無題05


思い立ったが吉日。
菓子折を持って手塚家のドアを叩いた跡部は、その両親の歓待を受けた。

「国光はまだ帰ってないけれど、ゆっくりしていってね」

お茶を出しながら温雅な表情で告げた手塚の母親―――彩菜さんは、とても若かった。あの…なにとは言わないが、「あの」手塚の母親とは到底思えない。
ついでに言えば、父親の方も「あの」手塚の父親にしては、相当に若く見えた。
和室で緑茶を勧められ、待たせてすまないね、と言われて慌てて首を振る。

「いえ、突然押しかけたのはこちらですから。特に約束もしていないんです」

たまたま手塚の家の近くを通って、ついでだからと立ち寄ってみただけだ。菓子折だって目に付いた近場の店で買ったものだった。
手塚の父親は、国晴という名だ。…名前の「国」が被っているということは、この人は婿養子ではない。
正直、手塚のような息子を持った父親の気持ちというのには興味がある。
だいたい、国晴さんは見るからに人が良いのがわかる顔立ちをしているのだ。何故この両親から手塚のような無表情を極めた息子が育ったのか、とても興味深い。

その父親から、「国光とは同じ学校なのかな?」と聞かれて跡部は、少し目を見張った。
「ひょっとして、俺のこと、てづ…国光くんは何も話してません? 跡部というんですが」
「ああ、ごめん。国光は帰りも遅いし、話かけてもあまり会話が続かなくてね」
「……すごくわかります、それ」

テニス部界隈において、無愛想にかけては手塚の右に出る者はないくらいだが、家の中でもそれはやはり変わらないらしい。
しかし、本当に何も話していないとは…。正直、手塚を見誤っていた、と今更ながらに思う。

「俺は、氷帝テニス部の部長をしています。…していました。関東大会の一回戦で手塚君と試合をしたんです」
「へぇ。…国光が勝った、んだったかな?」
「いえ、俺が勝って」
「そうか。君、強いんだねぇ」
「それはいいんですけど、そのとき、手塚君の怪我を悪化させたのがオレです」
「……ああ、なるほど。君がその試合の相手なんだね」

国晴さんは感心したように頷いた。

「そうか。君には心配かけちゃったね。じゃあ今日は国光の様子を見に来てくれたのかい?」
「前に完治したとは聞いていましたので。まあ、ご自宅にご挨拶にでもと」
「わざわざありがとう」

どう反応して良いのか跡部は困ったが、これが大人の対応というものかも知れないと思い直した。

「…よかったら、手塚の話、しましょうか?」
「そうだね。是非聞きたいね。―――あの子が怪我をしたとき、治療に行くことになったとき、僕はね、なんて励ましてやればいいのかわからなくてねぇ。「がんばれ」、じゃないと思ったんだよ。だけど、うまく話せたものじゃなかった。国光のことをもっとわかりたいと思ったよ」
「俺も何を知っているわけでもないですけど。でも、俺から見た手塚のことなら」

その話題なら何時間でも話し続ける自信が跡部にはあった。










数時間後、自宅のリビングで夕飯を食べている氷帝テニス部部長の姿を見て、手塚は思わず持っていた通学鞄を床に落としたという。





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曰く「彼氏の家族に彼氏自慢」。
書いている最中はほのぼのを目指していたんですが、 そう言われてみればとんでもないラブっぷりな気がする…。
跡部は、一般家庭では借りてきた猫のように振る舞える子だと信じてます。





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無題06


三月の淡い空の色。焼き焦げたような黒い幹に薄紅色の花弁が散る。春。
卒業証書の入った革張りの円筒を掲げて、彼は晴れ晴れしく笑った。

「よぉ」

喋るな。勿体ない。
こんな絵のような光景は一生に一度しか見られないのに。
写真には映らない、卒業生という数年に一度きりの空気をまとい花の中に立つ。
子供のようで大人のような、面映ゆい表情。
けれど、絵の中にいるべき男は易々とこちらに近付いてきて、

