045: 摩天楼

オレの古い友達が死んだ。
まただ。
あの街に押し潰された奴がまた一人。
あのぴかぴかの二つの塔に潰されなくたって、
すえた匂いのするオレたちの街はこうして住む人間を潰してゆくの だ。

奴の顔を見た。
眼の周りは真っ黒で、頬はすっかりこけている。
悪い薬(ヤク)にやられたのだ。
自業自得と人は言うだろう。
だがオレは今夜、お前の魂を抱いてこの街の空を飛ぼう。
ここを出て行きたくて、でも出来なくて一時の夢を見て死んだお前 を、
心に抱いて飛ばせてやろう。

撃ち落とされたって構わない。
そうしたらオレは、涙の代わりに血でない血をお前のために流してや ろう。

そして墜落。
またあの汚れた街のアスファルトに叩きつけられて、
見上げる空には、ほら
憎らしいほどに光る、
摩天楼。

                                   (2005年1月4日)


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