物欲番長「うずもれた名機・Dynabook SS 3410/3440」編
さて今回は、面白半分で手元に戻ってきたノートPC、DynabookのSS3410をまじめにレビューする。

<まずはスペック>
当時のB5としてはまずまずのスペックだった同機。
CPU Celeron 400MHz(3410)/PentiumV 500MHz(3440)
メモリー PC100 MicroDIMM 64MB/Max192MB
HDD 6GB(3410)/12GB(3440)
バッテリーの持ち時間が2時間と書いてあるが、最初から1時間ぐらいが限界。
はっきりいって、問題があるモバイルPCだろう。ただし重量は1.34キロと非常に軽かった。
そのほかこのクラスとしては珍しい11.3インチXGA液晶(通常は10.4インチ)を搭載しており、実に興味深い。

拡張性に関しては・・・正直つらいところがある。このモデルはUSB・IEEE1394(モデルによって)が各1ポート。モデムとLANも排他部分となり、厳しい。別売りのポートリプリケーターをつけてUSB・パラレル・シリアル・PS/2を拡張できるが、はっきり言って持ち運びには邪魔な存在だ。無理はないが、そのほかにACがあるので軽量性を犠牲にすべきにしないためには、せめてUSBだけでも2ポートあればと思う。
PCカードスロットも2スロットあり、B5ノートでこれは大きな点だ。
その代償としてパームレストが非常に弱い。液晶部分にはマグネシウムを使用しているものの、中の筐体がなんとプラスチックなので、実にもろい印象を受ける。それほど問題にならないが、持ち運びを加味するなら筐体のオールマグネシウムなどの加工が欲しかったと思われる。
キーボードはフルサイズを採用し、東芝キーボードと呼ばれる配列である。使い勝手は悪くはないが、だからっと言っていいともいえない。理由は簡単だ。キーボードを打った感覚が全くないのである。とにかく軽い。

<派手さにかけたその実力>
さて、これほどまでに洗練されたB5ノートでありながら、どこかインパクトにかける。全くといっていいほど存在感のないPCだ。VAIO505やSRに隠れているのであまり目立たないが、堅実なマシンに仕上がっている。
派手さはなくても、つくりは堅実というのは東芝ならではの(最近の東芝は派手になってきた)特色だろう。
しかしまあ、このPCが1999年中に発売されていれば、間違いなくB5業界の一翼となっていただけに(企業ユーザーはかなり受け入れられているが)残念でならない。
とにかく安定した作りは、Win98でも十分安定しており、メモリ関連の問題さえ除けば文句なしに強い。むちゃな使い方であってもある程度は問題なく使えてしまう。ハードを酷使するような使い方でも大丈夫だと思われる。実際フォトショップ5.0で10M程度のファイルを友人が処理していたことがあり、落ちる気配がなく、処理が遅いぐらいで対応できているのはこのハードに安定している要素があるからだろう。
ちなみにVAIO。落ちるときもしばしばあり、システムよりもBIOSといった東芝のハードウエア制御がしっかりしていることの証明となるはずである。

<なぜはじめから3480を発売しなかったのか?>
この後、2000夏モデルでSSシリーズはリニューアルされ、PenVの600MHz(Speedstep対応)を搭載する3480が発売された。たった3ヶ月でハード構成を変えてしまったのである。このマシン、外観やら液晶やらはまず変化なし。マザーボードをリニューアルし、既存の筐体に載せただけであるが、このハードが相当なパワーアップをしている。たった3ヶ月でこのハードの変更は実際にはいろいろなところからクレームがきたはないのだろうか?いくらなんでも設計が大きく変わるのが早すぎである。
とはいえ、価格うんぬんでいえばむしろ上がっているので、どうしてこちらを投入できなかったのかが不思議である。3月に発売されていればこのPCは脅威のB5となったはずである。それだけに非常に残念でならない。
なお、このスペックはのちにSONYなどのいわゆるB5ジャストサイズにも応用されており、非常にバランスの取れたスペックであることは間違いない。
ちなみに大きな点は、@SpeedStepに対応AS3 Savage\の採用Bメモリ容量の増加(最大256MB)となる。

<さて、肝心な点は>
B5として致命的な点は、その頃指摘されていたバッテリーの問題だった。どんなにがんばってもせいぜい1時間ぐらいなのだ。東芝のユーティリティーによってある程度は延ばせるが、せいぜい誤差程度の時間であるため、あまり効果はないように思える。どうしても延ばして使うためには別売りの大容量バッテリーを使う必要がある。が、下に引くシートタイプのアイテムであるため、厚さや重量が若干犠牲になる。しかしながら最大3時間となかなかの耐久能力を誇る。
やっぱり問題はそれを本体のみで実現できなかったことで、どうしても液晶の大きさがトレードオフになっているとしか考えられない。残念な点であるが、その分当時としての最大解像度XGAを手に入れたわけなのだからここは東芝の英断に目を見張るべきであろう。

<総論として、買いなの?>
現在はSSといえばSシリーズ(現行S6)であり、軽量B5ノートとしてなかなかの地位を誇っている。しかし3400番台はどうしてもハードの面で中途半端な部分がある。Sバッテリーに不安要素があり、どうしても携帯するのにACアダプターが必要な面はマイナスである。せめて重量とのトレードオフで、標準として大容量バッテリーを搭載すればパッケージとしてもよかったものであるとおもわれる。
しかしながら、このあたりのモデルは中古で約6万程度と、バッテリーを新調してもそれほどの出費ではないので、悪くはない。Win98SEあたりのセカンドマシンとして使う分には全く問題がないであろう。キーボードに妥協ができるのならば、選択肢的にはかなり有力になるのではないだろうか。対抗となるPCG-SRシリーズも価格的には悪くはないが、下位モデルでは解像度SVGAのためあまりお奨めできないと思われる。
東芝は、今回もS7においてユーザーフレンドリーな計らいをしており、なんとインターフェイスを強化してその分大容量バッテリー(付属)を付けて使ってくれとの考えを出した。やはりいろいろな問題はあっても、そういった逆の感覚でユーザーを満足させるすべを彼らは知っているのである。
まあ銀パソブームに追随するために作られたものであり、そういった部分でVAIOはエンターテイメントを重視しパナや東芝はこれを完全なビジネス向けにしてしまったのが明暗を分けてしまったのかもしれない。
結果として、このあとSR→SRXへとB5ジャストへ変更していくSONYのモバイル向け。これを12.1インチ液晶にしたうえで、ビジネスパフォーマンスを高めていった東芝のSS。結果的にどっちがいいかはなんともいえないが、この場合は、やはり入力デバイスや液晶の大きさ、そしてその安定したつくりを買って、東芝のSSが1歩上になるのではないか?
正直色々いじってみて今回は良くわかった。B5は持ち運びとバッテリー、そして入力デバイスの良さが必要である。おそらく今後はB5を買わないと思うけど・・・。