「桜とお前って似合うな」
と単純なことを言う。

「無粋と風流は噛み合わないと思うが」
「ああ、お前自分が無粋だっていう自覚はあったのか」
「…本当に、お前は「口を開くと残念」な典型だな」
「お前だって「近付いてみるとがっかり」な典型じゃねえか。なんだよ開口一番その挨拶は」
「俺は無粋なので仕方がない」
「そこで開き直るな!」

跡部は卒業証書の筒で俺の頭を叩いてみせた。
なんてことだ、絵の中の大事な部品でそんなことを。

「…何か言いたいことでも?」
「そうだな…。お前は見た目だけ…いや本当に黙っていれば見目麗しいから、今日ばかりは黙って俺の横を歩いていてくれないか?」
「川に落ちろ。そしておぼれろ」

土手沿いの桜並木をじゃれながら歩く。
卒業式の終わった午後はいつも特別な空気がある。
人生にぽっかりとあいた空白の時間。それを跡部と過ごせることが嬉しい。
欲を言えば、もう少し甘い雰囲気があったのなら言うことはないのだが。

「その願望を自分でぶち壊したくせにな…」
「まあいいじゃないか。ほら、跡部。第二ボタンをやろう」
「あぁ、そうか。お前のとこ学ランだからな」

手のひらに「青學」と書かれた安っぽい金色の釦を受け取り、跡部はそれを日にかざした。
そうじっと見ても単なる安い釦には違いないのだが、彼は宝石の鑑定でもするかのように
手の中でくるくると回して、形状を確かめる。

「よく死守したな、生徒会長で部長サマが」
「近所の新入生に制服を譲るからダメだと言い張ったからな」
「…微っ妙」

下手なんだか巧いんだかわからない嘘だな、と呟いてから、彼はそれをポケットに収めた。

「…なんだその手は」
「交換で、お前の第二ボタンをくれてもいいんじゃないか?」
「ブレザーからボタン取ったらみっともないだろ?」
「じゃあ上着ごとでいい」
「マジか」

もちろん俺は本気だ。
困惑しつつも物惜しみしない性格の跡部は、ばさっと上着を脱いで俺の頭上から振り下ろした。

「くれてやるけど、三年以内に捨てろよ」
「どういう意味だ」
「…お前は二十年後とかにタンスからコレを持ち出してきて、あの頃は良かったなあと言い出しそうだからだ」
「…それは楽しそうだな」

頂き物をたたみつつ、シャツにネクタイという春らしい装いになった跡部に後ろから声を掛ける。


「跡部。さっき、後輩にあげるからと第二ボタンを断ったと言ったが、あれは嘘なんだ」
「ん?」
「―――三年間の記念品だから、好きな人に渡したい。そういうものなんだろう?」

だからみんなにもそう言った。
と、冬服のブレザーを後生大事に抱えると、跡部は困惑の表情で振り返った。

「それって告白に聞こえるぜ?」
「当然だな。それ以外に聞こえては俺が困る」


隣を歩くようになって半年。初めてそれを明確に言葉にした。
跡部は一度なにか言いかけて、再び口を閉じた。
内側から言葉を探すように、視線が宙をさまよう。それを俺は見ている。
花びらは、先ほどと変わらない静寂を響かせながら、跡部の髪の上に舞い落ちた。

川辺の桜並木の終着点に付く頃には、その口から答えが聞けるだろうか。




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卒業式のあとって普通なにをするんでしょうか?
クラスで友達の家(=民宿)に集まったような思い出がありますが、田舎だからカラオケとかなかった。
ただ話してただけのようなぐだぐだの時間でした。
でも爽やかだったなあと。

その特別な時間を相手のために消費してしまうのだから、これは甘い話なのです。





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『詩吟』


詩を詠む、と言ったときに盛大に笑われた記憶がある。
そうかそうか、近頃はお前にような奴でも詩を詠むのか、と彼は異国の色をした髪をかき乱しながら、腹をよじって笑った。
そのように人を笑うのならさぞや詩才があるのだろうと片腹を突けば、男は即座に二、三の和歌を吟じてみせた。

