011: 剃刀

俺はがらんとした部屋の中にいる。
そこには大量の紙切れが散らばっている。
俺は遊びを思いついた。
紙切れをくしゃりと手に取り高く投げ上げるのだ。
それらが降ってくる間、この左手のナイフで目茶目茶に切り刻む。
そんな他愛もない遊び。
ひらひら舞い落ちる紙切れを鋭い刃が切り刻んでゆく。
最初は白い鳩のようにふわりと舞ってきた紙切れが
だんだん細かくなって、次第にはほら、雪のようになってきた。

ジリジリ熱くなる俺の左手。
俺もジリジリしながら滅茶苦茶に手を振り回す。
ははは、これは愉快だ。
部屋の中で降ってくる白い紙切れの雪。
切ってやる、むちゃくちゃに、この手のナイフで、
鋭いナイフで。
ははは、粉になるほどバラバラになるがいい。
雪の中俺はナイフを振りかざしぐるぐると回り続ける。

笑って遊んでいるうちに形勢は逆転した、
紙切れの雪片が舞い散りながら俺に斬り付けて来るのだ。
痛い、痛い、バラバラと降ってくる紙の雪は
払いのけても払いのけても俺をめがけて振ってくる。
斬られる痛みにうずくまり懇願しても降り止まない。
俺がこれまで斬りつけた連中の痛みが復讐しているのか。
ならばこれでいいさ、気の済むまで斬りつけてくれ。
俺は仰向けになってもう抗うこともせずに
このがらんとした部屋の中で
白い紙の雪片と遊び続けていた。

                          (2004年6月20日)

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