Scampi by yamaha

強風のスカンピ伝説

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スカンピのデビュー

1968年スエーデンの無名の青年Peter Norlinの手により設計され、翌年、1969年のヨーロパハーフトンカップ(全長30フイートクラスの外洋ヨットのワールドカップレース)に出場するや、いきなり優勝をさらい、1970年には1、2位を占め、翌1971年にはNorlin自身が舵を握り優勝。2、3位も同型艇で上位を独占し世界の注目を集めた。

さらに、1972年アメリカSORC(世界トップの大型ヨットの外洋レース)に出場し参加艇の中では最小だったため資格を問われ応急にバウスプリット(船首に後付けの舳先、自らハンデキャップを付けることになる)を付けてLOA(全長)を補って出場し強烈な上りの強風の中をスタートして行った全参加艇のうちクラスE(ハーフトンクラス)を完全に座巻、更に大型のクラスC(ワントンクラス)及びクラスD(スリークオータークラス)の各艇をもことごとく抜き去るという離れ業を見せクラスEの優勝は言うまでもなく総合でも15位に入賞したのである。
以来、
「強風のスカンピ」と称され伝説のヨットとなったのである。

この艇が日本に初めて紹介されたのは、舵誌の人気連載シリーズ「日本のプロダクションヨット」の記事であった。この記事の冒頭グラビアには、巻頭写真の風力10〜12m/secの小網代沖でのクオーターリーのスピンネーカーランで10ノットのスピードメーターを悠々と振り切って走るスカンピの勇姿に我々は大いに驚愕し、憧憬の眼差しで眺めたものであった。

国内では、ヤマハ発動機がライセンスを獲得して国内生産し、「ヤマハ30」 と命名され発売された。
建造には、デザイナー Peter Norlin 氏自身が来日監修に当ったが、ヤマハの高度な木工技術にPeter Norlinをして 「本国スエーデンの木工技術に劣らぬ上質な仕上がり」 と賞賛したと言う。

その後、エンジンを信頼性の高いヤンマーYS8に変え、設置場所をレースに有利な前室に置き換え、トイレをコンパニオンハッチの下に移動しモデルチェンジをしたマーク2の発売。 

船体を10cm高くし、マストも高くし、バラストを軽くし軽風に対応したマーク3へと発展し、世界のレースで大いなる足跡を残し長く名艇と言わせしめたのである。


なお、スカンピとは "手長海老" のこと、風上航の風圧抵抗を減らすためか船首部分を低くし、復元力を高めるために舷側にチャイン(舷側段)を付けた独特なフォルムが手長海老(Scampe)の風貌に似てScampiと名付けられたのか?
 

概   要

 
  • 全   長      8.97m
  • 全   幅      3.02m
  • 水 線 長       7.00m
  • 喫   水      1.58m
  • 全   高      11.60m
  • マスト 高       9.65m
  • 室 内 高       1.80m
  • 排 水 量      3,000Kg
  • バラスト      1、200kg
  • セール面積     31.2u
  • セール11枚+スピン2枚
  • バース計7名分
  • 清水タンク 60g
  • 機関 ヤンマーYS8(3.5馬力)
  • 燃料タンク 25g
  • 定 員 12名⇒10名
  • 個室トイレ(手動式)
  • 航行区域 沿岸仕様
  • 設計 ピーターノーリン
  • 建造 ヤマハ発動機(株)

 



セーリングスペック

☆ Displacement to LWL 268
(380以上で超重量級、320以上で重め、250以上で普通、120以上で軽量、50以下は超軽め)
☆ Hull Speed 6.42
(そのまま、ノットです)
☆ Motion Comfort 21.11
(ディンギーが5、超重量級が50、理想的数値が30)
☆ Sail Area to Displacement 18.9
(低いほど安定する。18以下がクルーザー、 20以上がレーサー)
☆ Capsize Ratio 2.05 
(低いほどよい。2.0以下で外洋航海可能)
☆Sailing Category  racer/cruiser

出典は→ http://image-ination.com/sailcalc.htmlのデーターベースで計算しました。





 

スカンピの船体設計

シャンパングラス型の船底は豊満な女性の姿態に似て、グラマラスで官能的な姿は見る者を魅了して止まない。
スカンピは、最近の艇に少なくなったV型の船底を持つ中排水量型の船型である。
このタイプの船の利点は荒天の海で波を乗り越える時のショックが少ないこと、要するに乗り心地が良いのである。
初期ヒールは大きいが、一定のヒール角度を超えると復元力の強い特性を発揮する。







