「まりも」をめぐる話題。

 さるところから、「(まりも)って 酋長の娘なんだよ」との耳寄りな情報を受けたので、緊急にその真意について調査しました。

簡略版

 昔、阿寒湖畔の酋長の娘セトナとそのしもべマニペが、いつしか恋仲となり、マニペがしもべなるが故に二人の恋ははかなくも破れ、セトナは遠く奏でるマニペの草笛に誘われて月淡き湖水に二人は丸木舟をあやつり沖に出てこの世に結ばれぬ運命をふるさとの湖底に結ぼうと身を投げたのです。
 このはげしくも清い恋に生きた二人のたましいが今も『マリモ』の姿になって永遠に生き、その後相愛の男女がマリモに祈ると不思議と幸せになると伝えられています。
http://www.marimonokai.com/marimon/densetsu.htm

基本版

 昔、阿寒湖の酋長ピリカメノコの娘セトナとその下僕マニベが、いつしか恋仲となりました。
 しかし、マニベが下僕であるために二人の恋ははかなくも破れ、セトナは他の男と結婚することになりました。
 婚礼の当夜セトナはマニベを忘れられず、遠くからマニベのかなでる美しい草笛に誘われて湖畔をさまよいでて月淡き湖水に二人は丸木舟をあやつり沖に出て、この世に結ばれぬ運命を故郷の湖底に結ぼうと身を投げたのです。
 酋長を始め村人もその深く清い二人の心を初めて知り二人の幸せを祈りました。その後、相愛の男女がまりもに祈ると不思議と幸せになるといわれています。
 この激しい恋のセトナとマニベの魂が今もまりもの姿になって永遠に生きていると伝えられているのです...。
http://www.cam.hi-ho.ne.jp/mmorita/marimo.htm

詳細版

 その昔、阿寒湖の西岸にモノッペという小さくて平和なコタンがありました。コタンを支配するシッパチ村長には、セトナと呼ばれる一人のピリカメノコがおりまして、下僕のマニペから勇ましい戦いの話や、熊や鹿を取る時の話を聞き、又、晴れた日には手をとって野山をかけまわったり、湖上に丸木舟を浮かべては静かに葦笛を聞いて毎日毎日を幸福に暮らしておりました。
 しかし、雄阿寒岳の頂上の雪も解け始め、高山植物も湖岸の木々も芽をふき、エゾザクラのつぼみもほころびかける春3月、シッパチ村長は美しく成長した娘、セトナを見ては、我老いたるを知り、娘の婿定めの日が近づいたことを考え、一人心を痛めておりました。
 やがて婿定めの日が来て定められたのは、副村長の次男、メカニというコタン一番の悪者でありました。セトナはこのメカニをこころよく思わず、かえって自分の家の下僕マニペに心を寄せていたのであります。
 マニペは、コタン一番の勇敢で立派な青年でした。
 これを知ったメカニは、ある日企みを起し、マニペを殺そうとして力及ばず逆に勇敢なマニペに殺されてしまったのでした。
 マニペは、メカニを殺した罪の恐ろしい事を懺悔して、遙か湖上にのがれ日頃たしなみの葦笛を、この世の別れにと心ゆくまで吹き鳴らしカムイチェップに導かれながら湖深く沈んで行きました。
 それから幾日かたって、マニペの死を知ったセトナは、一人岸辺にたたずんで、耐えられぬ悲しみに胸を痛め、寂しい思いにふける日が幾日も続きました。そうして、或る月の美しい夜、セトナの乗った丸木舟がカムイチェップに守られて沖へ沖へと出て行ったまま、遂にその美しい姿をモノッペのコタンには、見せなかったのです。
 阿寒おろしの吹きすさぶ夜、セトナのむせび泣く声にこだまして、マニペの悲しい葦笛の音が聞こえ、この世で添うことの出来なかった二人の美しい心が一つとなりマリモの姿になって今も漂っているのだと語り伝えられております。
http://www.akankisen.com/marimo.html

解説版

 阿寒湖畔には昔からアイヌ民族が住んでいました。ここではアイヌ民族のマリモの伝説について紹介します。
 まずマリモの伝説として「セトナとマニペの悲恋物語」が有名でしょう。
 簡単に筋を紹介すると、「昔、阿寒湖畔に集落がありました。そこの酋長の娘のセトナがいました。セトナはピリカメノコ(美しい娘)で若い男から人気がありました。セトナの婚約者に副酋長の息子が選ばれましたがセトナはこの男が嫌いでした。セトナがすきなのは下男のマニペでした。しかしこの恋は身分違いの恋愛で達成できるはずがありません。マニペは副酋長の息子にセトナと密会しているのを見つけられ襲われます。マニペは必死に防戦している途中誤って相手を殺してしまいます。罪にさいなまれたマニペは阿寒湖に入水します。そしてセトナも後を追うように入水し、二人の魂が美しいマリモになりました。」という内容です。
 この伝説は実は昔からのアイヌ民族のものではありません。この伝説は大正時代に朝日新聞の青木記者が創作したものです。おそらく観光客に受けるように作成したのでしょう。しかしこの伝説によってマリモが有名になったこともありますので一概にこの創作を事実の捻じ曲げとして非難するというのもいかがでしょう?
 さて実際のアイヌ民族の伝説はどのようなものでしょう?高橋真さんの著書を参考にすると
「=湖の妖怪=
 昔阿寒湖にはたくさんのペカンベ(菱の実)が実っていた。
 ところがトウコロカムイ(湖の神)は、どういうわけか、このペカンベの繁殖を非常に嫌った。とくにぺカンベが湖を汚すものだからカムイは、「おまえたちはこのきれいな湖におくわけにはいかない。さっさと出て行け」と怒ってしまった。
 ぺカンベたちは、「そんなに怒らず、どうかいつまでも阿寒湖に置いて下さい」としきりに頼んでも許してくれなかった。
 憤慨したぺカンベたちは「こんなにお願いしても聞き入れてくれないのなら…」と現在の標茶町塘路湖に引っ越していった。
 ぺカンベたちはこの引っ越しの時に阿寒湖のほとりの草をむしりとりくしゃくしゃに丸めて、湖めがけて投げ込み「藻になって湖を汚せ、汚せ」と呪いの言葉を残した。
 それが今のマリモで、アイヌはこれをトーラサンぺ(湖の妖怪)と呼んでいる。」
というものです。みなさんはどちらの伝説が好きでしょうか?
http://www.geocities.co.jp/NatureLand/7564/corner2/dennsetsu.html

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