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アイヌ語の数表現「400万」まであった   「最大1000」通説覆す−旭川・魚井さん
2004/05/12 14:30 北海道新聞

 【旭川】アイヌ語には千前後より大きな数を示す言葉はこれまで確認されていなかったが、十九世紀に、北海道のアイヌ民族とほぼ同じ言語が使われていた樺太(サハリン)のアイヌ語の辞典に四百万までの数を示す言葉が記載されているのを旭川市博物館嘱託職員の魚井一由さん(57)が見つけた。四百万などの大きな数の表現法にも規則性があることを確認し、数式化した。魚井さんは「北海道のアイヌ民族も交易などで、相当大きい数を使っていたのではないか」とみている。

 アイヌ語には、それぞれ一から五までを示す独立した数詞や、二倍を意味する接頭語などがあり、「十」「二十」などを示す複合語と組み合わせ、これらの足し算やかけ算などの形で、数を表す。これまで文献では千前後までの数を示す言葉しか確認されていなかった。

 三十年ほど前からアイヌ文化の研究を続けている魚井さんは、ロシアのアイヌ語研究者ドブロトゥボルスキー(一八三六−一八七四年)が樺太のアイヌ民族に取材し編さんした辞典の翻訳作業中、「二千」「二十万」「四十万」「二百万」などを示す語を見つけた。最も大きな数は「四百万」だった。

 さらに、「二十万」などの大きな数は、「二千」を示す語を核に、ほかの数をかけたり、足したりする形で表されていた。

 魚井さんは、これらの大きな数の表現法にも一定の規則性があることに気付き、数式化した。この方法だと、いくら大きな数でも表すことができるという。これらの研究結果は同博物館の報告書にまとめられた。

 魚井さんは「アイヌ民族は『交易の民』でもあり、体系化された数の表現が必要だった。四百万という数は、実際に使われていた可能性が高い」としている。

 魚井さんと共同で辞典の翻訳を進めている専修大道短大の広田徹教授(日本文学)は「アイヌ民族の数に関する固定概念に一石を投じる」とし、川村カ子(ね)トアイヌ記念館(旭川)の館長で、アイヌ語講師の川村兼一さんは「『アイヌ民族は数に弱かった』という偏見を覆す意味でもすばらしい研究だ」と評価している。


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