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□ ._._._.NO.41 ._._._._.1 + 1 = 1._._._._._.2000 5 18._._._□



□差異哲学を系統的にカリキュラムするとしたら 今回とり上げると
ころから始めることでしょう 『差異と反復』の翻訳者はこう書いてい
ます

 『差異と反復』は、読者による謎解きを要請する書物である。
 ドゥルーズによれば、解がすでに出ている問題を解くことや、答え
 をそのまま受け入れることは、思考を停止させることであって、反
 対に、困惑して問いを発し、正しく問題を立てることだけが、真の
 意味で思考を目覚めさせ、思考を創造的な遊びに導くことなのであ
 る。 <p523>「解説にかえて」財津 理

プラトーに書かれた内容や解らしきものを そのまま受け入れる読者
は皆無でしょう 解が困惑を呼び むしろ問いとなって漂っているこ
とだと思います 戯れ や 遊び が差異を生む原泉だからです

  ..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..

□学校で行われる試験問題は大方思考を停止させる類のものでしかあ
りません 中学生の当時の私が何故学習というものにシラケテしまっ
たのか 今ではその答えを言い当てることは可能です かつての中国
で 官僚が反乱を起こして困っていた時代 科挙の試験を暗記問題に
すり変えたら反乱も納まったという話を読んだことがあります 出典
を調べましたが残念ながら解りませんでした 日本の官僚もこの類い
であろうことはたやすく想像出来ることです

  一切の同一性は、差異と反復の遊びとしての或るいっそう深い遊
 びによって、見せかけられとものでしかなく、まるで光学的な「効
 果」のように生産されたものでしかないのだ。わたしたちは、それ
 自身における差異を、そして<異なるもの>と<異なるもの>との関係
 を、表象=再現前化の諸形式から独立に思考したい。
 <p14>  『差異と反復』はじめに

すべては異別性から出発します 同一性は見せかけに過ぎません

  差異は、本性上、反復と、たとえどれほど極限的な類似であろう
 と、その類似とのあいだにある。 <p19>

反復を差異を生む源泉として肯定的に取り上げていることに注意して
下さい 感覚されるものとしての類似も 差異を含むものとして取り
扱っています 似像(コピー)に見える二世タレントも形態模写も実は
<差異>があるから面白いという分けです


  ..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..



  一般性は、類似の質的レヴェルと等価の量的レヴェルの、二つの
 大きなレヴェルを提示している。もろもろの循環と、もろもろの等
 しさとが、その象徴である。だが、いずれにせよ、一般性は、どの
 項も他の項と交換可能であり、他の項に置換しうるという視点を表
 現している。もろもろの個別的なものの交換ないし置換が、一般性
 に対応するわたしたちの行動の定義である。
 これとは逆に、わたしたちには、反復は代理されえない〔かけがえ
 のない〕ものに対してのみ必然的で根拠のある行動になるというこ
 とがよくわかる。行動としての、かつ視点としての反復は、交換不
 可能な、置換不可能な或る特異性に関わる。反映、反響、分身、魂
 は、類似ないし等価の領域には属していない。そして一卵性双生児
 といえども、互いに置換されえないように、自分の魂を交換しあう
 ことはできないのである。交換が一般性の指標だとすれば、盗みと
 贈与が反復の指標である。したがって、反復と一般性とのあいだに
 は、経済的な差異があることになる。 <p19>

前半は同一性を一般性と置き換えて行動のレヴェルで取り上げていま
す キーワードは<交換>です 置換 代理 代議 代弁 なども……問い
と答えがそのまま等価交換出来えると考えて学校ではテストが実施さ
れています テストでは枕草子の作者は清少納言で正解でしょう し
かし清少納言と枕草子の作者は置き換えられません 彼女は他にも実
績を残しています また厳密には枕草子の作者は複数でしょう 書き
写している間に改変が何度かあったことでしょうから
 <反復>は<差異>と読み換えた方がわかりやすいでしょう この置き
換えはルール違反では有りません 反復の間に差異があり 差異の間
に反復があるからです 本質的なものだからです
反映、反響、分身、魂 のうち 魂が置き換えられないことは当然と
して 反映、反響、分身 はコピーであり同じようなものではないか
と思われるでしょう しかしすでに置き換えられたものはどんなに似
ていようと同じではないということです 反復が必然的に<差異>を生
んでしまうから……キーワードは<盗み>と<贈与>です
1+1=1 これが盗みです 1=1+1 これが贈与です

  わたしたちは、一個の芸術作品を概念なき特異性として反復する
 のであって、一つの詩が暗誦され〔心で覚えられ〕なければならな
 いということは、偶然ではないのだ。頭脳は交換の器官であるが、
 心は、反復を愛する器官である。……
  ひとつは、諸科学の言語であって、等号に支配され、どの項〔辞
 項〕も他の項によって代理されうるものである。他は、抒情的な言
 語であって、どの項も代理されえず、ただ反復されることしか可能
 でないものである。 <p20>

概念の一般性と 特異性で成り立っている芸術作品とを対比させて論
及しています 詩=抒情的な言語を反復することによってまた新たな
発見<差異>が生産されるという分けです

