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【蒼きバンダナのアレス】LAST EPISODE
 −CROSS FATES− 【DUG/RUTZ】


あとがき

 蒼きバンダナのアレスシリーズはこれにておしまいです。
 アレスのバンダナがその力を失ってしまいましたから。
 ダグとアレスの名を受け継いだルッツの冒険譚は、また別の物語。
 書く予定は……未定です。(先にFIRSTとMAINを書かないと)

 以下に各キャラクターについて、一言。

ルッツ:
 このエピソードにおける主人公。短い間に三人もの女性に絡み、そのうち二人を殺される。
 子供でいたくなくて家を飛び出したルッツ君ですが、まだ自分が子供に過ぎないことを認識してこのエピソードを閉じました。
 描きたかったのは成長です。成長とは乱暴に言えば『出来なかったことが出来るようになる』こと。
 彼は『自分の弱さを本当の意味で認められる』ことが出来るようになりました。
 これが成長するための基本だと思います。
 この先、彼は自分のしでかしたことに一生胸を痛めつつも、前向きに生きて行く予定です。
 特にルージュとリアラはトラウマとして残り、女性に恋心を抱くたびに思い出し、胸を痛めることでしょう。
 冒険家として名を成すかどうかは……内緒。

ダグ=カークス:
 元々は、本作は彼が主人公でした。
 ただ、彼を主人公にしても、読んで楽しいものにはなりそうにもなかったので。
 あの最期をどのように評価するかは人それぞれだと思いますが、私としては『修羅に生き、修羅に死に、そして修羅のまま死出の旅についた男』を描いたつもりです。
 作中での完璧超人ぶりは、やはり人によって引くところかも知れません。
 しかし人間らしさを捨てて、勝つことのみに人生全てを注いできた人間、しかも命を捨ててことを成そうとしている人間がそうそう弱くては話にならない、と思いあの戦闘能力になりました。(あと、主人公ではないから強くてもいいや、というのも多少は・苦笑)
 描きたかったのは『磨き上げ、研ぎ澄ました技は単純な力や才能に勝る』というところ。
 意志の力とか友情の力とか信じる心とか残った生命力を全てつぎ込んでとか、とにかく何だかわからない力で逆境を覆す――そんな展開も大好きですが、やはりたゆまぬ研鑚を積み重ねた人の機微に満ちた所作・動作・知恵によって力の差・数の差を圧倒するという展開こそが王道だと思います。

シグオス:
 ダグのライバルとして登場したはずの彼ですが、本エピソードでは汚れ役の落ち役。
 完全にダグの引き立て役、噛ませ犬と化した感が書いている方にすらあります。
 人としては欠陥だらけのダグをかっこよく見せるために墜とされた英雄という意味では、少しかわいそう。
 傲慢、小悪党、猪武者、筋肉脳みそ、偽善者、力自慢の乱暴者……この辺が本エピソードでの妥当な評価かとは思いますが、本当は人間味に溢れたいい奴なんです。その辺は別のエピソード(FIRST、MAIN)にて描きます。
 描きたかったのは、誓い(約束)を守ることの難しさ。
 誇りある生き方とは、自分自身に誓った(約束した)ことを守り抜く生き方だと思います。
 だから、それを破ることを良しとするか悪しきとするかではなく、一度決めたことを最後まで貫くことの難しさを描きたかったのです。
 そういう意味では、『るろうに剣心』(作・和月伸宏/集英社刊)に登場する敵役・十本刀の一人、『盲剣の宇水』に重なりますね。(ということは、ダグは斎藤一か……確かに似てる。今気づいた・汗)

ルスター:
 このエピソードにおける主人公はルッツでしたが、シリーズ通しての主人公は、実はルージュでありルスターでした。
 ダグもシグオスも、これ以前のエピソードの主人公達も、全て彼(ら)のせいで人生を狂わされたようなものです。
 本エピソードで描きたかったのは、「わかっている大人」。
 その意味では、ルッツが憧れたクアズラー司教もルスターの分身のようなものです。
 「知っている」がゆえに、「知らない」若者と対立し、踏み越えられていってしまう大人。
 シリーズ通しての主人公という割りには救われない最期でしたが、真にルッツを成長させたのはルスターでした。

ルージュ:
 ラスボス。多分このシリーズで一番不幸な少女です。
 外見は15歳だけど、実年齢35歳。まさしく身体(歳)は大人、頭脳は子供……小枝探偵?(ローカルネタでごめんなさい)
 彼女が本当に破壊神だったのかどうか、謎のままにしておきましょう。実は作者自身も決めていません。
 ただ、彼女の力はあの時完全に覚醒していなかったというのだけは事実です。完全に覚醒していたら、ダグすら瞬殺だったでしょう。
 ルスターは彼女に関わってその人生を変え、ダグは死に、ルッツは初恋の相手として一生その胸にその笑顔と涙を刻んで生きて行くことになりました。その意味では悪女の才能もあったのかも。
 描きたかったのは、裏切り。「信じることを貫いた果ての裏切り」という最悪の状況を主人公が乗り越えるための、最後の試練でした。
 ルッツがこのあと選んだ道が「それでも……」なのか、「だから……」なのかは……わかりますよね?
 決してシグオスが噛ませ犬っぽくなったから急きょ悪役になったわけではありません。

ゼラニス:
 シグオスの噛ませ犬化がどうにも修正できなくなったので、登場した「智」のライバル。
 リアラは殺されるわ、ギルドに拉致られるわでろくな目に遭わなかったものの、ダグに一矢報いた唯一の存在。
 シグオスとは対極にありながら、挙動・言動・身なりがぞんざいなのであんまり賢そうには見えない辺りがミソ。
 最後はギルドの連絡員を仲間に引き込んで国盗りに立つのかどうだか、というところですが……結論を言うと立ちます。後々ルッツとも絡んだかもしれませんね。
 描きたかったのは、ルスターともシグオスとも違う視点で世の中を見ている存在。そして、ダグを追い詰める存在。
 前半では走り回ることで、世界観・背景の説明に大いに貢献してもらいました。
 作中でギルド幹部が触れていた「大地の神を信仰云々」というのは、樹帝教の傍流にある大地神信仰のことですが、結局その事に触れる機会がありませんでした。
 実は二十年前、妹が殺されています。シレニアスに。それ以来権威とか権力嫌いになったという裏設定がありましたが、それにも触れられませんでした。ああ、残念。


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