舷側のチャイン(段差)は、限られた船巾で復元力増のために考案された
小さ目のセール面積、適度のバラスト重量、ラダー全体をカバーするフルスケグ、それらが相乗して素直なヘルム(舵効き)と保針性を生み出し、質の高い走行性能を確保している。
航性とスピードとの相反する要求をPeter Norlinの非凡な才能が可能としたものである。
なお、このチャインのお陰で船室の舷側に空間が生まれ居心地の良いパイロットバースの容量を確保する事が出来た。


発売当初のマークTは、ファリマン製のガソリンエンジンをコックピット下に置きV型油圧トランスミッションを経てバラストの付け根にシャフト出してプロペラを駆動させていた。

マークUではIORレーテングに有利な重量配分とすべくエンジンを船体前部のフォクスル下にヤンマーY
S8を配置した。
そのため3m
余の長い 22mm径真鍮製シャフトを経てプロペラを駆動している。





合理性の極致! ヨットのキャビン紹介

【メインサロン】
キャビン内は、デザインのヤマハの面目躍如と言うところです。
明るい木目調に統一され、赤色のソファーと、黒天板のテーブルとが実に調和がとれ落ち着いた色調のサロンに仕上がっているますが、この色調はQE2の客室の色調に似ています。
メインルームにはマストサポートのパイプにテーブルがセットされていて6人程がゆったりと食事が出来るスペースがある。
テーブルをソファー下部まで下げるとフラットなフロアーが確保され四畳半的な雰囲気も醸し出す。
特筆すべきは、両舷にパイロットバースがありヒールした時にも身体を良くホールドし実に寝心地の良い場所となっている。





     【チャートテーブル】

メインハッチを降りると左舷側にハーフサイズのチャートテーブルと壁面に電気系統のスイッチ類が簡素に備えられいる。
OLIVEOILではこのコーナーに航海計器とパソコンを取り付けてある。
テーブルの前は衣類ロッカーと、テーブルの下は3段の引き出しとなっていて、書類や小物入れとなっている。
このテーブルの後方はオーナーズバースとなっている。
 



     ギャレー:キッチン
船体中央部の右舷には、シンクと2連のガスコンロ、フォールデング式調理テーブル、その奥にアイスボクスと食器棚が、床に水タンクの足踏み式ポンプがセットされている。
今時の30feet艇と比べるとやや小さいが吉田拓郎の「神田川」以前の時代には豪華なギャレーであったことだろう。
なお、ヨットの食器棚は清潔に欠ける艇を見かけるが、このギャレーは実に清潔で気持ちが良い。
 



    ヘッド:トイレ
メインハッチの下右舷側に個室のトイレが置かれている。
この位置ならば席に着いている人に気兼ねなく使用が出来きるので使いやすく合理的である。また、船体の中央から船尾よりにあるのでゆれが少ないのでこの方がバウ寄りよりも具合がよいだろう。航海中でも使用可能である。
なお、ヘッドは手動式の水洗トイレである。手洗用水ポンプとシンクが付いている。
 
 



    フォクスル:前室

フォクスル(キャビン前室)は一般に物置として使用される。
多くのヨットでは、湿気たセールが置かれ、狭い、汚い、臭いと人気ない場所である。
スカンピでは、この空間を見事に開放的に明るく清潔な場所に変えてしまった。
フォクスルの床下にはエンジンがセットされていてヘッドクリアランス(座高)こそ小さいものの広さは充分にあり、天井にハッチがあるのでとても明るく、風も良く入る。
サロンとはカーテンで仕切られる。ワンルームにもなるので隔離感が無く、子どもや、ビジターに人気があり、ここを寝床に指定された者から文句が出ないのはホストとして真にありがたい。
 
 




セーリングインプレッション



さて、肝心の艇の艤装、取扱い、帆走性能を感じたままにお伝えしよう。


1.30feetという大きさ

73歳、身長152cm、54kgと小柄な私がシングルハンドで22feet艇(YAMAHA22DX)から2ランクも大きい30feetを扱えるか否か心配しましたが、小さめのセール、スケグ付ラダーで優れた直進性、ジーゼル機関の抜群の信頼性、離岸、着岸及び、セールの取扱いに至るまで全く苦労せずにシングルハンドで乗っている。
「関東ではシングルハンドは26feetまで」とよく聞くが、シングルハンド仕様に設定をしたOLIVEOILでは無理無く泊りがけのクルージングに出かけています。


