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雑音に敏感であることの美徳


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11月2日
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 2005




 2004

■メッセンジャー

通勤電車で私の前に小さなおばあさんが立っていた。

ギュウギュウの時には気付かなかったのだが、背中に「平和」と書かれたジャンパーを着ていた。しかも、赤い折り紙を張り合わせて。

ちょうど彼女の前の座席が空き、座ろうとした彼女はジャンパーのファスナーを下ろした。そこから覗いたのはアルファベットのEとA。

“まさかPEACEか?”

予想は的中。白い手編みであろうセーターの胸元には、グリーンの糸で「PEACE」の刺繍が施されていた。かなりのおばあさんだったが、スペルは正しかった。さすが世界共通語だね、などと変なところに感心していた。

着席した彼女に「取りましょうか?」と、親切な若いサラリーマンが彼女の荷物を網棚から下ろしてあげていた。なんと!そのスーパーのビニール袋にも「平和」!今度は赤いビニールテープで。一体何が入っているのだろう。それにしてもただのビニールもちょっと手を加えるだけでエコバックに変身だ。モノを大事にすることも平和のひとつだ、たぶん。でもお兄さん、渡す時に平和を手にしてよく驚かなかったね。

折り紙、毛糸、ビニールテープと、素材を違えて平和を謳う彼女。彼女がどこを目指しているのか見届けたかったが、生憎そんなことをしていたら遅刻してしまう。すると彼女が車窓の外を振り返った。どうやら私と同じ、次の駅で降車するようだ。なんとなく悔いを残さずにすむな、とホッとしたのも束の間。なんと背中にも文字が!なんだ!?何て書いてあるんだ?LOVEか?NO WARか?
……
答えは颯爽と羽織った「平和」ジャンパーの中。わかったのは黄色い糸のメッセージだったということだけ。私の動態視力の負けだ。といってもおばあさんの動きが目にも止まらぬほど機敏というわけではなかったが。
まるでダイイングメッセージを見つけ出そうとする探偵のように、モヤモヤとした余韻を残し、私は電車を降りた。連日降る雨がまだそんな私のモヤモヤを晴れさせてはくれないのだった。

(2004-11-02/C)


彼女はアメリカ大統領選挙に投票したいのかな? 前回の大統領選で票が多かったのは、ゴアでした。しかし、選挙人が多くてブッシュが勝った。(K)




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