中でも最後のものは韻の踏みようがなかなかに耳に応えるものがあり、
「よいものを知っている。詠み人は誰か」と問うと
かの人は途端に、ばつの悪い表情を作って「自分だ。それ、そういう問いではなかったか」と答えた。
なるほど、旧態と化した古今の型に囚われすぎず自在に言葉をつなげる様は、人の性をよくあらわしている。
また、奔放な印象にもかかわらずことばの選び方に品の良さが滲んでおり、ああつまりこの男は育ちがよいのだ、と思わせるには十分な秀作であった。

さきほどまでの腹立たしさもなくなり、ひとしきり褒めて最後に書き写させてもらえるだろうかと頼めば
彼はさて困った、と顔をしかめる。
そのようなつもりで詠んだのではない。もともと古い作だから気に入っているわけではない、といくつも断りを並べた上で
そうだ、主のうたを聞かせてみよ、と慌ててこちらに水を向けた。

ひえも喰ったこともなかろう男に自分のいうことがわかろうかと思ったが、是非にというので、そのまま一昨日に作った物を吟じた。
百姓のことなど如何ほどに伝わるのかと訝しんでいたが、彼はなるほど、なるほど、と何度もうなずき先を促す。
「どうしてなかなか、面白いことを言う」と、
男は腕組みをしながらしきりに感心したふうだった。
「面白いものを詠んだつもりはない。労苦をいったはずだ」と苦言を呈せば、男はいつもの明朗な笑いを浴びせかけ
「なんだ。詩とはそういうものではないか。見えておらぬものを見せるのが名文というと聴くぞ」と言う。

云うことは尤もだ。
物を書いて喰っていきたいと思うのなら、そうでなくてはならぬ。文で人の心に共感を生まねばならぬ。
しかし、このように濁した世間に身を置いて、世間に合わせるということはその本質ではないと感ずる。
跡部は「好し」と言ったが、己の書きものが衆の心を打つとは思えぬ。衆の心に沿うとも思えぬ。
そのように思う己が、文字を連ねることで銭をもらおうなどと考えること自体が間違っているのである。
だが、何を正せば間違わぬ道に入れるかは、霧中の道を探すかの如く、手探りでさえ難しい。

跡部は「お前は官に向いている」というが、自分は民でありたいと常に思ってきた。
彼の奔放に生きる様をいかばかり羨ましく思ったか知れぬ。
しかし、かの者はこちらの葛藤など推し量りもせず、医学やら法学を勧めてくるのである。
己が目に、それらは自由に駆け巡る足に楔を打ち込むような重苦しい学問としか映らぬ。

豪放な跡部がそれを勧めるということに、何の意図があるのかは未だ計りかねた。
しかれども、それが自分に向いているというのが理由であるならば、願い下げの一言に尽きる。

己は物書きに向いてはいないだろう。其れを志すことさえ身の程をわきまえぬことやも知れぬ。
だが、諦めようと思ったことはひとたびとてない。
足掻いて手が届かなくとも、それに成ろうとすることだけが手塚国光という個人の自由の形そのものなのかも知れなかった。





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………えー。
タカムラさんが色々設定くれたのになくしてしまいました。
跡部は名家の次男(混血)で洋装が似合う男。大学卒業後何もせずにふらふらしてます。
家は苦手。
手塚は農民出身で家族と折り合いが悪くて、今は住み込みの書生。
跡部とは特別仲がいいわけでもなくぐだぐだやってます。


「時代物なら明治だよね!」
「うん明治。背景的にもここしかないでしょう!」

かつてそんな会話をしました。






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無題07



西遼王の即位四十周年式典。よくもまぁ王などという因果な商売を四十年も続けられたものだと感心しながら、手塚は周囲の列席者の歓談に耳を澄ませていた。
そのとき、

「よぉ」

懐かしい声を聞いた、そう思って振り向くと黒く長い髪を垂らした見知らぬ男がそこにいた。

「…お前」
「久しぶりだな。えーと?」
「斉嘉班、卿士だ」
「またごたいそうな肩書き付けてきたな、卿士だと?」
「そちらは?」
「汀濫。一介の地方役人だよ」
「華やかな地方官僚があったものだ」
「わざわざ髪まで染めてきたんだぜ」
「黒くしたからといって、存在まで地味にできるわけじゃない。俺が見間違えるものか」

