001: 泡 沫


忘れないと思っていた

忘れるはずなどないと

失われた網膜に刻まれた笑顔
失われた鼓膜に残る吐息
失われた肌に残る体温

記憶までが禁じられることはない
思い出すことは罪ではないと
思っていた
ずっと

けれど

消えてゆく 瞳
消えてゆく ことば
消えてゆく 鼓動

閉じ込められた永い時は
打ち寄せる波のように
あなたを砂の城にした


私の海の底にあるものは

ただ暗闇と
泡沫の時の砂
                                 

                                 (2004年12月21日)

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