  祝祭というものには、「再開不可能」なものを反復するという明
 白なパラドックス以外のいかなるパラドックスもない。 <p20>

祝祭は以前にフランス革命記念日 反復=累乗の力で説明しました

..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…

□ここまで書いてきて 学校でこのような内容がカリキュラムに取り
入れられる時代が来るのだろうか と考えてみますと 絶望的なこと
に思えてきます 大学受験制度を完璧に全廃すれば別でしょうが そ
うすると統制がなくなり学校が不用ですらあることが暴露されてしま
うでしょうから……情報化の社会では 学校内で流通しているの情報
(知識の質)はむしろ時代遅れでしかなく その存在理由はほとんどな
いと私は考えております 教師よりもむしろ生徒の方がこのような内
容をたやすく理解してくれるだろうことは確実でしょう ゲリラ的な
別の知の流れとして学内外を走り始めたら面白いだろうとは予想でき
ますし またほんの少しですが期待も出来ます(授業は何故面白くな
いのかについての証明が含まれていますし……面白いと感じている人
にはもちろん不用ですが……)
□個人レヴェルでも受験校のランクを落とせば 学校で抱えている問
題や矛盾のほとんどは解決できるように思います 私自身がそうした
結果 かなり自身の勉強ができましたし 授業でやらないことを見つ
け出すこと 学校の外部の知識を得ること むしろそちらの知識の方
が等価性で成り立つ学習より 生きていましたから……今も良い経験
として(知識として)残っています
□<差異>哲学は社会科の一分野の話では決して無く すべての教科の
基底を転覆させる力を内蔵しています テキストも全教科すべての書
き換えを要求するでしょう つまり今の学校制度にとっては もっと
もその存在すら隠蔽したいだろう<知の枠組み>なのです
つづきます


..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…

 次回は 失敗するための実験 を予定しています

 (単なる風邪だと思いますが もし咳が止まらなかった場合次の次
  の週に変更になるかもしれません 御了承を)




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□ ._._._.NO.42 ._._._.失敗するための実験._._.2000 6 01_._._□



□前回<交換>と<贈与><盗み>は経済的な差異があると引用しました
経済活動は一見<等価交換>を前提に正当に行われているかのごとく
日々続けられています しかし差異哲学の観点からは等価自体が存在
しません 例外・偶然はあってもおかしくは在りませんが…… この
あたりからまず見てみましょう

  ..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..

□こんにちの銀行が我々預金者の<贈与>によってなりたっていること
は誰でもが知るところでしょう 貸し付け金利と預金金利の大きな差
異は莫大な利益率として不当に銀行に掠め取られています 顕在化し
たこのような異常事態だけではなく 通常でも額は小さいものの<贈
与>と<盗み>は日常行われている行為です 巨大な一流企業でも小さ
なサラ金でもメーカーでも……原理は同じです 例えばトヨタや松下
電器などの生産性の高い企業は日本の横並び体質の価格設定(弱小企
業でも成り立つような価格にすべての企業が合わせる)によって 本
来なら更に低価格・自由競争でも十分にやってゆけるのに 行政指導
?の横並びに従うことによって購買者の<贈与>を受け続けてきました
またその<贈与>分を貿易におけるダンピングに回したりするものです
から外国はたまったものではなかったでしょう トヨタはそうして利
益をストックし トヨタ銀行と云われるまでになりました 実質的な
<盗み><横領>も国家に保護されながら 合法的な<等価交換>と思わせ
つつ成り立っているわけです 一流企業といえども大きなだけで 綺
麗な事業を展開しているわけではありません 一流企業と云えど一流
な人が集っているわけでもありません 私企業も巨大化すると社会に
大きな影響を与えるようになり 質的に公的な要素を含む企業に変化
するというのは嘘ではありません 合併・統合により より巨大企業
化し より公的なイメージを作り上げて公的資金流用の正当性を推し
進めようとしているのが今の銀行再編成でしょう
□経済は<一般等価物>である貨幣を経由するので同等性が成り立って
いるように見えますが <差異哲学>ではすべてを異別性から始めます
したがって<交換>には必ず無理があり 不等が入り込み そのことを
<贈与>と<盗み>といって表現します

□高校時代の話にここで転換します 学校の強制してくる知識はテス
ト評価できる したがっておおむね<等価交換>で成り立っている知識
です 経済の流通と同じ原理であることに注目して下さい
高校教師とはなんと中途半端な存在であることか 学者ではありませ
んし 教育者としても一流な人はほとんどいません おそらく学校に
二人尊敬できる教師が そして信用できる教師が更に三人いれば そ
の高校は極上の学校であろうと思われます 英語・数学は勿論のこと
理科・社会も記憶分野では相同性や相当性の授業が横行しています
私など <このおっさんは知識の伝達しか出来ないのに 何故こんなに
も威張り散らしていられるのか!?> と思いつつ授業をサボっていまし
た 等価交換されてしまう授業内容にその授業担当教師の存在理由な
どありません 知識以上に教師が交換可能なのですから……

  ..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..



  実験は、比較的閉じた環境をつくり、そのなかで、わたしたちは、
 選択された少数のファクターに即してひとつの現象を定義する(その
 ファクターは、最小限二つ必要であって、たとえば、真空中の物体
 の運動一般については、空間と時間である)。したがって、物理学へ
 の数学の応用について、あれこれ疑ってみる必要はない。あらかじ
 め確保された諸ファクターあるいは閉じた環境は、幾何学的座標系
 を構成しているのだから、物理学はそのまま数学なのである。この
 ような諸条件においては、現象は必然的に、選択された諸ファク
 ター間の一定の量的な連関に等しいものとして現われる。それゆえ、
 実験においては、問題になるのは、一般性のひとつのレヴェルを他
 のレヴェルに置換することである。実験の個別的な諸条件のなかで
 ひとつの現象を同定するのを可能にしてくれる等しさ〔等式〕を発
 見するために、諸類似をこわすということだ。
  ……
 本性上異なっているものを、程度上の差異と取り違える危険がある。
 というのは、一般性というものは、仮定〔仮言〕的な反復、つまり、
 もし同じ諸状況が与えられていればそのときには……という仮定的
 な反復しか表象=再現前化せず、予想させないからである。
   <p22> 『差異と反復』 法則の視点からする第二の区別