互いに目立ってはいけない身だ。それとなく壁に背を向けて立ち、視線は交わさない。正面を向いたまま軽く雑談をした。
跡部と会うのは何年来になるか、司学院を卒業し、互いに祖国へ戻ってから初めてのことだった。この時勢だ。敵国人同士、行き来はおろか文のやりとりすらない。

「てめーがここに潜り込んでるってことは、東の情報もガセじゃないってことか」
「それはこちらの台詞だな。最初はまゆつばと思ったが、ここに来てみて確信したよ。遼は」
長くない、と手塚は音を出さずに伝えた。
「本国はどう動くかねぇ」
「それは下っ端の考える仕事じゃないな。…『汀氏、よければ少し時間をもらえないだろうか?』」
「『ええ、斉卿士。何かわたくしに御用件でしょうか?』」

形式通りの受け答えをし、二名は静かに式典の場を去る。夜の庭園は明かりもなく、青い空気が緩やかに流れていた。
「本当に、久しぶりだ」
手塚は初めて跡部とまともに視線を交わした。髪を染めても、姿を変えても、蒼玉と見まごうかの如く強くきらめく瞳だけは隠せない。
「そうだな。で、わざわざ連れ出したからにはそれ相応の情報見返りがもらえるんだろうなあ?」
「そんなものはない」
「…てめぇ」
「ただ、懐かしいと思ったから」
「感傷に浸るつもりはねぇよ。俺は今を生きてんだ」
「だったら今の話でも構わない。跡部、俺はお前に言ったことを取り消す気はないぞ」
「……やめろ。それが何になる」

苦痛を孕んで顔を逸らした跡部に、そっと唇を寄せる。

「意味なんてない。納得のいく理由も合理性も、必要ない」
「リスクが高すぎるんだよ」
「そんなもので量れはしない。…そうだろう?」


跡部からの返事はなかった。これは学生時代から変わらなかったことだ。
彼は手塚の問いにも要求にも応えない。ただ、拒否をしないだけ。
しかし、それは明確な回答であると手塚は思っている。
…本当は、跡部のYesという答さえあれば、何もかも捨てていけるのだが。


もう一度、と手塚はねだり、跡部はだまって瞳を閉じた。

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というか、これ初出な気がする…。

名前は西洋風を考えていたんですが、漢字に変えました。
本名手塚なのにカタカナは流石に…。
役職は適当。小国乱立、春秋戦国よりかは五胡十六国なイメージ。

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『喧嘩』


部屋のドアを開けると、波打つ青みがかった黒髪。陰気な後ろ姿が目に入る。
跡部は大きく溜息をつき、幾分怒りをにじませながら、他校生の友人に声を掛けた。

「…幸村、お前いい加減にしろよ」



 * * *


果たして自分と幸村は友人なのかどうか。それは少し判断が難しい。
幸村は立海の部長だが、別に親しくなろうと思って近付いたわけではない。
というか、跡部から幸村に近付いた覚えはない。

氷帝の前部長を倒した二年にして青学の新部長、要するに手塚が気になって話しかけたり練習に誘ったりしていたらもれなく真田と幸村が付いてきた、という話だ。
手塚は真田と幼なじみらしい。畢竟、幸村とも。

真田は立海の副部長で幸村とはご近所付き合いすらある、就学前からの仲なのだそうだ。
手塚に興味があっただけなのに、手塚をテニスに誘えば結果として合計四人になる。
真田は冗談が通じなくて小うるさいし(会った第一声は、「なんだ跡部その服装は!」だ)、幸村は得体が知れない笑顔をいつも浮かべていて、しかもテニスが凄まじく、少し怖い。

一方手塚は生真面目で会話だってそこそこ弾むし、思ったより人当たりも悪くない。
なのに四人。
なんでこいつ残り二人を連れてくるんだろう俺と二人じゃイヤなんだろうか、と一時期悩んだが、手塚も「すまない。どうも幸村には弱くて…」と遠い目をしたので、
こいつも意外と押しに弱い人間なのかな、と少し微笑ましく思う。


その幸村(神奈川在住)が、週の半ば水曜日に、本日部活が休みの跡部よりも早く、部屋にいるというのはどういう事か。
「お前、今日も休んだのか。学校」
「…悪いかな?」

