第12図
井口「黒初手天元、白ツケ、黒はハネのとき、白が切り違えるのは華麗な手です。
いろいろ検討がなされた結果、いまでは、それも正解の一つということになっています。
切り違えると次の黒の手は、星か三三かいずれかの石から動くことになるでしょう。
そこで、「キリチガキイ一方を伸びよ」で、まず、星の石をノビル手と、三三の石をノビル手の変化がいろいろ研究されました。」
島谷「星をノビルのが普通の感覚かと思いますが、三三をノビル手も力強いですね。」
井口「その変化の検討にはいろいろありました。
まず、星の石からノビルと第12図の変化で盤面黒9目勝ちに至ります。
これは前回第5図でお示しした変化です。
第13図
なお、この第12図の進行で9とトブ手が大切であり、この手で第13図9と右上の方にマガルと14のキリコミが妙手で黒が盤面8目しか勝てません。
つまり、第13図9のマガリはマイナス1目の悪手と断定されました。」
島谷「十九路の盤でも悪手というのはそういう意味でのマイナス手なのですね。」
第14図
井口「そう考えられます。最初の研究では三三をノビルと第14図の進行となり、盤面黒9目勝ちに至るようであり、これも有力とされたのです。
後で説明しますが、キリチガイでなく、ハネカエシで打っても、結果は盤面黒9目勝ちに至るということが確かめられていたので、しばらくは、キリチガエとハネカエシは両方とも正しい手と考えられていたのでした。
ところが、あるとき、調べ直していたところ、第14図は盤面で黒が10目勝っていることに気づいたのでした。
これは、単なる数え間違えであり、何でもないことのようで実は結論を揺るがす大変なことになったのです。」
島谷「というと?」
井口「5の手でどちらをノビルかは黒の自由ですから、第12図と第14図が必然とすると、黒は当然三三のノビを選びますね。」
島谷「すると盤面10目勝ってしまいますか。」
井口「はい、そうなら、白は4の手でキリチガイを打つのが悪手だということになります。」
島谷「なるほど、そうなったのですか。」
第15図
井口「いいえ、その後の検討で、黒が4で三三をノビル手が実は大変な悪手だということが判明したのでした。
第15図の白10が根橋輝一さんが発見した妙手です。
10は普通、十九路盤では非常識な手に見えますが、この場合この一手らしく、工藤九段もこの手に賛成されました。
この手があると、黒は盤面10目どころか9目も勝てないのです。
そこで、第14図は廃案となり、白4のキリチガイには黒5で星の石をノビルのが唯一の正解で、第12図の進行が正解の一つだということで今日に至っているわけです。」
島谷「それでは、白4でハネカエスとどういうことになるのでしょうか。」
井口「それを次回、詳しくやりましょう。」