質の諸類似 を 量の等式 に置換することが実験です
実験が失敗するのはこの閉じた環境が閉じられていなかった場合 お
おむね学校の理科室や実験道具は杜撰な管理下に置かれています 幾
何学的な空間は<等質な空間>で 数学的な式もこの設定を無条件に前
提しています もっとも重要なその前提・条件をしっかりと生徒が押
さえられているかというと 小中学校時代から暗黙の了解事として半
ば強制的に身に付けさせられているのが本当のところでしょう この
等価体質はのちの一般社会での交換経済を正当で疑念なきものにしよ
うとしている意図も感じられます 生徒の横並び授業もまた相等性の
幾何学的法則から来ているものでしょう 経済の体制はここにも入り
込んでいると言えます
□数学的な諸条件を除いた世界では 1+1=1 同化(口-機械)の食事の生
命活動が繰り広げられていますし 1=1+1 異化・分化(肛門-機械)の排
泄が行われています 数学は条件の内部の話でしたが それ以上に経
済は実体と表面の実相が違っています 経済は数学以外の活動ですが
その実質活動に数学的・量的な計算を強行に貼り合わせて辻褄を合わ
せているからです 数学内部からではなく その条件は他から持って
きています 利益を得ても良いという合法的な権利です ただその合
法的な経済活動も差異哲学から見れば<盗み>と<贈与>であり 美学的
な要素の乏しい 数量的・科学的数値の概念で充たされています
□純粋な数学内部の式でさえ 可逆的な式(確実な一対一等価交換)は
存在するのかどうか……
1+1=2 という簡単な計算でもその逆 2=1+1 は可能性の一つでしか
ありません 2=3-1 でも成り立ってしまうからです つまり 1+1=2
は一方通行であり 一方的とはそこに<差異> 流れが存在することに
なります 等式は絶対的な等価性 同等性と云えるのか 疑問が残りま
す 厳密には 1+1 と 2 は記号としても明らかに対称ではない別物で
す 数学的な概念 抽象の世界は狭いレンジでの話ということです

..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…

□産経新聞の新潟監禁事件の冒頭陳述の抜粋を読んでいて疑問に思い
ましたのでそのことを 法律の内部の人間のコメントは決って最高刑
は10年であると云うのみです 罪と刑の等価交換は有り得ないものと
して考えても 到底 10年の懲役(等価交換)で納得できるものでは在
りません 9年もの長期の事件を一つの事件に纏めること自体 差異
哲学では考えられないことです 暴力はその場面場面で一事件とすべ
きです 連鎖を考えるなら次の事件は足し算ではなく掛け算で計算す
べきです 暴力の度に恐怖は累乗に増すのですから 名古屋の5千万
円恐喝事件も事件を複数に分けて扱うべきです バスジャックだった
ら乗客の人数分の事件にすべきです 罪と刑が不等式で結ばれざるを
得ないのならば 凶悪事件では刑罰の方を重くすべきです 新潟監禁
事件で食事を1年以上一日一食(プラスおにぎりがどの程度だったのか
不明ですが)を知りつつ行っていたのならばそれは殺人未遂ではなく
殺人行為そのものでしょう 殺人罪で告訴されるべきだと思います
被害者は栄養失調で失神していたそうですから 生きて生還したのは
例外的な幸運で奇跡的なことだと云えるのではないでしょうか 容疑
者(被告)は紛れも無くゆるやな故意の残酷な殺人者です そのことを
裁けない国はすでにどうかしているのか 国や公の規範が機能不全に
陥っているのか 国に期待しているわけではありませんが マスコミ
も識者も初めから諦めているムードがそのまま思考の停止状態を思わ
せてイヤな感じがします 等価交換 同一性の硬直した思考形態が法
律家を換金査定(判例の相当性)の事務官にしているようです そう云
えば溺愛や学力と躾の免除を等価交換し 躾を怠ったツケを事件とし
て公共に払わせているかのような気がするのは私だけでしょうか 新
潟の「ボクちゃん」 学校は被告に対して被害者の義務教育を受ける
権利を侵害したとして告発できないのでしょうか…… 柏崎市は市の
名誉を傷付けたとして 日本競馬協会は競馬の印象を著しく落とした
として またトラウマ(精神的外傷)を裁かないことに対して医師会が
……
受刑者−更生 という懲役・禁固刑の単純・楽天的な効果の図式もま
た(自己)同一性の考え方で成り立っています 同一性 等価性……
経済的な無理強いがここにも顕在化しているわけです

つづきます



..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…

 次回は 美しき 物語 を予定しています





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□ ._._._.NO.43 ._._._._.美しき 物語._._.._._2000 6 08_._._□



□等価性や間接話法に関する記述を基にして 日本の知識人がどのよ
うに差異哲学を消化していったのか について辿ってみましょう
我が国のインテリジェンスの多くが所属している大学というものにつ
いても考えてみましょう
私自身は大学やその内部の学者たちに 期待している分けではなく
差異哲学の言論に興味もありませんが しかし公的な資金(税金)を研
究費という名目で贈与しつづけていることに対しては 私学も含めて
云うべきことは言わなくてはならないような気がしています どちら
かと云えば消極的な動機で始めますので 読むに耐えない内容になっ
てしまいましたら ご勘弁を

  ..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..

