all written by Hikari Amou 

   まどろみの中で、甘い口づけを交わした。
 柔らかく引き寄せて、ふわりと抱きしめて、口づけを。
 その瞬間、口の中に流れこむ甘ったるいとろりとした感触に、半分寝ている脳が動き出す。
 なんだろう。
 甘い。
 酷く甘い。
 ぱちりと目をあけて、ゆっくりと唇を離す。つかんだ指先になじんだ気配。
 眼前に、闇にも光る銀色。
「カカシさん?」
「……他に間違える相手でも?」
 緩やかに揶揄うようにくぐもった笑いが響く。
「まさか」
 揶揄に律儀に返答しながら、イルカは振り仰ぐこともせず手の覚えている枕元の照明を灯す。
 イルカのベッドの横から上半身だけ伸し掛かるようにしてキスを仕掛けてきていたカカシは、ゆったりと身を起こした。
 その姿は、まだ忍服のままだ。つんと外の空気が、鼻につく。
「イルカ先生に反射的にキスするような相手が他にいたりするってのも、それはそれでいいですけどね」
 カカシは変わらない顔で、小さく笑みを含んだ声音で、突き放すようなことを言う。
「はぁ。いいんですか?」
 含みをもったカカシの真意が見えなくて先を促す。
「なんかカッコイイじゃないですか」
 くすくすと笑うその表情からは、それ以上のなんの感情も読めない。
「カッコいいんですか?」
「ん、男前ですよ。そういうのもね」
 いつも以上にその考えがわからない。本気とも冗談ともつかない変わらない顔。
「……わかりませんね。ところで、今、おもどりですか?」
「ええ、日付変わっちゃいましたけど。チョコを届けにきました」
「チョコレート? ああ、バレンタインでしたね」
 口の中に流れ込んできたのは、チョコレートだったらしい。
 カカシの片手に小さな包みが握られている。
「昨日中に戻れるかなぁと思ったんですけどね、ちょっと時間かかっちゃいました」
「怪我はないですか?」
「大丈夫です。あ〜あせっかくセンセとゆっくりしようと思ってたのになぁ〜」
 ぺろりと唇を舐めて、カカシが笑う。
「急だったんですよね?」
「そ、上忍のくせにインフルエンザだって。ゴタゴタ話すの面倒だったんで行ってきちゃいました」
「お疲れさまです」
「はい、どーぞ」
「あ、ありがとうございます」
 小さな包みをぽんとイルカの手のひらにのせて、カカシは立ち上がる。
「いえね、バレンタインって女が男にチョコを送る日かと思ってたんですが、実は『愛』の日だってサクラが云うんでね、それなら俺もイルカ先生にあげなきゃ! と思いましてね〜」
「はぁ、それで、わざわざ?」
「そーです。じゃ、帰ります〜」
「え、もう帰られるんですか?」
 慌てて起き上がるイルカを、カカシはにこりと笑って片手で制した。
「遅いからいいですよ。起こしちゃってごめんね」
「いえ、何か召し上がっていきませんか? 残り物しかないですけど。今から帰っても大変でしょう?」
「ん〜、明日もイルカ先生は授業があるんでしょう?」
「それはそうですけど、かまいませんよ、泊まっていかれても」
「色々付き合ってもらってもいいと、そういうことですか?」
「え、いや、そういうつもりでは」
「わ〜かってますよ。そーゆーことで帰ります〜」
「は?」
「いや、だって泊まるならしたいんです〜。ダメなら生殺しで辛いので帰ります」
「あんたは……」
「今からだと、イルカセンセを確実に寝不足にしちゃうし。最初の予定ではもう4時間ぐらいはやくに戻ってくるつもりだったんですけどね〜」
 ぶつぶつ呟いて部屋を出て行こうとするカカシを、イルカは止めた。
「……寝不足ぐらいかまいませんよ」
「ほんとに?」
 引っかかってしまったかもしれない。
 それは、わかっていたけれど。
 それでも。
 いつも以上に真意を見せないカカシが気になって仕方なくて。
「このまま帰したら、俺が気になります」
「お人好しだよねぇ、イルカ先生」
 くすくす笑うカカシを、ゆっくりと抱きしめる。
「おかえりなさい。それぐらい云わせて下さいよ」

 END


 またしてもイルカカに見えないかもしれない……。私の中では、イルカカなんです(泣)。つーかこの後までちゃんと書けばもうちょっとイルカカなんでしょーけども、もたもたしていたら色々と忘れて抜けてしまったもので。どっちにしてもバレンタイン終わってからアップしてるので間抜けに変わりなし。5日くらいでおろします。

 

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