029: 刹那的

女は死に、一人残った。
全身が武器
戦闘の日々、つかの間の安息。
その繰り返し。

仕事に就きまともな暮らしを始めようとも、それが
恒常的に続くとは思ったこともない。
すぐ次の戦闘に借り出されこの身体に仕込まれた武器で
敵を倒す。破壊し、焼きつくし血を流させる。
仲間たちとのつかの間の日々。大抵は遠い異国。
戻ればまた新しい仕事。簡単な朝食、ドライブインでの味気ない食事。
通りすがりの街での娼婦との情事。

今日もトラックを転がす。日が長くなった。
だがそろそろ夕暮れだ。空の色は美しい。思い出す。
彼女の瞳を、髪を、身体を。
運転席で感傷?馬鹿げているか。

仕事が引ける。寝るためだけに
家へ戻る。
シャワーを浴び、鏡を見ると武器の仕込まれた身体の不自然さを見る。
これが俺だ、今は。もう気にもしていない。
買う女には気味悪がられるが、適当な作り話で丸め込めばいい。

今夜も一人買った。
俺に抱かれて女は嬌声を上げる。
感触が珍しいのだろう。
幾千のものの命を奪った身体に抱かれているとは思いもせずに。
せいぜい楽しんでもらうとしよう。
目を閉じて俺は違う女を抱く。

明日はどうなるか。呼び出しを受けるか、いつものように仕事をするのか。

−ねえ、明日はどこへ行く?何を食べたい?
 この服似あうかしら。

空耳か。

俺は刹那を生き、破壊のためだけに在るこの身体で永遠を、死ぬ。


                                    (2004年6月15日)



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