悪いに決まってるだろ! と叫びたいところだが、幸村から漂ってくる瘴気は日に日に濃くなってきていてさしもの跡部も遠慮がちになる。
日曜の夜、今にも倒れそうな青白い顔で「しばらく泊めてくれないかな…」とやって来た幸村は、そのまま跡部の部屋で引きこもりを続けている。

「家族が心配するだろ」
「…うちはわりと野放図な子育てだからね」
「妹だって心配してるだろ」
「だいじょうぶ。出がけに「修行に行ってくる」って言っておいたから」

それを妹に信じさせる兄は一体どういう存在なんだ、と一人っ子の跡部は非常に疑問に思う。
それにしても、一体何があったのか。
75インチの大画面を睨みながらひたすらモンスターを撲殺し続けている幸村(もうじきレベルMAX)にそれを尋ねるには、跡部といえど非常に勇気が要った。

「―――真田も心ぱ」
俺の前でその名前を出すな

ビンゴ。
やはり真田絡みか。と、なれば納得である。
幸村の付き合いは短いが、幸村という刀は、真田に相対するときだけかなり鋭い。
手塚を含め四人で遊んでいるときに、ばっさりと切って捨てられる真田を何回も見てきたからよくわかる。

それにしても、真田発で何があったか知らないが、学校はともかく部活を休むなんてただことじゃない。
「あの野郎…」と突然呟く幸村もただごとではないし、「死にたい…」と歯軋りする幸村もただごとではない。

…ただごとじゃないというのはどういう事だろう。
幸村の落ち込みよう(怒りよう?)は尋常ではない。
ここまでこいつを豹変させることが出来るのも真田だけだな、ともはや他人事のように思う。

跡部の願いはただ一つ。
このブラックホールを自分の部屋から撤去することだ。
その為にはどんな手段をも辞さない。


…というわけで、跡部は携帯を持って部屋を出た。
真田を直接呼び出すと、幸村の真田レーダーにひっかかる危険があったため、敢えて手塚の電話番号を探す。

案の定、手塚経由で真田はすぐに呼び出せた。
手塚の言葉を借りても「真田は半狂乱」とのことだから、幸村学校欠席三日は相当堪えたらしい。

気は進まないが、異物撤去のためだ。
自分の部屋をブラックホールとその犠牲者に明け渡し、手塚と庭で現状回復を祈る。


「―――手塚、お前何か知ってるんだろ」
「…知っていると言えば知っているが…聞きたいか?」
「決まってるだろ。俺はアレを三日も抱えてたんだぞ?」
「まぁ確かにな…。俺だったら家に上げなかったが。そろそろ来るかな、と思っていたし」

幼なじみ特有の勘でもあるのか、手塚は初めから承知していたという風に息を吐く。
少し嫌な風を感じながら、跡部は視線を流し先を促す。

「…告白したそうだ。ついでにキスを」
「―――――――真田が?」
「まあ、時間の問題だと思っていたが」

幼なじみは冷静に語る。
その冷静さに感化されて、跡部も溜息をつくのみで終わった。

「まあ、そりゃ、確かに。あそこまで怒ることではないよな。世界中を呪ってるって顔だったぞ」
「幸村にしてみれば、事実よりも「真田にしてやられた」ことの方が何より重要だからな」
「ああ、ありそうな話」

少し笑う。
これで片付けばいい、と窓の中に改めて祈りを注ぎながら、息を吐いた。

「ところで、跡部。お前はさっき「そんなに怒ることではない」と言ったが、本当にそう思うか?」
「あー? まあ、いいんじゃねえ? 俺は何でもいい。つうか、いっそのこともう付き合っちまえば平和が訪れるんじゃねえ?」
「…そうか」

手塚は軽く頷くと、三日前の真田と同じ事をした。




「―――――『怒らない』と言っただろう…っ」
「それとこれとは話が別だ…!」

暴風雨から一次撤退した真田が目にしたものは、顎を押さえてうずくまる手塚と、涙目の跡部の姿だった。





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幸村>プライド高め
真田>そこそこ甲斐性あり
手塚>ちょっと賢い
跡部>やや常識人

今回の配役はこんな感じで!