「女王陛下のキス」 By 伊藤@大阪 Date: 17.May 2005
これは文藝春秋2000年11月号に掲載された阿川弘之氏の文を要約したものです。 2000年7月4日、20世紀最後のアメリカ独立記念日を祝う洋上式典に参加するため、世界各国の 帆船170隻、海軍の艦艇70隻がニューヨーク港に集結した。 翌日の5日に英国の豪華客船「QEU」が入港してきたのだが、折悪しくも2ノット半の 急流となっ ていたハドソン河の流れに押された巨大な客船は、あれよあれよと言う間もなく、 係留中の我が 海上自衛隊の自衛艦「かしま」の船首部分に接触してしまったのである。 着岸した「QEU」からすぐさま、船長のメッセージを携えた機関長と一等航海士が謝罪に やって きた。 相手の詫び言に対応した「かしま」艦長はこう答えた。 「幸い損傷も軽かったし、別段気にしておりません。 それよりも女王陛下にキスされて光栄 に思っております」 これが何千人もの船乗りたちの間で大評判になり、ニューヨークだけでなく、ロンドンにも伝わ っ て「タイムズ」や「イブニング・スタンダード」も記事にし、日本のネイバル・オフィサーのユーモ ア のセンスを評価する声が高かったそうである。 「かしま」艦長、上田勝恵一等海佐の対応の見事さは勲章ものではないでしょうか。 提供 伊藤@大阪 |
2005年5月14日、折りしもこの日は、船橋港に訪れる海上自衛隊の護衛艦が来航する日であり、歓迎パーティーが港の近くの ホテルで催され、招待主側である海洋少年団の一員として毎年このパーティーに参加させて頂いている。 そのパーティーに出かける間際にこの投稿文を斜め読みして出かけたのだが、これが後ほど大いに役立った。 定刻通り歓迎パーティーは始まり、艦隊指令はじめ、護衛艦「はつゆき」「たちかぜ」の艦長以下士官、千葉県、関東にゆかりの 隊員達が紹介され和やかな拍手の内にパーティーは始まった。 立食スタイルのパーティーではテーブル毎に士官と乗員が配置され、彼らを中心に招待者側が話しの輪を作るという趣向である。 私たちの席には、防大時代にヨットにぞっこん嵌まっっていたと言う砲雷長以下、数名の士官を囲みヨット談義に花が咲く。 やがて、会場は酔いも回わりはじめ一段と賑わう。頃合いを見て話相手を見つけてはビール片手に挨拶回りが始まる。 早速、我々は、「たちかぜ」艦長の舘一等海佐のテーブルに出向き、お話をする機会が持てた。 パーティーの社交術としてホスト側は、招待客向けの話題を用意し接待するのがエチケットである。 そこで、出かけに斜め読みし仕入れたばかりの伊藤@大阪氏の「ちょいといいはなし」を思い出し艦長にこの話の由来を問うた。 すると、艦長いたく感激し、 「それは、"かしま"と言う艦の話です。 日本国内では知られていないこの話をご存知だとは真に嬉しい限りです!!」 「外国では有名に成った話ですが、何故か日本では話題に成らなかった」 「海自の士官候補生教育の中でこの話は ”スマート”、”ユーモア”、”社交” の見本として語り継がれているんです」 「海自の士官では知らぬものがない有名な話なんですよ!」 と満面に笑みを浮かべ誇らしいく語っていました。 話も一段落し待っている次の物に席を譲り、元の席に戻って砲雷長にこの事を伝えると・・・・・ 「勿論、知ってますよ! "かしま" の話でしょ、その話は海自のものなら知らぬものはいません」 「ここだけの話なんですが、海自は一に ”スマート”、二に ”スマート”、三、四が無くて・・・・ だから、寒空の中でも半そでの制服を着(せられる)るのです」 「デッキにいると、顔には出しませんがね、これが実に寒いんですよね〜! ご存知ですか? スマートって、実に寒いものなんですよ!」 と大いに参列者を笑わせました。・・・・これも日頃鍛えられたユーモアで座を明るくする海自士官のセンスなんでしょうね。 日頃、海に思いを馳せる我らもこの様なスマートな感性を養いたいもの、楽しく、お洒落のおすそ分けを頂いた一日でした。 By Oliveyz |