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サーチライト<エピローグ>
包帯から滲む血を見ても、イルカの傷は結構深いのだろう。
それを心配しながらも、肩を貸して里に帰る道中、カカシは幸せだった。
かつてないほど、近くにイルカがいる。
(役得、役得!)
肩を借りるといいながらも殆ど体重をかけてこないイルカを、引き寄せるようにして歩いている。触れ合う部分から伝わる暖かさが、知らずカカシの頬を緩ませる。
心配していたような気まずさもなく、同じ温度で会話しながら、この間と同じように速すぎない速度で歩く帰り道。
今日もなんとか日が変わる前には、戻れるだろう。
「あわせて頂いてすみません。アナタまで帰りが遅くなってしまいますね」
「そんなの全然気にしてないです。このままでも今日中には戻れるじゃないですか。むしろ俺としては、アナタと一緒にいられる時間が増えて嬉しいですよ」
上機嫌といってもいいぐらいだった。
「カカシ先生、変わっていらっしゃいますよね」
「はぁ。ま、よく云われますが」
「俺なんかのどこがいいんですか? 変わってますよ、アナタ」
心底わからないといった顔つきで、イルカが問いかけてくる。
「だって、好きなんです。結構前から云いたかったんですけどね。アナタとせっかく友達のようになれて、親しくしてもらっていたからそれが壊れたら嫌だな〜って不安でね。なかなか云えませんでした。アナタが変わらないでいてくれて、正直云って、ほっとしているんですよ。この間、俺が助けてもらった時、アナタがあんまりにも完璧だから、付け入る隙なんてないんだろうな〜って諦めかけていたんで」
「隙だらけじゃないですか、俺なんて」
「いやいや、なかなかガードも固そうですし」
「……なんの話をしてるんですか、もう」
「とりあえず、俺としては今までと同じように付き合ってもらえてれば、嬉しいので、引かないでもらえれば、って感じなんですが……」
イルカの真意がよくわからないので、ひとまず正直に話してみた。尤も、好きだと云ってしまえば、他にもう何も隠してることなどないのだが。
「カカシ先生、前に俺に好きなひとがいるかと聞いたことがあったでしょう?」
それに答えないまま、イルカは表情の読めない顔で話し出す。
「はぁ、ばればれでしたか?」
「いえ、俺の云った『気になってしまうひと』ってアナタのことですよ」
「へ?」
「おや、お忘れならいいんですが」
「ま、待って下さい。忘れてるわけないじゃないですか! アナタの言葉なら一言一句覚えてます!」
「それも困りますね。俺は言い損ないもできないんですか?」
「あ〜そんな、話逸らさないで下さいよ。な、なんですか、じゃあアナタ、あの頃から知ってた?」
「はぁ、まぁ、薄々とは……」
「な、」
なんてことだ。随分と、間抜けじゃないか。
「飲んだ帰りに手を繋いだ頃から、なんとなくそうかと思ってましたよ」
「は〜、そうでしたか」
なんだかどっと気が抜けた。
「向けられる、暖かな感情は、わかりますよ。どうしてだろうとずっと思っていました。あなたといると、暖かい気分になるんです、とても。どこか懐かしいような、」
穏やかな笑顔で、イルカは遠くへ視線を移す。
「たぶん、俺は無意識にも色々なところから、そんな感情を探そうとしていたのかもしれません。だから、アナタから向けられたものにも、気づいたんでしょうけれど。俺も、アナタが好きです」
ああ、同じように、思ってくれていたのだ。
カカシにとって、一番暖かなひとがくれた言葉に、感激していた。
涙が出るかと思うほどに、嬉しかった。
「カカシ先生?」
思わず足を止めてしまって、怪訝そうにイルカが至近から見つめてくる。
「あ、すみません。嬉しくて」
月明かりだけが頼りの、夜道。
「その、キスしてもいいですか?」
イルカは驚いたようにカカシの顔を見つめ、そしてふっと柔らかく笑った。
「いいですよ」
口布を降ろして、触れるだけの口づけを。
ふわりと、優しいイルカの一部が流れこんできたような錯覚。
唇の温度も、イルカの方が高い気がする。
なんだか胸がいっぱいになりながら、名残惜しく離れる。少しだけイルカの顔が赤いけれど。きっと、マスクのない自分の顔色も知られている。
でも、別れ際にすればよかった、とカカシは微かに後悔していた。
だって、帰り道はまだ長いのに。
またこのひとに肩を貸して歩くことを、綺麗に忘れていた。気恥ずかしい。
視線も合わせられないまま、カカシは口布を引き上げた。
「……か、帰りましょうか」
「……そうですね」
「あ、肩を」
「は、はい、すみません」
なんだか最初よりもぎくしゃくしながら、触れあう体温を意識しながら、言葉少なく歩き出す。
馬鹿みたいにどきどきしながら、それでもとても幸せだとカカシは思う。
これから暫くは、口づけの温度を思い出すのだろう。
イルカのそばにいられる約束のようなくちづけの。
そっと布越しに触れた唇は、いつもより少し温かいような気がした。
<ENDE>
たぶん自分の中のカカイル基本形。好みのイルカ先生を追求できたので、珍しくわりと満足している話。細部は粗だらけですけども(苦笑)
update 20070915
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