石巻・中田町レポート

「小川のメダカ」

旅で見たあの緑。文字通り「寝食忘れた」今回の旅行のさまざまな出来事を思い出すとき、いつも背景にはあの田んぼや、小さくなってしまったという森の緑が背景に広がっている。
記念館の映写室の椅子に座り、「小川のメダカ」の映像が流れ始めた瞬間、
「ああ、列車に揺られバスや車を乗り継いでここまできて、よかった。」と思った。

そのとき椅子に座っていたのは、これまでの、一人で思いをため込んでいる私ではなかった。
この旅行をしようと言ってくれた人たち、出発前から私たちの旅行を気遣ってくださった方たち、到着した私たちをまるでずっと知っているかのように暖かく迎えてくださった 方たちに出会えた嬉しさに満たされて、「あの場所」の真中に座っている私なのだった。

画面の中に満ちている春の空気、小川の流れ、水面の光のゆらぎ、顔を上げた少年の瞳。全身でみつめていた。少年のスケッチブックを風がめくった瞬間、 涙がこぼれた。
秋に舞い散る色づいた葉、しんと降り積もる雪、その中に表れた石ノ森先生の少年の絵の「線」を見ただけで涙が溢れてくる。
そうだ、これなんだ、私が本当に好きなものは。十年以上も放り出していた鉛筆を手に取って、私に再び
「描いてみたい!」と思わせたのは、何より 先生が描く人物のまとう「空気」だったのだから。

「小川のメダカ」を見る人は、きっと作品の、そして自分自身の根底にあるものを見るに違いないと思う。
あの場所でこの映像を是非、見てきてください。

「サイボーグ009 #0 PROLOGUE」(続く…)
top