハンバーグステーキ1800円にケーキとコーヒーのセットで2500円であった。町のレストランに比べれば高い。でも、走っている列車の中で、レストランの食事が出来るのなら、そんなものであろう。

 なんだかんだ言っても、次々に飛び去る夜景を見ながらの食事は、普段は絶対味わえないもので、格別の気分だ。

北斗星の食堂車内→

自分の部屋に戻ったら寝るまで、ゆっくりと夜景でも見ているとしよう。個室の良い所は電気を消せば、普通に外が見られる事である。

 列車は一関、盛岡と停車し、北に向かって進んで行く。 その次は時刻表の上では函館まで停車しない。 そして、闇の中を突っ走ると表現がふさわしい。

 小さな駅が見えたと思ったら、それは一瞬で後ろに飛び去って行く。 そんな事が繰り返される。 明かりのついていない駅も多い。  そんな中、眩しいライトの光が見えたと思ったら、青に金帯の入った車体がすれ違う。 この「北斗星1号」と対をなす札幌発上野行きの「北斗星2号」である。 それは一瞬の事であった。

 

飛び去る夜景 B個室SOLOの上段個室からの写真→

夜の森の静寂を破るかの様に闇の中を突き進む北斗星。 一瞬の列車の通過の後は、森には不気味な程の静寂が戻るのであろう。 そして車窓には、次々に小さな駅、町が現れては闇に消えて行く。全てが眠っているようである。 この日常とは遙かに離れた感覚が、寝台特急に乗って良かったと感じる瞬間である。

 

この時間では、他の列車は殆ど走っていないので、むやみにスピードを落とす事はなく、速度を維持したまま走り続ける。そして市街地にある高架橋を渡り終えたら青森に到着だ(乗客の扱いはしない)。 現在午前2時。 ここで機関車の交換と共に進行方向が変わる。 函館でも進行方向が変わって元に戻るので、ずっと眠っていた人は気付かないはずだ。

青森を出て、津軽線に入ると本来はローカル線の為、さっきまでの速さとはうって変わってゆっくり走る。しかし高規格の海峡線に入るとまた速度は上がり、青函トンネルに突入。このトンネルの長さは53、85kmで今でも世界一である。 そして、青函トンネルを通過中に眠ってしまった。

目が覚めると既に明るくなっていて、大沼公園の付近を通過中であった。

昨夜の闇の東北本線を突っ走っていた時とは、一転して穏やかな光景である。もう北海道に渡ったのだ。海をトンネルで渡ると言う感覚は何か不思議な感じはするが、事実なのだ。

列車は大沼公園の付近をゆっくり走るのだった。

←大沼公園付近(車窓から)

その先は森、八雲、長万部と停車し、朝食の用意が出来たとの放送が入ったので行ってみる。

朝食は洋食、和食があり、共に1600円といい値段である。

しかし、北海道の雄大な景色を見ながらの朝食は気分が良い。

食事を終えれば、北斗星の旅もあと2時間弱。 上野からもう14時間も走って来たのである。 そのためか、車内には夜行列車特有の少しけだるい雰囲気が漂う。

上野や首都圏の喧噪から始まって、北関東の田園地帯、 闇の中の東北本線などを辿って来たと思うと実に感慨深い。 

 一晩居た個室寝台にもなにか、名残惜しいものを感じてしまう。

列車は、いよいよラストスパートとなる

 

道内を札幌に向けて走る北斗星→

そして苫小牧を出ればもう札幌は目の前である。 にわかに車内は慌ただしくなってくる・・・と言うのは決まり文句だが、個室なので少々分かりづらい。

それでも通路に出て、降りる準備をする人も出てきてその様子は分かるのである。 千歳空港に近い南千歳駅で降りる人も多い。 ここは、帯広、釧路方面の列車の乗り換え駅でもある。

 

千歳線を走る北斗星 ここまで来ると札幌も目の前だ→

南千歳駅を出ると、次の停車駅はいよいよ終点の札幌で、北斗星の旅もあと40分程である。

南千歳から札幌まで最後の走りである。もうすぐ札幌到着の案内放送が流れると、個室から通路に出て降りる準備をする人も出てくる。

そして、列車は札幌市内に入るとすぐに、スピードを落とし定刻通り到着。

東京から1200km以上走っても定刻通りなのは、世界一時間に正確な日本の鉄道ならではである。 さて、名残惜しいが次の目的地に向かうとしよう。

 

←札幌に到着したB個室SOLOの外観  不思議な窓配置が特徴