□唯物論では資本家が労働者を搾取している というのが一般的な不
等の図式でした 労働者は美しき被搾取者として純粋な人間として登
場していました 差異哲学ではその美しき物語も崩してしまいます
労働者とてその働きに対する差分賃金を横領している者も居るからで
す 働き以上に給料を貰っている人が どの職場を探してみても必ず
見つかるものです 史的唯物論のマクロの視点に対し 差異哲学はミ
クロも取り扱う哲学です ミクロファシズム ミクロ政治学 ミクロ
専制君主……
□ミクロ政治学――友人関係やカップル 家族 同僚 仲間 どれを
取ってもそこでは権力闘争が繰り広げられています わがままな主導
権争いもあります 一度従ったら家来にされてしまうというゲームに
似た果てしの無い覇権争いの場は 永田町の独占物ではありません
いじめの事例はそのことを如実に証明しています どんなに小さな人
間関係であってもそこには不等な力関係が存在していると考えた方が
良いのです(何かを成し遂げる為には不可欠な関係もあります)
□紋切り型な物語 というターム(述語)を意識して使用し広めたのは
蓮實重彦 現東京大学学長です 『表層批評宣言』(ちくま文庫)
『物語批判序説』など
プラトーNO.9<Speed解散と直接話法>という題で以前に述べた 指令
語による間接話法が 紋切り型物語の考えの基になっています 『物
語批判序説』はフローベールが作った紋切り型辞典について書かれた
ものでフランス文学者以外の人が読んでも面白くはありません 世間
に流通している物語を辞典に登録することによって二度と話されるこ
とのないように という目的で書かれていました 差異を生まない物
語の反復を批判している分けです 等価性への批判を言い換えて説明
したものです ドゥルーズ=ガタリの考えをフローベールに当て嵌め
蓮實重彦が研究したものですが ドゥルーズ=ガタリを踏まえたという
と綺麗な物言いに聞えます が ネタを明かさない知的な横領 翻訳
以前の原典からの無断借用は立派な密輸入でしょう そのような風土
が日本の西洋哲学を含めた外来学問の典型です 優秀な解説者なら日
本にも数多く居るでしょうが 創造的な学者は文科系ではごく僅かで
す 現代思想で世界に通用するのは丸山圭三郎のソシュール学のみと
は良く言われたことです 私も丸山ソシュール学を読みましたが そ
の通りだと思いました
□アカデミックに対しては公的資金が導入されていますので厳しい目
で見る必要があるでしょう 大学の独立法人化に対していち早く蓮實
重彦は反対しました 無駄な研究も必要であると…… 無駄な学問の
中には趣味で十分なものが多く存在している気がします 納税者にき
ちんとその学問研究の価値を説明し得てはじめて 国民は納得し 費
用を負担する という段取りになるのでしょうが その利権は今は大
学とその周辺が独占しています 努力の結果として無駄な研究になる
ことはあってもおかしくありませんが 初めから無駄な研究も必要と
は詭弁でしょう 研究能力に自信がないから と勘ぐってしまいます
学問的な価値に自信があるのならば自らが社会を説得し 民間から寄
付を募れば良いだけのことです そういう正当な手続きや労苦もアカ
デミックには必要でしょう 税金で研究費を賄い その成果は納税者
のものかと云えば そうではなく書籍としてふたたび納税者から本代
を贈与されている学者は 研究の手間を除いたとしても 二重の被贈
与者です
(そのように自覚している学者は残念ながらほとんど居ないでしょう
国が予算を掌握し 自己能力の過大評価からすれば当然の待遇であろ
うと思っている人がほとんどでしょうから……)
□私は民間人ですし 詰まらない解説書も読まないことにしています
けど 贈与しつづけても 見かえりはほとんどなく 威張られて――
山口大学の情報センターのようにネット上で情報を還元しない 大学
は既に公のものではなく オタクの閉鎖的な趣味人グループと同じで
外部から見たら 内実は国公立と云えども私物大学に過ぎないのでは
ないかと思われることもしばしばです 民間でも青空文庫のような開
かれた活動こそが公的に有用な機関と云えるのです

  ..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..

□しかし一般的には 趣味と学問の区別は学校や学術機関の内部と外
部の差として存在しています 内部に居れば何をやっていてもアカデ
ミック 外ならどんなに優秀でも趣味でしかないと世間で評価されて
しまいます 栃木や埼玉や新潟県警と同じように 事務的査定の等価
性に支配された思考を 人々も持たされているということです
『表層批評宣言』では過剰(強度を言い換えたもの)との遭遇について
書かれてあります ドゥルーズの名が一箇所出てきますが そのこと
の引用ではありません やはり横領した考えに基づいた本です ドゥ
ルーズ=ガタリ自身も著作では横領を頻繁にしていますし 贈与や盗み
も当然認めていますから 蓮實重彦もそれに倣って横領したのでしょ
う むしろそのことが流行やカッコよさに通じていた時代もありまし
た 80年代は差異哲学がせいぜい風変わりな文芸批評の一分野の出来
事として認識されていました 解説風に申しますと 既成の批評に対
して 差異哲学の一部を利用 盗用することに因って対抗し 自らの
出世の道具としたわけです それ自体は非難には値しません 問題は
差異哲学が文芸批評の一部でしかないような誤解を与えたことです
紹介の仕方が偏っていて しかも密輸入の青田刈りでしたので顕正も
ままならず ボロボロの歪んだ差異哲学のイメージが蔓延したまま
ポストモダンの流行は廃れてゆきました 90年代の半ばになり 翻訳
が整いようやく全貌を見ることが出来るようになり 日本の解説者は
疾風のように消え お役御免となったわけです
私も出来るだけ出典は明らかするようにしていますが 本質的には差
異哲学の横領者の一人に含まれてしまうでしょう
□美しい物語 例えば 青春は純粋で希望に満ちた 人生で一番素晴
らしい輝かしい一時期である といったもの これはむしろ逆の状況
を隠す為にそういうことにしているのでは と思われてなりません
中高生時代にヒドイ思い出はありませんが その輝かしい一時期を
私はもう二度とやりたくはありません 自己の無い 不安定な状態
それはごく当たり前のことなのですが 青春とは何も確実なものを見
つけられないまま過酷に生きねばならない とてもシンドイ時期です
何かに捉まっていないと吹き飛ばされそうな……それが青春の内実で
しょう 真実を如実に知ってしまったら そら恐ろしいので美しい物
語で覆い隠しているのです 暴発を防ぐために?
若い二人の美しき愛情物語 も二人の単なる依存体質を隠すものでし
かないのかもしれません
このような物語にひそむ隠蔽の原理への異議申立ても 蓮實重彦の功
績の一つに数えられています <少しばかり横領して使ってみました>
蓮實重彦の本当の功績は 彼が日本の知性を代表するのならば 多く
のみなさんにもチャンスがあり 明るい未来を与えてくれるというも
のなのか それとも日本知識人のトップレベルの事例として憂うべき
ことなのか……

