082: 空白


彼女が腕の中で息絶えた時、鋭い氷柱が胸を射抜いた。
その氷柱は、痛みと悲しみとの熱でいつしか溶けていった。

そこに穴が開いた。

時々激しい嵐が起こりその穴をまた氷が塞ぐ。
胸に抱える氷の塊。その冷たく鋭い痛み。
ならばとがむしゃらに熱を求めて己の生を進め、氷を溶かしてみる。

また、空っぽ。

このままでいいのだと、自らに言い聞かせるまでもない。
いつ果てるとも知れないこの鋼鉄の命が続く限り、
胸に広がり続ける虚空とともに俺は在る。


                              (2004年7月27日)


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