2.艤装関係

レーサー/クルーザーに位置しているが艤装関係は簡素にして充分な装備が揃っている。
発売当時、10,000,000円以上もしただけに部品は超一流品を使用しているのが一寸自慢である。

ウインチ類:コックピット左右に2スピードジブ用とスピンシート用が各2個、計4個。
      マスト下部左右にメインハリヤード用と、スピンハリヤード用の計2個。
      ドッグハウス左右にジブハリヤード用と、スピンハリヤード用の計8個。
      何れも一級品の米国リューマ社製のウインチを設置されている。
トラベラー:コンパニオンハッチの前にある。
リーフギア:スラブリーフ、ブーム巻取の2系統ある。


3.メインセール:

9.65mのマストに、アスペクト比(縦横比)が高くブームが短くセールエリアも小さいメインセールがこの船の特徴である。
シングルハンドで操船をする場合、メインセールが小さいのは重要なポイントになる。
30feetでセールが小さい!すなわち扱い易い! この船を選んだ理由の一つである。
当然、メインシートも軽くセールの上げ下げや、縮帆、納帆も今時の30feet艇と比べ容易である。
ちなみに縮帆は3ポイントリーフ、ブーム巻取の2通りの縮帆が行なえる。
OLIVEOILのメインセールはFOOD社製である。


4.ジブセール:

小さなメインセールに比べてジブは大きい!と言ってもマスト自体が9.65mで最近の艇に比べると28feet艇より低いので取り扱いは28feet並といえる。
購入して暫くはオリジナルのハンクス方式であったが、シングルハンドで航海する機会が増えたのでハーケンのクルージング用ファーラーをWMで購入しDIYで取り付けた。
セールはシングルハンド対応の為、No2ゼノアを加工しUVカバーはDIYて取付けた。
セールの上げ下げが楽に成り強風の時にも不安なくコックピットで縮帆が出来る。


5.帆走フィーリング

☆直進性
大きなバラスと、スケグラダーのお陰か、実に素直なハンドリングである。後進にしても癖の無い舵効きで出入港も一人でやっている。
舵をラッシングしての操船も実に安定していシングルハンドでのセールの上げ下げもオートパイロットを使って安心してやっている。

☆のぼり特性:
この艇の最大特徴である強風のぼり特性は名艇の名に恥じぬ素晴らしいものがある。
ハルの前部を低くし風圧抵抗を低くし、高アスペクト比で効率の良いメインセール、大きなジブで風を効率よく捉え強風の中、最新デザイン艇と競う時、スカンピを持っ喜びを味わうひと時である。

☆フリー〜ランニング
流石に時代の流れを感じる。ビーミーな軽排水量型の新タイプの船の様には行かないです。
まず違うのは、引き波の立て方からして違う。流体力学を極めた最新艇の立てる小さな引き波と比べて少し大きいかな?と感じるのである。
然し!その代わりに得られるものも少なくない。@耐航性、A直進性、B乗心地・・etc。
フリーで抜かれるときでも「マッ!いいか」とScampi乗は納得してます。(爆笑)

☆耐航性能
スカンピマークUはフロントに100kgのエンジンを設置しフロントヘビーで波に弱いという風潮がある様だ。
私はその対策としてフォクスルには荷物を積まずバラストより後ろに置く様にしている為か波に突っ込んだと言う経験は無い。
確かにバウにクルーを2名も配置すると波を被るがその様な時でもコックピット内は実にドライな状態である。
のぼり性能確保の為にバウを低くしていると割り切っている。

☆乗り心地・住み心地
@中排水量設計艇で乗り心地が良い。
Aのぼり特性が良いのでゆとりを持てる。
B30feet艇の最大のメリットはキャビンにゆとりがある。
(ヨットで宴会が出来る、瀬戸物の食器が使える、ヨットで別荘生活が出来るMINサイズ
Cバウが低いので短足オーナーが足舟から乗移る「らくちんさ」は格別だ!
Dだから何時でも人が寄り付き易くクラブ宴会船になっています。^o^v
以上、走るだけでなく生活を楽しめるミニマムサイズと言えるのではないかと思います。


6.機走&機関について

3.5馬力のヤンマージーゼルYS8でMAX6ノット、巡航速度は5ノットである。
ヤンマージーゼルの信頼性は極めて高く故障知らずで、メンテもマニアルを見てDIYでやっている。


                     【総 括

 
「惚れた女にあばたもエクボですが・・・」 皆さんお許しを!爆笑

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