..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…

□今回は希薄な内容になりました 学問はみなマイナーなものに過ぎ
ません どの分野でも興味を持っている人は少数です 大学で行われ
ているといかにも価値があるような錯覚を与えますが マニアックな
マイナー性を隠蔽する これも美しい物語 に過ぎません

□バスジャック事件の容疑事実は強盗殺人や強盗殺人未遂 銃刀法違
反など7つ上げられていました 複数の刑事事件として取り扱うのは
当然でしょう 130回行われた名古屋の恐喝事件も 130回分の容疑事
実として扱って欲しいものです
つづきます

..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…

 次回は 果是無記 を予定しています

しています




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  >………  プラトー 〜差異から始める哲学〜   ………<

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□イチローと松井 上原と松坂 この組み合せによる対比が 物語と
<強度>との区別の事例として認められるものでしょう 松井と松坂は
その打球や速球を目にすれば衝撃的なことが直ぐに誰にでも分かりま
す 解説や言葉は要りません 対してイチローや上原には上手さは感
じられても 打球やボールに感動を直接与える<強さ>は少ないと云っ
ても過言ではありません イチローには<6年連続首位打者> 上原に
は<雑草魂> といった物語を付け加えることによって見る者に夢を与
える そのような付加価値は マスメディアを含めた野球にまつわる
言論の戦略として少なからずあると思います 戦略を非難しているの
ではありませんが むしろ物語での人気に 彼ら自身が不満を持って
いるだろうことを容易に想像出来るのは 今年の彼らがより<強度>的
な打球やボールを意識してプレーしているからです イチローは大
リーグキャンプ参加後 肉体もより太くなり 4番を打てる打者とし
て成長しています 上原も投球フォームを乱しながらも豪快な投球を
指向している気がします
 補足から始めました 今回は原因と結果の関係を<差異>を通して見
てゆきます

  ..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..


  推理小説は……たいていの場合、殺人や窃盗の部類に属する<何
 か=未知数>がすでに起きてしまっているのに、起きたことは、模
 範となる探偵が規定する現在時の中で、これから発見されるように
 仕組まれている  <p221>『千のプラトー』

常識では原因が結果を導くと考えられるでしょうが 実際はTVや映画
や小説のミステリーのように 現在時から過去に溯ってゆくことが時
間経過(時間を進めてゆく要因)となっています 逆説的な時間の流れ
方です 事件 事故の報道もまた同じように時間は逆に流れて行きます
残虐な事件では 犯人の子供時代の環境から育て方まで遡らねば何も
見えて来ない場合もあるでしょう 事件の因果関係とは 単純な<等価>
関係では有りません 過去の事実関係に遡行しつつ裁判が進行し 結
審してゆくのもその為です

  人為的あるいは自然的因果性において重要であるのは、現前する
 対称的な諸要素ではなく、原因のなかで欠けていて存在しないもの
 である……
 ――すなわち、重要であるのは、原因における対称は結果における
 対称よりも小さいという可能性である。さらに、その可能性が、何
 らかの契機において実際に実現されているのでなければ、因果性は、
 永久に仮説にとどまってしまうだろうし、たんなる論理的カテゴ
 リーにとどまることになるだろう。 <p45>『差異と反復』

ここでもまた原因と結果の対称性 つまり<等価性>に対する 交換関
係という単純な思考停止を <差異>の導入によって抜け 真の実相に
迫ろうとしています 結果に対して原因の方が小さいとは 結果は原
因プラスアルファに因って引き起こされると考えられているからです
常に原因以上の結果が得られる とも言い換えられるでしょう 多か
れ少なかれ予想外の結果が導き出される というこです プラスアル
ファとは何なのでしょうか 原因と結果の間に齟齬が発生する ズレ
るということ ここでのドゥルーズの論点は主に芸術作品の思わぬ効
果(結果)に対してなのですが……

  ..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..

