ハネカエシにノビ

   第22図

井口「黒が(5)でノビルとどうなるかを説明しましょう。
第22図で考えられる白の打ち方としては、Aカタツギ、Bカケツギ、C二段バネの三つが有力とされました。」
島谷「カタツギは筋のいい手ですね。
でも、Cがいっぱいの手で僕の好みです。」

   第23図

井口「カタツギAは第23図のようになり、これが簡明な盤面黒9目へのゴールインルートと考えられていた時期があります。
ところが、1986年ごろ、七路盤問題に興味を持たれた中山典之先生が並べてみて、 「この図はもう一手白が左上の二の二(B2)に手入れをしないといけないのではありませんか」とアマチュアの見落としを指摘してみえ、以来、Aは緩手ということになっています。」

   第24図

井口「次にカケツギですが、これは第24図で盤面9目になると考えられていた時期がありました。」
島谷「この図はおかしいのですか。」

   第25図

井口「たいへん微妙なテーマです。
1989年に根橋、野呂両アマ代表を加えて工藤九段と検討した席で、この図の白18黒19がキクかどうかが問題にされました。
そして、白18のデに対しては、黒から第25図のように打つ手があり、18は利かないという結論になったのでした。」
   第26図


井口「第26図はその席で工藤先生が並べた変化ですがこの進行は白が永材不足に終わるということでした。」
島谷「第25図の白18が利かないとなると、18の手で20のツギとなり、黒が18のところに手止まりを打って、この結果は盤面黒10目勝ちですね。
すると、カケツギは廃案ですか。」
井口「いえ、さらに後日談があります。

   第27図


1990年に至りこの趣旨の解説を読んだ、新潟のアマ強豪の中野祥孝さんから投書があり、第27図の20とすぐ劫にしてがんばる手があり、やはり白は盤面9目勝ちに持ち込めると指摘されたのでした。
工藤先生もこの指摘に脱帽され、第22図Bのカケツギも正解に含まれるということに認識が改められたのでした。」
島谷「結論がもとに戻ったわけですね。」
井口「そうです。囲碁ではなかなか絶対!ということは言えませんね。
ここにお示ししている解説だって、今後、誰かに指摘されて訂正を必要とする可能性が大有りです。
今は、これが正しいと考えられているといえるだけです。
そういう認識で、次回は二段バネの変化を説明しましょう。」