『無言は肯定と知る』
彼女いんの?
いや
彼氏は?
男にはいないものだろう
じゃあ俺がなってやってもいいぜ?
たっぷり十秒ほど思考回路の停止。
くそ機を逃した。
いまから遠慮すると言っても、そーゆーことは五秒以内に言えと偉ぶられるだけなので敢えて口を閉ざす。
無言で跡部を見つめ返すと、跡部の方こそ引っ込みが付かなくなったようだった。
奴は軽く舌打ちして、OK?と聞く。
それをさらに沈黙でやり過ごすと、跡部は閉口した。
そうかよ、と。
いかにも腹を立てた風に、人差し指で顎の下を弾いた。
じゃあ明日はデェトで。
よくもまぁ、負けず嫌いなことだ。
そう思いつつ、約束の場所に顔を出す。
跡部もいた。
律儀だな、と彼は言うが、その台詞をそのまま返してやりたいところだ。
ぶらぶらと、映画を見て本屋を巡って駅の前で。
氷帝テニス部の連中に見咎められる。
まあ、そういうこともあるだろうと思った。
さてどうするんだ?
なにしてんの?
なんだっていいだろ。
立ち話が始まって、少しだけ心が躍った。
…ほんの少しだが、期待している。
手塚とどーゆー関係?
きた。
くると思った当然の質問。
跡部は不愉快そうにこちらを見た。
対して自分は笑っていたと思う。小馬鹿にするように。…実際そうなのだからきっとそう見えたはずだ。
さてどうするんだ跡部
一瞥の後、跡部は口を開いた。
瞬きするだけの間が空いた。
迷ったな。
それが感想。
「恋人」
あぁ言うのか。
偉そうに、なんでもないように言ってのけた。
墓穴を掘り通すとは、ある意味立派なことだ。
少しだけ迷っただろう?
後でそう言ってやろう。きっととても不快な顔をするに違いない。それが愉快だ。
―――それはそうと、明日氷帝でどんな噂が立とうが俺は知らないからな。