□ここで仏教の考え方を見てみましょう

  善因善果 悪因悪果
  因是善悪 果是無記

<善因善果 悪因悪果> はあまりにオーソドックスな考え <教え>です
因果関係の 対称性 等価性 そのものを言い当てたものです 対して
<因是善悪 果是無記> は初めて目にした句であろうと思われます
「いんぜ ぜんあく かぜ むき」と読みます 原因がどうであれその
結果は解らないよ と云っています 簡単に言ってしまえば
 善因悪果 悪因善果 も成り立つということです
 善因善果 悪因悪果 が成立するのは実は偶然の力が働いているか
らだとも読めます 原因プラスアルファとはそういうことです
仏教ではよく<因縁>と云います この場合 因縁試合とは少し意味あ
いが違って <因>は直接の原因 <縁>は間接の原因を現します 間接
の原因がプラスアルファに当たります 事件は犯人が直接起こしたと
考えるのは 事件の<直接の原因>です しかしバスジャックなどの被
害者 乗客はそうではありません <間接の原因>だけが そこに居合
せたという偶然性をかろうじて説明してくれます <縁結び>の<縁>も
そうですが しかしこのような犯人との遭遇を被害者に偶然導いたの
もまた<縁>だと考えられるからです 加害者もそのバスに制服警官が
10人も乗って居合せたならば 事件を起こさなかったかもしれません
事件の完結にはそのような偶然性や 間接の原因が 複数の要素とし
て複雑に入り込んでいます 事件は等価性の思考のみでは到底解明さ
れないだろうこと 非対称性をどのように<差異>として分析すればよ
いのか ここでも問われることになるでしょう
□<袖振り合うも他生の縁> 他生には「2 そのもの以外の他の原因で
生ずること。 (C)小学館」という意味があります <縁>とほとんど同
じことを云っています 直訳すれば 偶然出遭えたからこそその関係
を大切に という意味でしょう <果是無記> 人間関係には偶然や運
は必ずプラスアルファとして入って来るものです
毎年繰り返される国家予算と決算の完全な相同性は 勿論偶然に因っ
てもたらされるものではありません 人為的な辻褄合わせの所産です
無駄遣いの温床は等価性の思考が原因であり 実に哀しい思考の停止
状態から来ているのです

..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…

□人権派は少年の更生を信じているから少年を擁護するのだろうか…
…もし少年の人権を真剣に考えているのならば 事件を成人として裁
く方向に持ってゆくのが正当だと思われます 少年の罪を軽くするの
は彼らを半人前と考えているからであり 少年を未熟なものと差別し
ていることになるからです 近代は出来るだけ少年を成長させないで
モラトリアムの期間を長く保つようにしてきました 半人前の期間を
出来るだけ延長し……学校を社会から隔離することによって……
社会での子供の役割は純粋な消費者として産業界では認知されている
のでしょう 消費するだけの存在 内需拡大に貢献してくれる有り難
い存在! 浪費の中心的役割……!?
文化のメインが若者中心でなかったら 大変なことになるのでは……
若者は殊に不安定な存在です 優等生は偏差値にすがり 将来を夢見
ることで現在の不安を払おうとし(学業の内実に本気で価値があると
思っている生徒はほとんど居ないと思います) その他の生徒もモー
ニング娘やスマップを想うことで不安を解消しているのかも知れませ
ん TVゲームで刹那的に時間を過ごすことも可能です 暴発回避装置
並びに 産業界のターゲットとして若者は不可欠な集団としての勢力
を形成していることは事実でしょう
□確かに言えるのは自己形成の方法としての因果関係は上手く作用し
ないだろうということです どうすれば安定した自己が確立出来るの
かと問われても 私は決め手はないと返答するのみです 家庭教育や
学校など 回りから得られる教育からは 紋切り型のありきたりの自
己しか形成されないでしょうし むしろ自らが自らを作り上げてゆく
しか方策はない気がします
 <自己教育>……ジャン・ジャック・ルソーの人生
教育の目的を一つ上げるとすれば <自己教育>出来るような人間を育
てることです 今の学校はその観点からすれば程遠いでしょうし そ
れ故に <自己教育>出来るように 自ら!?が自ら!?を育て上げて
ゆくしかない という二重の負担を強いている ほとんど不可能に近
い課題を背負わされてしまっているのが現状でしょう
□修行としての宗教(信仰としての宗教ではない)では 例えば仏教で
は 不安は自らの鍛錬によって克服するしかありません 繰り返し鍛
えるしかありません 臨済宗の開祖 臨済は <仏>とは便所のような
ものだと諭します 他者に依存してはいけない という意味でそのよ
うに一喝します 仏性は自らの中にあると弟子たちに強調し説きます
<n−1>として仏性は万人に具わっているのだと それを引き出すのは
最終的には自分自身しか居ないと
信仰対象の<仏>より 自らの仏性を信ぜよ カルト教団はまったく逆
で 教祖への依存やロイヤリティ(忠誠心)にウェートが置かれていま
す そのあたりが一流と二流の教団を見分ける指針になるでしょう
経典は読むほどに人を混乱させます 禅問答も二重拘束の絶体絶命の
状況を作り出すためにあります 師も仏も絶対では無くなってゆきま
す 修行者にとっては距離を置くべき存在 修行の世界ではむしろす
べては自分次第です しかし修行とは因果律でいう <因是善悪 果是
無記> そのものです <縁>の力が悟りにも必要になって来るのが解っ
て来ます それはまた<他力>とも言われています 依存という意味で
の他力ではありません 自力によってどんなに修行 精進しても<縁>
<他力><プラスアルファ>が上手く噛み合ってくれないと悟れません
悟れずとも 少なくともそのような仕組み 実相を知ることは可能で
す 逆説的ですがその(真理の)実践 体得もまた(最終のものではあり
ませんが)悟りへの道と云えるのです

..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…

□最後は説教に近づいてしまいました 修行も<自己教育>そのものです
素手で 手探りで進むしかありません 巨人から見捨てられつつある
清原選手はいいチャンスを与えられていると考えられるかどうか……


..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…

 次回は 折り畳み人間 を予定しています




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  >………  プラトー 〜差異から始める哲学〜   ………<

     PLATEAU "Philosophy begin with a difference"

               SIGEYOSI ......................>

□ ._._._.NO.45 ._._._._. 折り畳み人間 _._._._2000 6 22_._._□



□人ゲノム解読の経過や展望などが さかんに報道されつつあるこの
頃です 用語として明確にしておくべきことは 34億の塩基の対は
<遺伝情報> そのうち蛋白質合成に実際に使用される情報 約10万を
区別して <遺伝子> と呼んでいます 遺伝子はさらに少ない可能性も
出て来ています 3万を越えたくらいだとか……
多く見積もっても <遺伝子> は <遺伝情報> のうちの 約3万分の1以
下です それ以外の使用されない莫大な情報とは何なんでしょうか

  ..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..

□使用されない一見無意味で膨大な遺伝情報を想像してみて ようや
く納得できつつあることがあります 以前にはよく解らなかったもの
ですが 翻訳者の解説にはこのように書かれていました――

  あらゆる生物種の形態は「折り畳み」によって、たがいに自在に
 移動しうるものだ、というジョフロワの立場があり、生物学上のタ
 イプはそれぞれ決して還元できない本質をもつ、というキュビエの
 立場がそれに立ちはだかる。地層の形成から、生物の発生、言語の
 出現にいたるまで「二重分節」としてとらえる観点は、あらゆる発
 生の場を支えるただひとつの実体、「前生命的なスープ」、ただ一
 つの「抽象的動物」といったものを想定する。個体の形態を決定す
 る器官が出現する以前の「器官なき身体」が、共通の素材として存
 在する。すべての個体が、この共通の素材をさまざまに「折り畳む」
 ことによって出現すると考えられる。
   <p648−649> 『千のプラトー』

注:Geoffroy Saint-Hilaire(1772―1844)ジョフロア・サンチレール
  フランスの博物学者。キュビエと対立して1830年に有名な論争
  Cuvier(1769―1832)フランスの古生物学者。(C)小学館
  

この恐ろしげな <抽象的動物> が34億の一見無駄な遺伝情報の内実な
のではないか……ドゥルーズ=ガタリはこう書いています

  いずれにしても、純然たる内在性の平面、一義性の、そして構成
 の平面があり、そこではあらゆるものが所与となるばかりか、ただ
 速度によってのみ相互に区別され、相互の連結や運動の関係にした
 がってなんらかの個体化したアレンジメントに組み込まれるような、
 形態なき要素と素材が乱舞している。すべてが動き、すべてが遅れ
 たり、早まったりする生の固定平面。唯一の抽象的動物があり、そ
 れを個別の動物として実現するあらゆるアレンジメントがある。頭
 足目の動物にも脊椎動物にも等しく通用する同じ一つの存立平面、
 あるいは構成平面。脊椎動物が十分に早く体を折り曲げれば、それ
 だけで背中の両半分の要素が接合され、骨盤と首の後部が接近して
 手足がすべての体の一方の端に集まり、こうして<タコ>や<イカ>に
 なるだろうからだ。たとえていうなら、それは「軽業師が両肩と頭
 部を後にそりかえし、頭と手で歩いてみせる(21)」ようなものであ
 る。折り畳み。 <p294>
  注(21)Etienne Geoffriy Saint-Hilaire,
     Principes de philosophie zoologique.

<n‐1> の多様体の原理を言い換えたものでしょう <n> は抽象的
な動物です 人間もその <n> から折り畳まれて マイナス 1 とし
て引き出されて生まれて来ます <n> 抽象的な動物 <器官なき身体>
は流動的でそのアレンジメント=凝固が <n−1> 個体種なのですが
<n> は依然として潜在しつつ存在していると考えられます 34億の
<遺伝情報> も4種の記号として染色体に貼り付いているので凝固に見
えますが <n> の形態なき素材とみれば 流動的だと考えることが可
能です ハードディスク上の情報は I/O データ 形なき記号に過ぎ
ませんが いつでもメモリーに展開することによって個別のアレンジ
メントとしての実態を持ちます 実際ハードディスクは常に高速回転
し続けることを前提に作られています 例えば史料ファイルの一部は
コピーによって別のファイル(アドレス)に転送することが可能です
Windows95 98 以前の ほとんど使われることの無いDOSファイルであっ
ても その情報は静的に見えて 動的なものを常に孕んでいます
□<器官なき身体> の経験(禅やヨガの身体)とは <n> の 抽象的な動
物の体験であると考えても良いでしょう 生成変化によって動物にな
れるのも <n> を人間が内包しているからでしょうし それ故に <な
ること> は物真似では決して無く <抽象的な動物> が折り畳まれて
動物も人間も出現 <n−1> することの証しと言えるでしょう
<器官なき身体> を仲介として 他の動物へと生成変化することは空
想では決して無く 著者が言っているように現実に行われていてもお
かしくはありません
<器官なき身体> は原子的分子的な要素も持っていますから 鉱物や
無機物にも当然 <なること> が可能です また <知覚しえぬもの> へ
の変化も絵空事ではないでしょう

  ..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..


  「遺伝子のドリフト」なしには遺伝〔発生〕過程というものはな
 いのだ。突然変異に関する現代の理論は、どんなふうに一個のコー
 ドが、コードは必然的に集団のコードなのだが、本質的に脱コード
 化の周縁を含んでいるか、ということを明らかにしてくれた。すな
 わちコードも自由に変異しうるさまざまな補足物を有するだけでは
 なく、同じ一つの切片が二度コピーされ、二つ目のコピーは自由に
 変異しうるものになるということだ。そしてまた、コードの断片の
 転送は、ウイルスの仲介や、別の過程によって、さまざまな種から
 きた一つの細胞から別の細胞に向けて行われる。<人間>と<ネズミ>、
 <猿>と<猫>など。そこでは、あるコードから別のコードへの翻訳が
 行われるわけではなく(ウイルスは翻訳者ではない)、むしろ、コー
 ドの剰余価値、また派生的コミュニケーションとでも呼ぶことので
 きる特異な現象が生ずる。 <p73>

  地層の……発達は、もろもろの変換(形質導入)によって起こるの
 であり、この変換こそが、……コードとは無関係に生ずる形態の繁
 栄や交叉の可能性さえ(コードの剰余価値、あるいはコード変換や
 非平行的進化の現象)説明するのである。 <p80>

注:drift 漂流 逸脱

「遺伝子のドリフト」は簡単に云ってしまえば 親兄弟は似ているよ
うで 似ていないということ 金さん銀さんは同じ遺伝子であるにも
かかわらず 遺伝子のズレや変異や逸脱を確実に持っています
コードの断片 ここでの事例を <負> として考えてみますと (多少
ニュアンスが違いますが)遺伝子組替え食品の思わぬ効果を想定して
もいいでしょう <横断的結合> <平滑空間> <リゾーム> その中で行
われているだろうこと 人面魚や人面植物 鉱物などのブームもあり
ましたが 進化の系統を横断する 交換や変異も 多様体の素材の組
み合せの理論を考慮に入れれば サイエンスフィクションとしてかた
ずけることは出来ません コードの断片 切片の転送や移植には思いも
よらない 剰余価値(原因には無かった余分なもの)が発生してしまう
ものです これも等価性 対称性で成り立っていない世界に我々が住
んでいる証しなのですが 移行やコピーの過程で <差異性> <不等性>
が生産されたり出現してしまうという実相
□コンピューター・プログラミングの世界ではコードの移植は 思わ
ぬ結果 負のケースとして発生することが多く 元からある他のコー
ドやハードウェアーやOSとの予想外の相性 派生的なコミュニケーショ
ン(連絡)が不協和音を起し 不具合が発生し 困惑することがしばし
ばです プログラミングの断片コードは Tips(遺伝子)としてWeb上に
も多数公開されておりますが 使いこなすのには苦労や工夫が要りま
す 挿入される箇所によって 役割が変異してしまうことがあるから
です PCウィルスが偶然出来上がってしまう可能性は少ないのですが
予想外のバグはこの世界では付き物です
□遺伝子とはズレますが 丸山ワクチンやバイアグラは別の研究から
生まれた分けですから 思わぬ効果(剰余価値)の見本でしょう
□プラトーでは毎回本文を引用しています 原書でのその箇所の意味
あいと 引用文での使われ方は 文脈から言って違っていてもおかし
くありません 実際に違う別の文章として読めるだろうと思っていま
す コピーによる剰余価値の発生
□人ゲノム解読はおそらく成されないでしょう というのも遺伝子と
合成される蛋白質の対応は解明されるでしょうが 塩基の二次元配列
と蛋白の三次元有機物との間の <差異> その形態が似ていないという
理由は説明できないからです 原子番号(電子と陽子の数)と実際の原
子の性質にも相同性 相似性は全くありません 神秘的な <差異> が
間に横たわっています 遺伝子もまた神秘(差異)が介入していると考
えられます
□万有引力は既に解明済みだとお考えになっているかも知れませんが
天体におけるその力の計算は可能です が何故質量を持った物どうし
が引き合わなければならないのか その根本原因はまだ明らかにされ
ていません 引力は常に感覚されるけれども <知覚> はされていませ
ん 原住民が以前からその土地に住んで居たにもかかわらず コロン
ブスがアメリカ大陸を発見した といった歴史のまやかしもまだ学校
では流通しているのでしょうか……

..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…

□<n> <抽象的な動物>や <器官なき身体> は <強度> と同じように
普段は現れないものです 多様な自己(複数の自己)もまた <n> とし
て潜在しています その潜在状態を <無我> と考えると解りやすいか
もしれません <無我> とは自己が無いのではなく むしろ詰まって
いて充たされている状態 しかし <n> は現れずに潜在し= <無我>
そのうちの <n−1> の <1> 一つの自己しか普段は現れて来ません
<無我> は <n> のすべての自己に対して上手く対応出来る自己を
言っているのだと思われます
例えば怒りや殺意の自己に入れ替わろうとしても 余裕を持って対応
し コントロール可能な状態を作り出せる 自己の訓練の実現を目指
しているものでしょう <無我> とはそのような 自在性や統率力 を
つまり <折り畳み> のコントロールの実相を言っている気がします
□白隠という江戸時代の禅僧は <悟後> の修行を大切にしました 解
ることは <悟り> は自己のすべてを覆うのではなく つまり <n=1>
となるのではなく <悟り> も <n−1> に過ぎないということ ただ
し何時でもその <n−1> の <悟り> の状態に移行することが出来る
――<悟後の修行> の必要性とはそういうことだと思います

□遺伝子組み替え食品も遺伝子治療も未知のものを作り出す可能性を
拭い去ることは出来ません 私たちはむしろ <折り畳み人間> として
の生成変化の実現 また自己の在り方のコントロールとしての <多様
な自己> の <折り畳み> 方を考えれば良いのかもしれません

..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…..…

 次回は 資本主義の公理系 を予定しています



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